【曲解説】David Bowie – Rebel Rebel

動画

リアリティツアー(2003-2004)でのライブパフォーマンス

オーディオ

曲情報

「Rebel Rebel」はイギリスのシンガーソングライター、David Bowie(デヴィッド・ボウイ)の曲。アルバム『Diamond Dogs』のリードシングルとして、1974年2月15日にRCAレコードからイギリスでリリースされた。ボウイが作詞・作曲・プロデュースを手がけ、The Rolling Stonesを思わせる特徴的なギターリフを中心に構成されている。「Rebel Rebel」はボウイの楽曲の中で最も多くカバーされた作品とされ、彼が牽引したグラムロックへの別れを告げる楽曲であり、プロトパンクの原型とも言われている。

この曲は商業的にも成功し、イギリスのシングルチャートで5位、アメリカのBillboard Hot 100では64位を記録した。ギターリフの印象的な響きや、グラムアンセムとしての力強さが批評家から高く評価され、複数のメディアにおいて「ボウイの代表作の一つ」と評されている。ボウイはこの曲を多くのライブツアーで演奏しており、複数のコンピレーションアルバムにも収録された。2016年にはボックスセット『Who Can I Be Now?(1974–1976)』の一部としてリマスター版がリリースされている。

背景

「Rebel Rebel」は当初、1973年後半に計画されていた未完の『Ziggy Stardust』ミュージカル用の楽曲として構想された。ボウイのグラムロック時代を締めくくる最後のシングルであり、1969年以来初めてギタリストのミック・ロンソンを起用せずに制作されたヒット曲でもある。この楽曲を含む『Diamond Dogs』のほとんどのトラックでボウイは自らギターを演奏している。NMEの評論家ロイ・カーとチャールズ・シャー・マレーは、このサウンドを「キース・リチャーズにもミック・ロンソンにも通じる、汚れたロックのノイズ」と評している。

ミュージカル『Pork』の出演者で、2年間ボウイの取り巻きだったシンガーソングライターのジェイン・カウンティは、1973年の自身の楽曲「Queenage Baby」に含まれる歌詞 “can’t tell whether she’s a boy or a girl”(彼女が男か女かわからない) が、「Rebel Rebel」に影響を与えたと主張している。

録音と構成

「Rebel Rebel」の録音は1973年のクリスマス後の週にロンドンのトライデント・スタジオで開始され、ここがボウイにとって1968年以来主な録音場所であったトライデント・スタジオへの最後の訪問とされている。1974年1月には、オランダのネーデルホルスト・デン・ベルフにあるルドルフ・スタジオで録音が完成した。

スタジオでは、ボウイがベーシストのハービー・フラワーズとゲストギタリストのアラン・パーカーに「ストーンズのような音にしたい」と伝えたあと、パーカーのブラック・レスポールを手に取り、リフを弾いて聴かせたという。パーカーはそれを完成させたあと、残りの伴奏が録音された。

伝記作家マーク・スピッツによると、「Rebel Rebel」の歌詞はボウイの得意とするテーマを再訪しており、“You got a few lines and a handful of ‘ludes’”(コカインをちょっとと、クエルードを何錠か持ってる)という一節に見られるように、「セクシーな虚無主義をもった若いトラッシュが親を悩ませている」という描写がなされている。たとえ世界が終わろうとしていても、「レベル」は気にしない。“we like dancing and we look divine”(俺たちはダンスが好きで、見た目も最高)という台詞にそれが表れている。

また、“You got your mother in a whirl / She’s not sure if you’re a boy or a girl”(お母さんが混乱してる/君が男の子か女の子か分からないみたい)といったジェンダーに関する表現も特徴である。

著者ピーター・ドゲットによると、「Rebel Rebel」はアルバム『Diamond Dogs』の文脈において「Sweet Thing/Candidate/Sweet Thing(Reprise)」メドレーの音楽的続編にあたるとされ、DからEへのコード進行がこのメドレーの混沌とした終わり方を引き継いでいるという。

