【曲解説】Christopher Cross – Sailing

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曲情報

「Sailing」(セイリング)は、アメリカのシンガーソングライター、クリストファー・クロスが作詞作曲し、1979年に録音したソフトロックの楽曲である。1980年6月にシングルとしてリリースされ、すでにゴールド認定を受けていたセルフタイトルのデビューアルバム『Christopher Cross』(1979年)からの第2弾シングルとなった。

この曲はアメリカで成功を収め、1980年8月30日付のBillboard Hot 100チャートで1位を獲得し、1週間その座を維持した。また、グラミー賞では年間最優秀レコード賞、年間最優秀楽曲賞、最優秀アレンジ賞を受賞し、クロスは最優秀新人賞も獲得した。さらに、VH1は「Sailing」を「最もソフトでセンセーショナルなソフトロック曲」と評した。

この楽曲は1979年に録音され、3M Digital Recording Systemを使用したため、チャート入りした楽曲の中でも初期のデジタル録音楽曲の一つとなった。グラミー賞の受賞スピーチで、クロスは「Sailing」がアルバムの中で最も好きな曲であり、当初はシングルにする予定ではなかったことを明かしている。この曲は後に「ヨット・ロック」の代表例として位置付けられるようになったが、当時クロスや同様のアーティストたちはこのスタイルを「ウェスト・コースト・サウンド」と呼んでいた。

背景

クロスはインタビューで、この曲のインスピレーションが高校時代の年上の友人アル・グラスコックとの友情から生まれたと語っている。グラスコックはクロスをセーリングに連れ出し、10代特有の悩みや困難から逃れる時間を提供してくれたという。グラスコックはクロスにとって兄のような存在であり、精神的に辛い時期を支えてくれた。

その後、クロスはグラスコックと音信不通となったが、1995年4月に『The Howard Stern Show』で28年ぶりに再会を果たした。クロスはこの番組内で、セーリングの経験がこの曲のインスピレーションになったことを再認識したという。この再会の後、クロスはグラスコックに対し、「Sailing」が500万枚以上を売り上げた記念としてプラチナ・レコードを贈った。

歌詞の意味

この曲は航海を心の解放と結びつけ、風に身を任せれば静けさや無垢さを取り戻せるという感覚を穏やかに描いている。帆に広がる世界が奇跡のように心を変えていくというイメージが繰り返され、現実から少し離れた幻想的な場所へ連れていかれるような浮遊感がある。幻想に呑まれそうになりながらも、その時間が癒やしとなって自分を取り戻すきっかけになるという流れがゆっくりと積み重なり、風と夢だけで自由へ近づいていく静かな希望が漂っている。

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