【曲解説】Elliott Smith – No Name #1

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曲情報

「No Name #1」はアメリカのシンガーソングライター、エリオット・スミスのデビュースタジオアルバム『Roman Candle』に収録された曲。この曲は1993年後半に録音され、1994年7月14日にレコードレーベルのキャビティ・サーチからリリースされた。

歌詞の意味

この曲は社交の場にいながらも強い疎外感や不安に押しつぶされている登場人物の心の動きを描いている。

始めはHeという主語で語られる不気味で浮いた人物が登場するが、次に語り手が上手くコミュニケーションを取れない描写が続き、語り手は「帰ってその痛みと共に生きていけ」と自己嫌悪する。これらの構図は、登場人物の誰がパーティーにふさわしくないのかということではなく、パーティーでの孤独や気まずさを表現すること自体がテーマで、Heも語り手もパーティーにはふさわしくない人物として登場しているという読みが自然である。

パーティーの中で気になる相手を見つけても、声をかける勇気が出ず、言葉を探すほどに自分の内側が凍りつき、何を口にしても後悔する未来しか想像できない。何度も繰り返される「もう帰れ」「ここに属していない」という言葉は、周囲から向けられたものではなく、主人公自身が自分に浴びせている断罪に近く、自分の居場所を否定し続ける内なる声として響いている。最後には誰にも気づかれないように静かに立ち去ろうとする姿が浮かび、強烈な自意識と孤独が生む逃避衝動が曲全体を支配している。

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