【曲解説】The Beatles – Carry That Weight

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曲情報

“Carry That Weight”(キャリー・ザット・ウェイト)は、イギリスのロックバンド、ビートルズの楽曲で、1969年のアルバム『Abbey Road』に収録されている。ポール・マッカートニーが作詞・作曲し、レノン=マッカートニー名義でクレジットされている。アルバムB面のメドレーの7曲目であり、ビートルズの楽曲としては珍しく、コーラス部分で4人全員がユニゾンで歌っている。「Golden Slumbers」に続き、「The End」へと繋がる。

曲の中間部では、ブラスセクション、エレクトリックギター、ボーカルが用いられ、「You Never Give Me Your Money」の冒頭のメロディーが異なる歌詞で再現されている。また、エンディングには同曲のアルペジオギターのモチーフが再登場する。

解釈

音楽評論家イアン・マクドナルドは、この楽曲の歌詞について「メンバーがソロになってもバンド時代の影を背負い続けることを認識していた」と解釈している。マッカートニー自身は、ビートルズ内部のビジネス上の問題やアップル・コアの状況を反映した楽曲だと述べている。また、映画『Imagine: John Lennon』の中で、レノンは「ポールは僕たち全員について歌っていた」と語っている。

録音

マッカートニーは、トゥイッケナム・スタジオでのセッションでビートルズに「Carry That Weight」を紹介した。1969年1月6日には、未完成のこの曲を軽快な楽曲としてスターに歌わせることを提案していた。このアプローチは、スターが『Help!』や『Yesterday and Today』で歌った「Act Naturally」のようなカントリー調の曲を意識したものであった。

ビートルズは、1969年7月2日に「Golden Slumbers」と「Carry That Weight」をひとつの楽曲として録音し始めた。マッカートニー、ハリスン、スターの3人が15テイクを録音し、レノンはスコットランドでの交通事故による入院のため、このセッションには参加していなかった。

リズムトラックでは、マッカートニーがピアノ、ハリスンがベースギター、スターがドラムを演奏した。最良とされたテイク13とテイク15が編集され、7月3日に組み合わせられた。その後、3日間にわたりマッカートニーがリードボーカルとリズムギターをオーバーダブし、ハリスンがリードギターを追加、3人でコーラスを録音した。

7月30日には、9日に復帰したレノンを含めたボーカルの追加録音が行われた。翌7月31日にはさらにボーカル、ティンパニ、ドラムがオーバーダブされた。8月15日には、30人編成のオーケストラによる弦楽および金管の録音が施された。

メンバーと担当楽器

Ian MacDonaldおよびMark Lewisohn(スターとマッカートニーのどちらがティンパニを演奏したかは不明)によると、以下の通りである。

ビートルズ

  • ポール・マッカートニー – リードボーカル、ピアノ、リズムギター、コーラス
  • ジョン・レノン – コーラス
  • ジョージ・ハリスン – 6弦ベースギター、リードギター、コーラス
  • リンゴ・スター – ドラムス、コーラス、ティンパニ

追加ミュージシャン

  • 無名のセッションミュージシャン – ヴァイオリン12本、ヴィオラ4本、チェロ4本、コントラバス、ホルン4本、トランペット3本、トロンボーン、バストロンボーン
  • ジョージ・マーティン – オーケストラ・アレンジ

歌詞の意味

この曲は、“重いものを背負い続ける運命”をシンプルな言葉で突きつけるようなビートルズ特有のほろ苦さが滲んでいる。

「Carry That Weight」というフレーズは、誰かへの責任、後悔、未解決の感情、人生の負荷――そんなものを象徴していて、「長いあいだ背負うことになる」と繰り返し告げることで、その逃れられなさを強調している。

途中で「招待状は送るけれど、枕は渡さない」という一節は、距離を縮めるふりをしながら本当の親密さは与えられない、曖昧で不完全な関係を思わせる。お祝いの最中でさえ心が崩れてしまうのは、表面の明るさとは裏腹に、内側では重荷が解決されず積み重なっているから。

短いパートなのに、後に続く「The End」へ向けて、人生の“重み”を背中に感じながら歩いていくような、静かな余韻を残す。

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