音源
曲情報
「Bridge over Troubled Water」(読み方:ブリッジ・オーバー・トラブルド・ウォーター、邦題:明日に架ける橋)は、アメリカのフォークロックデュオ、Simon & Garfunkel(サイモン・アンド・ガーファンクル)が1970年1月にリリースした楽曲であり、5枚目のスタジオアルバム『Bridge over Troubled Water』の2枚目のシングルとして発表された。ポール・サイモンが作詞作曲を手掛け、サイモン、アート・ガーファンクル、ロイ・ハリーがプロデュースを担当した。
この楽曲は、アート・ガーファンクルのリードボーカルとゴスペル音楽の影響を受けたピアノ伴奏を特徴とし、「ウォール・オブ・サウンド」スタイルのプロダクションが施されている。アルバムの中で最後に録音された楽曲であるが、最初に完成した曲でもある。楽器演奏はレッキング・クルーによってカリフォルニアで録音され、Simon & Garfunkelのボーカルはニューヨークで録音された。サイモンはこの楽曲をガーファンクルが単独で歌うべきだと考えたが、ガーファンクルは当初この提案を拒否していた。セッションミュージシャンのラリー・ネクテルがピアノを演奏し、ジョー・オズボーンがベース、ハル・ブレインがドラムを担当している。
この楽曲は1971年の第13回グラミー賞で「最優秀レコード賞」「最優秀楽曲賞」を含む5部門を受賞し、Simon & Garfunkelにとって最も成功したシングルとなった。Billboard Hot 100では6週間1位を獲得し、1970年の年間チャート1位にも輝いた。イギリス、カナダ、フランス、ニュージーランドでも1位を記録し、最終的には世界で600万枚以上を売り上げた。エルヴィス・プレスリー、アレサ・フランクリン、ジョニー・キャッシュなど50以上のアーティストによってカバーされ、20世紀で最も演奏された楽曲の一つとされている。ローリング・ストーン誌の「史上最高の500曲」では66位にランクインしている。
背景
「Bridge over Troubled Water」は1969年初頭にポール・サイモンによって作曲された。サイモンはこの曲が非常に速く完成したため、「どこからこの曲が来たのか、自分のものではないように感じた」と述べている。タイトルのコンセプトは、ゴスペルグループSwan Silvertonesの1959年の楽曲「Mary Don’t You Weep」に登場する「I’ll be your bridge over deep water if you trust in my name.(私の名を信じるならば、私はあなたの深い水の上の橋になろう)」という歌詞にインスパイアされたものである。サイモンはこの影響を認め、リードシンガーのクロード・ジェーターに謝礼を送ったとされる。
サイモンは当初、ギターで作曲したが、ゴスペルの影響を強めるためにピアノに転調し、ガーファンクルの声に適したアレンジへと変更した。楽曲の最後のヴァースは、当時のサイモンの妻ペギー・ハーパーに向けられたものであり、彼女の白髪が増え始めたことに触れている(「Sail on, silvergirl」)。この歌詞はガーファンクルのアイデアであったが、サイモンはあまり気に入っていなかったという。
レコーディング
この楽曲はアルバムの最後に録音されたが、最初に完成した曲でもあった。オリジナルのキーはGメジャーだったが、アレンジャーのジミー・ハスケルがガーファンクルの声に合わせてE♭メジャーに変更した。楽器演奏はカリフォルニアで行われ、ガーファンクルが映画『Catch-22』の撮影のためメキシコに滞在していたため、この地での録音となった。サイモンはゴスペル風のピアノサウンドを求め、セッションピアニストのラリー・ネクテルを起用した。ベースはジョー・オズボーンが2トラック録音し、ドラムはハル・ブレインがエコーチャンバー内で演奏したことで広がりのある音を生み出している。
批評と受賞
Billboardはこの曲を「美しく、ほとんど宗教的なバラード」と評し、「パフォーマンスとアレンジメントが完璧」と評価した。Cash Boxは「寓話的なラブバラードであり、ガーファンクルの素晴らしいボーカルパフォーマンスと楽曲のクオリティが際立っている」と評した。
この楽曲は1971年の第13回グラミー賞で「最優秀レコード賞」「最優秀楽曲賞」「最優秀コンテンポラリー楽曲賞」「最優秀編曲賞(インストゥルメンタル&ボーカル)」を含む5部門を受賞した。また、同年のアルバム『Bridge over Troubled Water』も「最優秀アルバム賞」を受賞している。
商業的成功
Columbia Recordsは当初、楽曲の5分という長さに懸念を抱いたが、Bob Dylanの「Like a Rolling Stone」(1965年)がラジオで成功した前例を考慮し、フルバージョンのシングルリリースを決定した。その結果、1970年2月28日から6週間にわたりBillboard Hot 100の首位を独占し、年間チャートでも1位を獲得した。アメリカでは100万枚以上を売り上げ、ゴールド認定を受けたほか、世界で600万枚以上を売り上げた。
Simon & Garfunkelの代表作であり、世代を超えて愛されるクラシックとして今なお高い評価を受けている楽曲である。
歌詞の意味
この曲は、苦境にある相手を支えることを自らの役割として受け入れる語り手が、揺るぎない献身を静かに誓う内容になっている。相手が疲れ果て、孤独に沈み、涙を流す瞬間に寄り添い、その痛みを和らげる存在になるという意志が冒頭から明確に示される。困難が押し寄せ、周囲の支えが失われるとき、自分がその空白を埋める架け橋となるという比喩が中心に置かれ、無条件の支援が物語の核を成している。
語り手は、相手が人生の低迷や喪失に直面したときにも背を向けず、闇や重圧に包まれる場面で寄り添う姿勢を貫く。終盤では、相手が再び輝く時期へ向かうことを確信し、その歩みを後ろから支えるという形で関係が描かれ、支援は一時的な救済にとどまらず、未来への導きとしても位置づけられる。
全体として、自己犠牲を含む深い共感と献身が穏やかに語られ、苦難を渡る者を支える静かな力が象徴的に表現されている。


