【曲解説】BTS – Dynamite

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曲情報

「Dynamite(ダイナマイト)」は、韓国のボーイズグループBTSが2020年8月21日にBig Hit EntertainmentとSony Music Entertainmentからリリースした楽曲で、BTS初の全編英語曲である。作詞作曲はデヴィッド・スチュワートとジェシカ・アゴンバーが担当し、プロデュースはスチュワートが手がけた。楽曲は1970年代の音楽に影響を受けたディスコポップで、ファンク、ソウル、バブルガムポップの要素を取り入れており、手拍子、エコーの効いたシンセ、華やかなホーンが特徴的である。

背景とリリース

「Dynamite」はCOVID-19パンデミック下でリスナーを癒す目的で制作され、人生を彩る小さな喜びや感謝をテーマにしている。2020年8月21日にシングルとして配信・発売され、その後2020年11月20日にリリースされた韓国語アルバム『Be』にも収録された。2021年4月12日には公式MVがYouTubeで10億回再生を突破した。

本作はBTSメンバーが作詞作曲やプロデュースに関わっていない数少ない楽曲の一つである。スチュワートとアゴンバーはロックダウン初期にZoomを通じて3曲を制作し、その中から「Dynamite」がBTSに採用された。当初BTSは別の曲を選んでいたが、2週間後に最終的に本作を選んだという。歌詞はジェナ・アンドリューズと共にPG向けに修正され、中には攻撃的すぎる表現やラップリファレンスが削られたとされる。レコーディングは2020年7月中旬に行われた。

音楽性と歌詞

楽曲はEメジャー、114BPMの4/4拍子で構成され、音域はB3からD♯5。ディスコリズムとファンキーなベースラインを軸に、ファルセットのフックやボーカルハーモニーが重ねられている。スチュワートはドラム、パーカッション、ベース、シンセ、ギター、ピアノ、ホーンやストリングスのプログラミングを担当し、ジョニー・サーカルがホーン演奏を提供した。全体的にレイヤードボーカルやエコーの効いたシンセ、祝祭的なホーンで70年代のレトロサウンドを再現している。

歌詞は「I’m in the stars tonight / So watch me bring the fire and set the night alight」といった冒頭から始まり、日常の小さな幸せや喜びを称える内容である。スガは記者会見で「自信と幸福のメッセージ。倒れても再び立ち上がることを描いている」と説明し、RMはApple Musicのインタビューで「ポジティブなエネルギー、希望、愛、純粋さでできている曲」と述べた。歌詞にはキングコング、ローリング・ストーンズ、レブロン・ジェームズといったポップカルチャーのリファレンスも含まれる。

評価と成果

リリース当初からキャッチーなメロディと幅広い層に訴求するレトロサウンドで批評家から高評価を得た。「第63回グラミー賞」ではBTSにとって初のノミネートとなる最優秀ポップデュオ/グループパフォーマンス賞に選ばれ、韓国のポップグループとして初の候補入りを果たした。

商業的にも大きな成功を収め、Billboard Hot 100で初登場1位を記録し、韓国のグループとして初めて全米1位に輝いた。初週に26万5000件のダウンロードを売り上げ、2017年のテイラー・スウィフト「Look What You Made Me Do」以来最大のセールスを記録。Hot 100では通算3週1位を維持した。Spotifyでは初日に777.8万ストリーミングを記録し、当時2020年最大の初日再生数となった。また、Billboard Global 200およびGlobal Excl. U.S.チャートでも1位を獲得し、後者では3週連続でトップを維持した。さらに25か国でトップ10入りを果たし、ハンガリー、イスラエル、リトアニア、マレーシア、シンガポール、韓国などで1位を記録した。

歌詞の意味

この曲は、夜の街に自分たちの輝きを解き放ち、ポジティブなエネルギーで世界を明るく染め上げようとする、軽やかで祝祭的なムードを描いてる。日常のささいなルーティンから勢いよく飛び出し、音楽とリズムに身を任せて一気にテンションを引き上げていくような感覚が全体に広がっている。自分が星空の一部になったかのような高揚感と、自分自身が光源になって周りを照らすという前向きな自己宣言が響く。

曲の中心には、落ち込んだ空気を吹き飛ばし、みんなを巻き込んで楽しい夜へ連れ出そうとする姿勢がある。ファンクやディスコの要素をまといながら、誰とでも一緒に弾けられる開放感が強く、重さを忘れさせるような明るさが特徴的。仲間と一体になって夜明けまで踊り続ける感覚や、音楽そのものが“特効薬”のように働くイメージも描かれている。

全体として、光と音に満ちた夜を自らの力で作り上げ、周囲を元気づける存在でありたいという願いがあふれ、ポジティブな爆発力がそのままタイトルのイメージと重なるような、きらめくエネルギーの曲になってる。