【曲解説】Metallica – I Disappear 

動画

曲情報

「I Disappear」(アイ・ディサピアー)は、アメリカのヘヴィメタル・バンド、メタリカが2000年6月2日にシングルとして発表した楽曲で、映画『ミッション:インポッシブル2』のサウンドトラックに収録された。作詞作曲はフロントマンのジェイムズ・ヘットフィールドとドラマーのラーズ・ウルリッヒが手がけ、プロデュースはボブ・ロックが担当した。本曲は後に8作目のスタジオ・アルバム『St. Anger』(2003年)で有名になるスネアドラムの音が初めて登場した作品である。

このシングルは公式にはドイツのみでリリースされたが、7か国のチャートでトップ10入りを果たし、全米メインストリーム・ロック・チャートでは1位を獲得した。また、ファイル共有サービスNapster上での楽曲流出がきっかけでメタリカが同サービスを訴える事態となり、後に「Shoot Me Again」という楽曲に影響を与えた。さらに本作は2000年のMetal Edge誌リーダーズ・チョイス・アワードにおいて「映画サウンドトラックからの年間最優秀曲」を受賞している。なお、これはベーシストのジェイソン・ニューステッドが参加した最後のスタジオ録音であり、彼は2001年1月17日にバンドを脱退した。

楽曲の構成

「I Disappear」はハードロックとヘヴィメタルの要素を持つ楽曲で、ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング・グループの楽譜によれば、4/4拍子、テンポ124BPM、Eマイナーで作曲されている。ヘットフィールドのボーカルはE4からG5の音域をカバーし、特徴的な「hey, hey, hey」の掛け声、ウルリッヒによる力強いドラム、そしてカーク・ハメットのギターソロが含まれている。

ミュージック・ビデオ

ミュージック・ビデオの大部分は2000年4月13日にモニュメントバレーの砂岩のビュート上で撮影された。メタリカのメンバーと楽器はヘリコプターで運ばれ、撮影用の飛行機に囲まれながら12時間以上にわたって孤立した状態で演奏した。強風でドラムセットが吹き飛ぶ場面も映像に収録されている。その後、ウルリッヒはロサンゼルスの高層ビル上でも撮影を行い、アクションや爆発シーンが加えられた。

さらにこのビデオには、ジェイムズ・ヘットフィールドが運転する1967年製シボレー・カマロも登場する。撮影後、この車は彼に贈られたが、2003年にeBayに出品され、収益は音楽教育プログラムに充てられた。走行距離は77,000マイルで、自動車は修復済み、オートマチック仕様だった。出品当初、入札額は70,100ドル(2024年換算で約119,822ドル)に達していた。

歌詞の意味

この部分の歌詞は安住できる場所を得たはずなのに、誰も本当に自分を見てくれない → そこで心が折れ、また次の場所を探すしかない、という流転の感覚を描いていると考えられる。

だからこそ主人公は、「I’m pain」(俺は痛みそのもの)「I’m hope」(それでも希望でもある)「I’m suffer」(そして苦しみそのものでもある)と矛盾した自己定義を並べている。

つまり、居場所を得る → 期待する → しかし裏切られる/無視される → それでも探し続ける。その循環が「痛み」「希望」「苦しみ」として同時に存在している、ということ。

言い換えると、この曲は「どこかに自分を受け入れてくれる場所があるはずだ」という衝動と、「見つけたはずなのに失われる」虚無感の間で揺れる心を歌っている、と解釈できる。

error: Content is protected !!