動画
オーディオ
エド・サリヴァン・ショーでのパフォーマンス
曲情報
「Dandy」(ダンディ)は、イギリスのロック・バンド、キンクスが1966年に発表した楽曲で、アルバム『Face to Face』に収録されている。
リリースと評価
「Dandy」はイギリスとアメリカではアルバム『Face to Face』にのみ収録されたが、大陸ヨーロッパではシングルとしてリリースされ、ドイツで1位、ベルギーで2位、オランダで3位、オーストリアで6位を記録した。一部の国(ノルウェーなど)では「Party Line」とA面を入れ替えてリリースされた。
AllMusicのスチュワート・メイソンは「ダンディ」について、「近所のロザリオ(遊び人)を題材にした歌詞を、レイ・デイヴィスは嫌悪と賞賛が入り混じった絶妙な調子で歌っている。その皮肉に満ちたボーカルが曲を特別なものにしている。音楽的にはジョージ・フォームビーの音楽ホールの伝統に立ち返ったようで、デイヴ・デイヴィスのギターは高音域で澄んでおり、ウクレレあるいは電気ゴムバンドのように聞こえる。ゆったりとスイングする曲調は、古いヴォードヴィルのヒット曲のようだ。『Dandy』は魅力的で、ややサブバージョン的な名曲だ」と評した。また、同じくAllMusicのスティーヴン・トーマス・アールワインは、『Face to Face』の「音楽ホール風シャッフルの『Dandy』」を「素晴らしい瞬間」と表現した。
「Dandy」は1966年から1969年までキンクスのライブで定番曲として演奏されたが、その後はセットリストから外された。
カバー・バージョン
ハーマンズ・ハーミッツ
ハーマンズ・ハーミッツは1966年に「Dandy」をシングルとしてリリースし、北米でヒットさせた。カナダのRPMシングルチャートで1位、アメリカのBillboard Hot 100で5位、ニュージーランドで3位を記録した。このバージョンはイギリスではシングルとしてはリリースされていない。
キンクスのオリジナルとハーマンズ・ハーミッツのカバーを比較して、スチュワート・メイソンは「アメリカでヒットしたのはハーマンズ・ハーミッツの『Dandy』だったが、1966年の傑作『Face to Face』に収録されたキンクス自身のバージョンの方が、ピーター・ヌーンの愛嬌があるが気の抜けた演奏よりもはるかに優れている」と述べた。『Cash Box』誌はハーマンズ・ハーミッツ版を「美味な一曲」と評している。
その他のバージョン
ロッキン・ヴィッカーズも1966年に「Dandy」をシングルのA面としてリリースしている(このバンドは後にホークウィンドやモーターヘッドで活動するレミーが在籍していたことで知られる)。また、イギリスの歌手クリントン・フォードも同年にシングルとしてリリースした。さらに、同じPye Records所属のデヴィッド・ガリックは1967年のアルバム『A Boy Named David』に収録し、1968年にはドイツで『David Garrick and the Dandys – Blow-Up Live』というライブ盤
歌詞の意味
この曲は、女遊びをやめられない軽薄な主人公に向けて、周囲が半ばあきれつつもどこか愛着を込めて語りかけるような内容になっている。主人公は魅力的な笑顔と甘い言葉で次々と女性の心をつかみ、関係を自分の都合で操作しながら気ままに生きている。誰かが惹かれてしまうのも当然という空気をまといながら、その実、とても身勝手で危うい存在として描かれる。
しかし物語が進むにつれ、そんな奔放な生活が永遠には続かないことが示される。周りは落ち着いた人生へ進んでいくのに、自分だけが若い頃のまま足を止めているという孤独が、やんわりと突きつけられる。遊び続ける自由さは確かに魅力だが、過去は逃げられず、やがて年齢を重ねた時にはその生き方が重くのしかかることを暗示している。
それでも主人公は他者の忠告にも揺らがず、自由と独身であることを手放さない。周囲は嘲笑と心配の入り混じったまなざしで彼を見つめながらも、最終的には「それが彼らしい」と受け入れるような温度で締めくくられる。
全体として、奔放な恋愛を楽しむ一方で、その影にある切なさもにじませた、軽やかで少しほろ苦い人物描写の曲になっている。

