【曲解説】The Beatles – She Came In Through The Bathroom Window

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曲情報

“She Came In Through the Bathroom Window”(シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドウ)は、イギリスのロックバンド、ビートルズの楽曲で、1969年のアルバム『Abbey Road』に収録されている。ポール・マッカートニーが作詞・作曲し、レノン=マッカートニー名義でクレジットされている。アルバムB面のメドレーの5曲目に位置し、前曲「Polythene Pam」から途切れることなく繋がっている。

背景

マッカートニーは、この曲が自身のセント・ジョンズ・ウッドの自宅周辺に集まっていたファンの一人、ダイアン・アシュリーにインスパイアされたと語っている。彼女は次のように回想している。

「私たちは退屈していて、ポールが家を空けていたので、ちょっと訪問することにしたの。庭に梯子を見つけて、少し開いていたバスルームの窓に立てかけて登ったのよ。私が最初に入って、他のみんなのために玄関のドアを開けたの」

彼女たちは家の中に入り、衣類や写真などを持ち去ったという。

録音

ビートルズは1969年7月25日にロンドンのEMIスタジオで「Polythene Pam」と共にこの楽曲の基本トラックを録音した。39回目のテイクが採用され、その後リードボーカルを追加し、ドラムとベースを再録音した。7月28日にはさらなるボーカル、ギター、パーカッション、ピアノのオーバーダブが行われ、2日後の7月30日に最終的なギターとパーカッションの録音が行われて完成した。

この楽曲は「Polythene Pam」の終わりからそのまま繋がっており、冒頭でレノンが笑い声をあげた後に「Oh, look out!」と叫んでいるのが特徴的である。

1969年1月の『Get Back』セッション中に録音されたスローバージョンが、1996年の『Anthology 3』や2021年の『Let It Be 50th Anniversary Edition』に収録されている。

メンバーと担当楽器

Walter Everettによると、以下の通りである。

  • ポール・マッカートニー – リード、ハーモニー・ボーカル、ベースギター
  • ジョン・レノン – 12弦アコースティックギター、バッキングボーカル
  • ジョージ・ハリスン – リードギター、バッキングボーカル
  • リンゴ・スター – ドラムス
  • クレジットなし – タンバリン、マラカス、ウィップクラップ・パーカッション

歌詞の意味

この曲は謎めいた女性との奇妙で少し破天荒な関係を、シュールで軽やかなテンションで描いている。裕福な家庭に育ちながらも自由気ままに生き、どこか子どもっぽい無防備さと奔放さを併せ持つ彼女に主人公は振り回されていく内容。ダンサーとして多忙に働いていた過去や、助けようとしてくれてもどこかズレた行動をしてしまう彼女の不思議な魅力が、断片的な出来事の積み重ねとして語られている。周囲との噛み合わなさや、曜日が擬人化されたような奇妙な感覚が漂い、日常と非日常の境目が曖昧なまま進む。軽い語り口の裏に、どうしようもなく惹かれてしまう混沌とした関係の余韻が残る曲になっている。

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