【曲解説】Jamiroquai – Canned Heat

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曲情報

「Canned Heat」(キャンド・ヒート)は、イギリスのファンクグループ、ジャミロクワイの4作目のスタジオ・アルバム『Synkronized』(1999年)からの2枚目のシングルである。1999年5月24日に発売され、全米ダンス・クラブ・プレイ・チャートで2度目の1位を獲得し、全英シングルチャートでは最高4位を記録した。ミュージックビデオはヨナス・アカーランドが監督を務めた。この曲は2004年の映画『ナポレオン・ダイナマイト』にも使用されている。

リリース

「Canned Heat」シングルの様々なバージョンには、2種類のB面曲が存在する。「Wolf in Sheep’s Clothing」はファンキーなインストゥルメンタルで、約1.5秒のドラムイントロから始まり、ビージーズの「Stayin’ Alive」を想起させるような強いベース主導の繰り返しメロディへと展開する。曲の途中3:07からはパーカッションセクションに入り、3:45からフェードアウトする。この曲はもともと1998年に発表されたチャリティ・アルバム『No Boundaries: A Benefit for the Kosovar Refugees』に収録されていた。

「Deeper Underground」のChillingtonミックスは「Canned Heat」の2度目のリリースに収録された。ChillingtonはアーティストやDJの名前ではなく、ジェイ・ケイのバッキンガムシャーの自宅にあるスタジオの名前である。このミックスは「Getinfunky」というジャミロクワイの楽曲を大きくサンプリングしており、特別版の『Synkronized』や日本盤にも収録された。「Getinfunky」は後に「Deeper Underground」へと発展していった初期バージョンだとされている。

評価

『Daily Record』は「帽子男、ジェイ・ケイがまたもや独特で巧妙なファンクチューンで帰ってきた」と評した。『Sunday Mirror』は「70年代ファンク、高額なビデオ、ばかげた帽子。だがそれは前回もうまくいったし、その前もそうだった」と述べた。『Miami Herald』のハワード・コーエンは「スタジオ54から抜け出したようなミラーボールに酔った逃亡者」と評した。

ミュージックビデオ

スウェーデンの監督ヨナス・アカーランドが手掛けたミュージックビデオでは、ジェイ・ケイがロンドンの自宅のベッドで目を覚ますところから始まる。彼は靴を履き、壁を通り抜けてリビングルームに入り、ダンスを始める。その後、食堂やパーティー会場、浴室、寝室など様々な部屋に飛び込みながら踊り続け、重力を無視して浮遊する場面もある。やがてテレビの中に飛び込み歌い続け、キッチンを荒らし、スリープオーバーの部屋で天井に貼り付くなど、奇想天外な演出が展開される。最終的に彼は再び自宅のベッドに戻り、眠りにつく場面で締めくくられる。

歌詞の意味

この曲は、鬱屈した気持ちや重たい現実を抱えながらも、音楽とダンスの力でそれらを吹き飛ばそうとする主人公の高揚と解放を描いている。かつては未来や正しさに執着していた彼が、心の枷を外し、リズムに身を預けることでようやく自由さを取り戻していく流れが鮮やかに表れている。

街の反対側で偶然出会った躍動的なビートは、彼の中の閉塞感を一気に揺さぶり、考えるよりも先に身体が動き出すほど強烈に作用する。怒りや焦燥、周囲の悪意や噂話といった重たい感情も、踊ることでしか晴らせないという切実さが繰り返し語られ、ダンスが彼にとって“治療”のような存在になっている。

さらに、風の声や内に秘めたパワーといった象徴的なイメージが登場し、自分自身の中に眠っていた力を解き放つような感覚が広がっていく。重荷を捨て、スピードを上げ、誰にも追いつけないほど速く走り抜けようとする意志が、後半に向かうほど強烈になる。

全体として、苦しさを抱えたままでも前へ進むために、音楽を通して心を解放していく物語がダンスビートに乗せて表現されている。喜びと焦り、逃避と再生が一体になった、圧倒的にポジティブでエネルギーに満ちた曲になっている。

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