【曲解説】Black Sabbath – Paranoid

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2012年、バーミンガム(英国)でのライブパフォーマンス

曲情報

「Paranoid」は、イギリスのロックバンド、ブラック・サバスが1970年に発表した楽曲で、同年発売の2作目のスタジオ・アルバム『Paranoid』に収録されている。アルバムからの最初のシングルとしてリリースされ、B面には「The Wizard」が収められている。この曲は史上最高のヘヴィメタル楽曲のひとつと広く見なされており、全英シングルチャートで4位、全米ビルボードHot 100では61位を記録し、ブラック・サバスにとって初の全米チャート入り曲となった。

楽曲情報

「Paranoid」は、ブラック・サバスにとって初のシングルであり、デビューアルバム『Black Sabbath』の発売から約6か月後にリリースされた。ベーシストのギーザー・バトラーはGuitar World誌(2004年3月号)で次のように語っている:

『Paranoid』の収録曲の多くは、最初のアルバムと同時期に書かれたものだった。録音は2〜3日ほどで、スタジオでライブ録音された。「Paranoid」はアルバムの尺を埋めるための3分ほどの”つなぎ”として後から書かれた。トニー(・アイオミ)がリフを思いつき、僕が急いで歌詞を書き、オジー(・オズボーン)はそれを読みながら歌ったんだ。

楽曲はEマイナーペンタトニック・スケールを用い、パワーコードのみで構成されている。ギターソロは左チャンネルではドライ信号で、右チャンネルにはリングモジュレーターを通した音が流れる。このエフェクトは1978年の楽曲「Johnny Blade」でも再使用されている。

残された歌詞シートによると、当初この曲のタイトルは「The Paranoid」だったという。

結果的に、この楽曲名がアルバムタイトルにも採用されたが、歌詞中には「Paranoid」という言葉は一度も登場しない。当初、バンドはアルバムを「War Pigs」と名付けるつもりだったが、レコード会社がより無難なタイトルとして「Paranoid」を提案したとされる。

また「Paranoid」は、オズボーンの後年のソロ曲「Suicide Solution」と同様に、自殺を助長していると一部で批判された。特に「I tell you to enjoy life(人生を楽しめと言ってるんだ)」という歌詞が、「I tell you to end your life(命を絶てと言ってるんだ)」と聞き間違えられたことによる。

評価

Cash Box誌はこの曲を「音楽的には『Whole Lotta Love』並みに濃密」と評し、「重く途切れないビートとたっぷりのベースとドラムに、エコーの効いたボーカルと鋭いギターリックが加わり、猛スピードで展開する」と記した。

「Paranoid」はVH1の「40 Greatest Metal Songs」で34位にランクイン。Q誌は2005年3月号で「100 Greatest Guitar Tracks」の11位に選出。ローリング・ストーン誌では「史上最も偉大な500曲」で250位、「史上最高のヘヴィメタル・ソング100」では13位に選ばれている。また、ドイツの『Rock – Das Gesamtwerk der größten Rock-Acts im Check』誌ではブラック・サバスの楽曲中5位にランク。2020年のKerrang!誌では5位、2021年のLouder Sound誌では6位に選出された。

歌詞の意味

この曲は深い精神的停滞と虚無感に苦しむ語り手が、自身の内面状態を率直に語りながら、外界との断絶や幸福への感受性の喪失を描く内容とされる。周囲からは「狂気」とみなされるほど感情が沈み込み、何を試しても満たされない思考の迷走が強調される。語り手は人生の本質的価値を見いだすための指針を求めており、幸福を感じ取れない自らの感覚を「盲目」と表現し、世界との距離を痛感している。

他者との感情のズレは、冗談を前にしても笑えず、愛にも現実味を感じられないという形で示され、内的な絶望が次第に深まっていく。終盤で語り手は、自分の状態を聞く者に「人生を楽しめ」と促しつつも、自分自身にはもはやそれが不可能であると断言し、取り返しのつかない断念が示される。全体として、重い精神的孤立と救済不在の感覚を核心に据え、暗鬱な内省を通して存在の苦悩を描いた内容になっている。

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