音楽的には、ロック・ジャーナリストのクリス・ニーズが“a classic stick-in-the-head like the Stones’ ‘Satisfaction’”(ストーンズの「Satisfaction」級に耳に残るクラシック)と表現したように、印象的なギターリフが中心となっている。リフのコードはD、E、Aで構成され、ボウイによって作られた後、パーカーによって強化された。ドゲットによれば、パーカーは各フレーズの終わりに「下降するライン(downward trail)」を加えたという。

ポール・トリンカによれば、パーカーはコード変更直前の単音に独自の形を加え、サビの最後の “I love you so”(君をとても愛してる)というラインの直前には「ビーオーン」という特徴的な音を挿入した。

ボウイは後に「素晴らしいリフだ!ほんとに最高!見つけた瞬間、『ありがとう!』って感じだった」と語っている。

パーカーは後に、このストーンズ風のリフはボウイが「ミック・ジャガーを苛立たせるために作った」と語っており、また、自身が最終バージョンでクレジットされていなかったことに不満を表明している。「あれは俺のプレイと俺の音だってわかる。確信してる」と述べている。フラワーズも「デヴィッドがリフをアランに弾いて聴かせて、アランがそれをレコーディング可能な形に整えて弾いた」と回想している。

クリス・オリアリーはこのリフを高く評価しつつも、ミック・ロンソン不在の影響で「使いすぎ」になっていると指摘している。楽曲全体が4分以上あるなかで、このリフが登場しないのは2つのブリッジと“hot tramp”のラインのみだという。

歌詞の意味

この曲は、反抗と自己表現の衝動が衝突する若者像を中心に描かれている。周囲の大人たちが性別や振る舞いを判別できずに混乱する様子は、固定的な社会規範に収まらない存在としての主人公を浮き彫りにする。派手な装いや奔放な振る舞いは、単なる過剰さではなく、自らを規定しようとする外部への挑戦として機能している。音楽や夜の遊びに惹かれ、刺激を求める姿は、既存の価値観から逸脱することそのものを肯定する態度につながる。

周囲からの非難や嘲笑は繰り返し示されるが、主人公はその否定をむしろ身にまとうように扱い、否定を逆手に取る形でアイデンティティを強化していく。乱れた外見や破れた衣服といったイメージは、抑圧される側の弱さではなく、ルールに従わない者の象徴として転換されている。

後半では、奔放さと混乱が入り混じる生活への憧れが語られ、危うさと魅力が共存する人物像が完成する。成功の基準が外見の整合性ではなく、既存の枠を拒む姿勢に置かれている点が特徴で、周囲が理解できないものこそが本人の価値となる構図が貫かれる。全体として、この曲は反逆的エネルギーと自分自身であろうとする意志を鮮烈に打ち出した作品になっている。

Rebel(レベル)の意味

「Rebel(レベル)」とは、権威や社会的な規範に反抗する人物を指す語であり、日本語では「反逆者」「反抗者」などと訳されることが多い。単に反発するだけでなく、自分の信念やスタイルを貫こうとする意志を含んでいる。

楽曲「Rebel Rebel」におけるこの言葉は、性別やファッション、振る舞いにおいて既存の枠にとらわれずに自由を追求する人物像を描き出しており、周囲から批判されながらも堂々と自己を表現するその姿勢が「Rebel」として称されている。繰り返される「Rebel Rebel」というフレーズは、そうした反骨精神に対する賛美の意味合いを持っている。

lude(ルード)の意味

「lude」は俗語で、Quaalude(クエルード) の略。
これは1970年代に乱用されていた鎮静剤(メタクアロン)で、当時のパーティー文化を象徴するドラッグのひとつ。

ちなみに「line」がコカインの意味になるのは、コカインを細長く線状に整え、端から順番に吸い込んでいくことに由来している。

▼Bon Joviの「Runaway」でも「line」が「コカイン」という意味のスラングで使われている。