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曲情報
「Under Pressure」(アンダー・プレッシャー)は、イギリスのロックバンド、Queen(クイーン)とシンガーのDavid Bowie(デヴィッド・ボウイ)が共同で制作・演奏した楽曲である。1981年10月にシングルとしてリリースされ、その後、1982年のクイーンのアルバム『Hot Space』に収録された。この楽曲はイギリスのシングルチャートで1位を獲得し、クイーンにとっては母国での2曲目のナンバーワンヒット、ボウイにとっては3曲目のナンバーワンヒットとなった。また、世界10か国以上のチャートでトップ10入りを果たした。
本楽曲は『Hot Space』の中でも際立つロックナンバーと評されると同時に、「非常に力強く、感動的なポップソング」とも評価されている。「Under Pressure」は、VH1の「100 Greatest Songs of the ’80s」で31位にランクインし、『Rolling Stone』誌の読者投票では史上2番目に優れたコラボレーション楽曲とされた。2021年には、『Rolling Stone』誌の「The 500 Greatest Songs of All Time」において429位にランクインした。この楽曲は1981年からクイーンのツアー活動が終焉する1986年まで、すべてのライブコンサートで演奏された。
「Under Pressure」はクイーンの最初のベストアルバム『Greatest Hits』の一部のエディション(1981年のエレクトラ盤など)に収録され、その後も『Greatest Hits II』『Classic Queen』『Absolute Greatest』などのコンピレーションアルバムに収められた。ボウイのベストアルバムにも多数収録されており、『Best of Bowie』(2002年)、『The Platinum Collection』(2005年)、『Nothing Has Changed』(2014年)、『Legacy』(2016年)、『Re:Call 3』(2017年)などに収められている。
本楽曲は1990年にアメリカのラッパー、Vanilla Ice(ヴァニラ・アイス)が自身のシングル「Ice Ice Baby」でサンプリングしたことでも知られる。当初、ヴァニラ・アイスはクイーンやボウイにクレジットを与えなかったが、訴訟の末、正式に作曲者としてクイーンとボウイの名前が記載されることになった。「Under Pressure」はまた、アメリカのロックバンドMy Chemical Romance(マイ・ケミカル・ロマンス)とThe Used(ザ・ユーズド)、シンガーのShawn Mendes(ショーン・メンデス)とTeddy Geiger(テディ・ガイガー)によるカバーでも知られている。さらに、Xiu Xiu(シウ・シウ)がSwans(スワンズ)のフロントマンMichael Gira(マイケル・ギラ)と共にカバーし、2008年のアルバム『Women as Lovers』に収録された。
背景と作曲
「Under Pressure」は、1981年7月にスイスのモントルーにあるMountain Studiosで録音された。当時、クイーンはアルバム『Hot Space』の制作中であり、もともと「Feel Like」という楽曲を作っていたが、その出来に満足していなかった。同じスタジオでボウイが映画『キャット・ピープル』の主題歌「Cat People(Putting Out Fire)」を録音していたことから、偶然のセッションが実現した。
ボウイはクイーンの楽曲「Cool Cat」にもバックボーカルで参加していたが、最終的に自身のパートを削除した。その後、クイーンとボウイは共に作曲作業を行い、「Under Pressure」が誕生した。作曲クレジットはクイーンのメンバー4人とボウイの5人による共作となっている。曲のスキャットボーカルは即興セッションの名残であり、ベーシストのジョン・ディーコンによる印象的なベースラインが特徴となっている。
ディーコンは、楽曲の象徴的なベースラインを作成したが、一時的に忘れてしまい、バンドがディナーから戻った際にロジャー・テイラーが思い出して記憶を呼び戻したというエピソードがある。また、ギタリストのブライアン・メイによると、ボウイは楽曲の歌詞において強い影響を与え、制作過程でフレディ・マーキュリーと激しく意見を交わしたという。結果として、「Under Pressure」は、プレッシャーに押し潰される状況や、それを乗り越えるための愛の重要性をテーマにした楽曲となった。
影響と評価
本楽曲は、1981年のリリース以来、数多くのアーティストによってカバーされ、映画、テレビ、CMなどでも頻繁に使用されている。特に、1992年のフレディ・マーキュリー追悼コンサートでは、ボウイがアニー・レノックスと共にこの楽曲を披露し、大きな話題を呼んだ。
また、「Under Pressure」は、クイーンとボウイの最も象徴的な楽曲のひとつとして認識されており、ロック史において重要なコラボレーションのひとつと見なされている。
歌詞の意味
この曲は社会や日常に重くのしかかる圧力が人々の心を追い詰め、世界そのものを壊しかねない状況として描かれている。経済的不安、家庭の崩壊、貧困や暴力といった現実が圧縮され、人々は悲鳴を上げながらも出口を見いだせないまま街角に取り残される。語り手は、この苦境を「世界の本質を知る恐怖」として捉え、圧力に押し潰される個々の姿を映し出していく。
混乱の中で示される断片的な言葉や叫びは、苦悩が言語化できないほど極限に達していることを象徴し、逃避や無関心が何の解決にもならないという現実を浮かび上がらせる。破れたような愛の表現は、困難の中でこそ必要とされる連帯が損なわれている状況の比喩として扱われ、愛そのものが傷つき、軽視されてきた歴史が示唆される。
終盤では、圧力に屈するのではなく、互いにもう一度「愛」を選び取る可能性が問い直される。そこでは、他者への配慮や共同体への責任が求められ、自己中心的な生き方を変える勇気が呼びかけられる。全体として、過酷な社会の現実を直視しつつ、人間がそこから立ち上がるために必要な根源的な力としての愛を提示する構造になっている。
諺「it never rains but it pours」の意味
「it never rains but it pours」は、「雨はなかなか降らないが、降ったと思えば土砂降りである」という意味のことわざで、不運がまとめてくることを意味する。
「踏んだり蹴ったり」「泣きっ面に蜂」「弱り目に祟り目」などの表現と似た意味合いを持つ。


