動画
オーディオ(2016年リマスター)
『BBC Sessions』(2000)にも収録されているバージョン(歌詞は「Stay 97’」ベース)
EP『Is It Any Wonder?』に「Stay 97’」というタイトルで収録されたバージョン
曲情報
Stay(ステイ)はイギリスのミュージシャン、デヴィッド・ボウイによる楽曲で、1976年のアルバム『Station to Station』に収録された。この曲は1975年後半にロサンゼルスのチェロキー・スタジオで録音された。プロデュースはボウイとハリー・マスリンが共同で行い、ギターはカルロス・アロマーとアール・スリック、ベースにジョージ・マレー、ドラムにデニス・デイヴィス、ピアノにロイ・ビタン、パーカッションにウォーレン・ピースが参加している。スリックとアロマーによるツインギターが特徴的で、彼らがスタジオで即興的に曲の骨格を作り上げた。「Stay」は、1972年の「John, I’m Only Dancing」をファンク風に再構成した「John, I’m Only Dancing(Again)」のコード進行に基づいており、ファンク・ロック、ソウル、ハードロックの要素を融合している。歌詞は抽象的で、愛に関連する内容とされる。
ボウイはこの曲を1976年1月3日放送のバラエティ番組『Dinah!』で初披露した。同年7月、RCAレコードは「Stay」を「Suffragette City」のB面としてリリースし、さらにアメリカでは編集版をA面として再リリースしたが、いずれもチャート入りはしなかった。それにもかかわらず、この曲は批評家や伝記作家たちから好評を受け、特にバンドの演奏が高く評価された。「Stay」はボウイのコンサートツアーで定番曲となり、数多くのライブアルバムにその演奏が収録されている。2010年にはマスリンによるリミックス版が『Station to Station』の再発盤に収録され、2016年にはボックスセット『Who Can I Be Now?(1974–1976)』向けにリマスターされた。また、1997年の『Earthling Tour』リハーサル時に再録音されたバージョンは、2020年のEP『Is It Any Wonder?』に「Stay ’97」として収録された。
録音
ボウイは映画『地球に落ちて来た男』の撮影を1975年9月に終えたあと、次作アルバムの録音を始めるためロサンゼルスに戻った。彼は「Fame」での制作チームを再集結させた。共同プロデューサーのハリー・マスリン、ギタリストのカルロス・アロマーとアール・スリック、ドラマーのデニス・デイヴィス、そして旧友のジェフ・マコーミック(ウォーレン・ピース名義)が再び参加。新たにジョージ・マレーがベースとして加わり、ブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドのメンバーであるロイ・ビタンが10月中旬からピアノで参加した。録音スタジオにはチェロキー・スタジオが選ばれ、5つのスタジオルーム、24トラックのミキシングコンソール、24時間利用可能なセッション設備、ラウンジバーなどが完備されていた。
録音は1975年9月末から11月末にかけて行われ、「Stay」のレコーディングは10月頃に開始されたとされる。アルバムの大部分と同様、この曲も事前に書き上げられていたわけではなく、スタジオで作り上げられた。ボウイはこの時期、コカイン使用が激しく、後にこのアルバムの制作をほとんど覚えていないと語っている。アロマーは「Stay」について「かなりファンキーでストレートなリズムセクション主体の曲」とし、「ボウイがギターで何コードか弾いてアイディアを伝え、それをもとにこちらで作り直した」と語っている。スリックは、アロマーのフレーズに厚みを加えるようなギターパートを担当した。
「Stay」はもともと「John, I’m Only Dancing(Again)」を下敷きに始まったもので、アロマーとスリックはそのコード進行をわずかに変え、テンポを速めてスタジオジャムを繰り返した末に、完成形に近づけていった。ボウイはアロマーとスリックの競演を意図的に競わせる形で進め、スリックがソロを録音した後にアロマーがその上に録音を重ねるという工程を繰り返した。最終的なミックスは、二人のギター「バトル」の記録ともいえる内容で、オレアリーはこれを「ビュイック車を支えられそうなジョージ・マレーのベースラインに支えられた戦いの記録」と表現している。
