音源
曲情報
「This War」(ディス・ウォー)はイギリスのミュージシャン、Sting(スティング)の曲。この曲は2003年9月29日にリリースされた7枚目のスタジオアルバム『Sacred Love』に収録された。
歌詞の意味
この曲は戦争と利潤が結びつく構造を背景に、暴力を利用して富を築こうとする人物への批判を中心に描かれている。語り手は相手の偽りの慈悲や道徳性を見抜き、飢饉でも戦争でも必ず利益を得る体質を暴く。武器や棺、国旗への投資は、死と破壊が経済的な計算に組み込まれている現実を象徴し、平和そのものが利得を阻むため望まれない状態として示される。
相手の背景には金銭を最優先する価値観があり、それが戦争を富の源泉として受容する態度と結びつく。語り手は未来の光景を想像し、世界を手に入れても魂を失えば意味がないという問いを投げかけ、功利的な戦争観の虚無を浮かび上がらせる。
終盤では戦争が比喩的に拡張され、民主主義、情報、宗教解釈、自然環境、人間関係などほぼあらゆる領域に広がる破壊の連鎖として描かれる。暴力の論理が社会全体を侵食し、世界そのものを損なう方向へ進んでいるという危機感が強調される。全体としてこの曲は、戦争に依存する精神性と、破壊を求める社会構造への鋭い告発を中心に据えた内容になっている。
Mammon(マモン)とは?
Mammon(マモン)は「富」や「金銭欲」を象徴する存在。もともとは聖書に登場し、「神とマモンの両方には仕えられない」とされ、物質的な欲望が信仰と対立するものとされた。中世では「金銭欲の悪魔」として描かれ、資本主義の批判としても使われる。
この曲では「マモンの神殿」は戦争で金を儲ける者たち(軍需産業や権力者)の象徴になっている。「聖職の任を授かった」という表現は、彼らがまるで正義の名のもとに戦争を推し進めるかのような皮肉を込めている。
cotton flags(綿の旗)とは?
cotton flags(綿の旗)は、戦争に関連するシンボルとしての国旗や軍旗、愛国心を煽るための旗を指している可能性が高い。戦場に向かう兵士たちを鼓舞する旗、国民を戦争に駆り立てるシンボルとしての旗、戦没者を弔うために振られる旗、戦死した兵士の棺にかけられる国旗。つまり「小さな綿の旗に投資しろ」というのは戦争を美化し、ナショナリズムを利用し、戦争ビジネスを正当化するシンボル(国旗や軍旗)を支持することへの皮肉だと解釈できる。


