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Abbey Road
The Beatles
曲情報
“I Want You(She’s So Heavy)”(アイ・ウォント・ユー(シーズ・ソー・ヘヴィ))は、イギリスのロックバンド、ビートルズの楽曲で、1969年のアルバム『Abbey Road』に収録されている。ジョン・レノンが作詞・作曲し、レノン=マッカートニー名義でクレジットされている。ビリー・プレストンがオルガンを演奏している。この曲は『Abbey Road』の最初の録音曲でありながら、最後に完成した楽曲のひとつであった。1969年8月20日にバンドがスタジオでこの曲のミックスを行った際、ビートルズの4人全員が最後に一緒に作業した記録として知られている。
作曲
レノンはこの楽曲をヨーコ・オノへの愛について書いた。楽曲は6/8拍子で始まり、Dマイナーのアルペジオ・ギターのテーマがE7(♭9)やB♭7を経てAオーギュメントコードへと進行する。このコード進行ではF音がドローンとして機能している。ベースとリードギターはDマイナースケールに基づくリフを上下し、最後のコードがフェードアウトすると、4/4拍子のヴァースが始まり、「I want you / I want you so bad …」という歌詞が登場する。
楽曲の後半では、「She’s so heavy」のリフが繰り返され、ホワイトノイズが増幅されながら楽曲が進行する。ギターのアルペジオが重ねられ、レノンとジョージ・ハリスンのマルチトラック・ギター、レノンのムーグ・シンセサイザーによるホワイトノイズ、リンゴ・スターのドラム、ポール・マッカートニーのベースが絡み合い、楽曲がクライマックスを迎える。15回目の繰り返しの途中で、曲は突然カットされる。
録音
この楽曲は当初 “I Want You” というタイトルで、『Get Back/Let It Be』セッション中の1969年1月29日にApple Recordsでリハーサルされた。基本トラックは2月22日にTrident Studiosで録音され、レノンがリードギターを演奏しながらガイドボーカルを録音した。このガイドボーカルは最終版にも使用されている。
4月18日、レノンとハリスンが重厚なギターオーバーダブを施し、4月20日にはビリー・プレストンのハモンドオルガンとスターのコンガ演奏が追加された。8月11日に「She’s So Heavy」のボーカルが録音され、この日をもって正式なタイトルが “I Want You(She’s So Heavy)” となった。
最終的なミキシングと編集作業が行われた8月20日は、ビートルズ4人がスタジオで共に作業した最後の日となった。レノンは楽曲のエンディングについて、エンジニアのジェフ・エメリックに「そのままフェードアウトさせるのか?」と尋ね、突然「ここでカットしてくれ」と指示し、曲の7:44で突如終わる形になった。
歌詞の意味
この曲は相手への欲望と執着が理性を溶かしていくような、生々しく重たい感情をそのままむき出しにしたラブソング。言葉はほとんど繰り返しなのに、その反復こそが止められない衝動の強さを物語り、理屈ではなく身体の奥から沸き上がる「どうしようもなく求める気持ち」が圧倒的な重さで迫ってくる内容。ゆっくり沈んでいくような演奏の深いグルーヴと、圧が増していくサウンドに絡め取られながら、恋愛というより依存に近い感情が重くのしかかる。彼女の存在そのものが“重い”のではなく、自分の心がどうしようもなく引きずり込まれるほど影響力を持ってしまっているという切迫感が、歪みも飾りもなく響く曲になっている。