作曲とスタイル
「Stay」や「Golden Years」の音楽的スタイルは、『Young Americans』のファンクとソウルに基づきつつも、より荒々しく研磨された質感を持つ。ニコラス・ペッグは、ファンク、ソウル、ハードロックが同時進行で融合された曲と評し、ジェームズ・E・ペローネは、ハードロックとブルー・アイド・ファンクの融合と分析している。マーク・スピッツは「Stay」を、「『Young Americans』のような静的なラブソングとは対照的な、“壁際での激しい性交”のためにテンポアップされたアーバン・ファンク」と表現した。AllMusicのネッド・ラゲットは、『Diamond Dogs』のドラマティックなロックと『Young Americans』のファンク/ソウルを融合したような楽曲だとし、「当時のナイトクラブにぴったりはまりそうでいて、どこか異質な雰囲気も漂わせる」と述べた。『Consequence of Sound』のフランク・モヒカは、2010年にこの曲をファンク・ロックに分類している。
曲はスリックのギター(D弦)によるリフから始まり、右側にミックスされ、左側にエコーが返る。G9コードを2つ刻んだ後、ベースとドラム、さらにパーカッションとキーボードが加わって、バンドが「自己組成」されていく。導入部ではスリックがリードギター、アロマーがバッキングを担当しているが、ヴァースとリフレインでは役割が逆転し、アロマーがリズムギターで全体を牽引し、スリックがそれをなぞる。終盤のソロでは2人が激しく掛け合い、スリックが冒頭リフの変奏を、アロマーがそれを補完する形で演奏する。ボウイのボーカルは4分以降で消え、リフレインではギターと同じ低音域で「理性の声」を歌っているとオレアリーは述べている。
スピッツはアルバム『Station to Station』を「愛が存在しない人生の中で書かれたラブソング集」と解釈しており、「Stay」の抽象的な歌詞は「性的征服の不確実さ」を表しているとされる。NMEのロイ・カーとチャールズ・シャー・マレーは、これはThin White Dukeというボウイのキャラクターにおける「偽りのロマンチシズム」の一例だとしている。ペッグはこの歌詞を「すれ違う恋愛の不可解さに対する不安な告白」と見なし、「君が何かを欲しているとき、相手もそれを欲しているかは決してわからない」という一節に、アルバム全体に見られる自己疑念とスタイリッシュな自信の融合が凝縮されていると述べている。ペローネによれば、ボウイのキャラクターは、恋人が去ってしまえばそれが最後になるかもしれないと悟って「とどまってくれ」と懇願している。伝記作家デヴィッド・バックリーは、ボウイの感情を「まるでシェラックのように脆く、それでいて息が詰まるほど作為的で疎外的」と評している。ペローネは、ボウイが1977年のアルバム『Heroes』の「Joe the Lion」や1990年代後半〜2000年代初頭のいくつかの楽曲で、同様のテーマに再び取り組んでいると指摘している。
歌詞の意味
この曲は相手への思いを素直に伝えられない語り手が、言葉にできないまま揺れ続ける感情を描いている。長く感じられる一週間や心の停滞が示され、語り手は相手に「そばにいてほしい」と望みながら、その一言を切り出せずにいる。気まぐれに変わる天候が比喩として用いられ、関係の行方もまた不確実で掴みにくいことが暗示される。
語り手は相手が同じ気持ちを抱いているかどうかを読み取れず、その不透明さが決断を遅らせ、後悔や逡巡を生んでいる。新しい誰かに心を奪われる不安や、明日にはどうすべきか分かっているはずだという自己励ましは、感情の揺らぎと脆さを強調する要素となっている。
繰り返される「残ってほしい」という願望は、口に出せないまま強まっていく思いの象徴であり、語り手が抱える葛藤の核心を形成する。全体として、言葉にされない欲求と、互いの気持ちが交差するかどうか分からない不確かな関係性を、内省的な語り口で浮かび上がらせる構成になっている。


