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曲情報
「The Sound of Silence」(サウンド・オブ・サイレンス)(元々のタイトルは「The Sounds of Silence」)は、アメリカのフォークロックデュオ、Simon & Garfunkel(サイモン・アンド・ガーファンクル)による楽曲であり、ポール・サイモンによって作詞作曲された。この楽曲のスタジオオーディションがColumbia Recordsとの契約につながり、オリジナルのアコースティックバージョンは1964年3月にニューヨークのColumbia 7th Avenue Recording Studiosで録音され、同年10月にデビューアルバム『Wednesday Morning, 3 A.M.』に収録された。しかし、アルバムの売上は期待を下回った。
1965年、この楽曲はボストンやフロリダのラジオ局で徐々に人気を集め、プロデューサーのトム・ウィルソンはエレクトリック楽器とドラムをオーバーダビングしたリミックスバージョンを制作した。このリミックスはSimon & Garfunkelには知らされず、1965年9月にシングルとしてリリースされた。その後、Billboard Hot 100で1位を獲得し、Simon & Garfunkelの再結成につながった。Columbia Recordsはこのヒットに乗じて、彼らの2作目のアルバムを『Sounds of Silence』と名付け、リミックスバージョンを収録した。
この楽曲は1967年の映画『卒業』にも使用され、そのサウンドトラックにも収録された。また、1968年にはEP『Mrs. Robinson』にも収録され、「Mrs. Robinson」「April Come She Will」「Scarborough Fair/Canticle」と共にリリースされた。
「The Sound of Silence」はアメリカ国内のみならず、オーストラリア、オーストリア、西ドイツ、日本、オランダなどでもトップ10入りを果たし、Simon & Garfunkelの代表曲の一つとなった。その後、1972年のコンピレーションアルバム『Simon and Garfunkel’s Greatest Hits』を皮切りに、多くのベストアルバムに収録されている。
背景
オリジナル録音
Simon & Garfunkelは1960年代初頭にフォークミュージックとカウンターカルチャーに興味を持ち、それぞれ独自の音楽活動を展開していた。二人は1950年代後半に「Tom and Jerry」として活動していたが、大学進学を機に解散していた。しかし1963年に再結成し、クイーンズの地元でポール・サイモンの楽曲を披露し始めた。
1963年9月、ニューヨークのフォーククラブ「Gerde’s Folk City」での演奏がColumbia Recordsのプロデューサー、トム・ウィルソンの目に留まり、彼の推薦でColumbiaとの契約が決まった。その際のオーディションで「The Sound of Silence」が演奏されたことが契約の決め手となった。
この楽曲の歌詞の解釈には諸説あり、1963年11月に起きたジョン・F・ケネディ暗殺事件を扱ったものと考える説もあるが、Simon & Garfunkelが「Kane & Garr」名義でこの曲をライブで披露したのは暗殺の2ヶ月前であり、直接の関係は不明である。
ポール・サイモンはこの曲を21歳のときに作曲し、バスルームで暗闇の中で演奏しながら歌詞を書いたと語っている。アート・ガーファンクルは、この楽曲が「人々が感情的にコミュニケーションを取ることの困難さを描いたもの」であると説明している。
リミックスバージョン
『Wednesday Morning, 3 A.M.』の商業的失敗の後、サイモンはロンドンに渡り、ソロ活動を開始した。一方、アメリカでは「The Sound of Silence」がボストンのWBZをはじめとするラジオ局で人気を博し、Columbia Recordsのプロモーション担当者はフロリダの春休みでの学生の反応を見て、楽曲のヒットの可能性を確信した。
プロデューサーのトム・ウィルソンは、この曲にエレクトリック楽器とドラムを加えたリミックスを独断で制作し、1965年9月にシングルとしてリリースした。Simon & Garfunkelはこの変更を知らされておらず、ポール・サイモンは最初にリミックスを聴いた際に驚愕したという。しかし、楽曲はBillboard Hot 100で1位を獲得し、Simon & Garfunkelの本格的な成功へとつながった。
歌詞と構成
「The Sound of Silence」の歌詞は5つのスタンザ(詩節)で構成され、それぞれが7行からなる。各スタンザは、静寂の中での観察から始まり、次第に社会に対する批判的な視点へと展開していく。特に、「沈黙が癌のように成長する(silence like a cancer grows)」という歌詞は、60年代の文化的疎外感や孤独を象徴しているとされる。
音楽的には、楽曲はD♯マイナーで書かれ、サイモンはカポタストを6フレットに装着し、Am、G、F、Cのコードフォームを用いて演奏している。オリジナルのアコースティックバージョンでは、サイモンが低音のハーモニーを担当し、ガーファンクルがメロディーを歌っている。
パーソネル
- ポール・サイモン – アコースティックギター、ボーカル
- アート・ガーファンクル – ボーカル
- バリー・コーンフェルド – アコースティックギター
- ビル・リー – ダブルベース
(エレクトリックオーバーダビングの追加メンバー)
- アル・ゴルゴーニ、ヴィニー・ベル – ギター
- ジョー・マック(ジョー・マチョ) – ベースギター
- ボビー・グレッグ – ドラム
商業的成功
「The Sound of Silence」は、Billboard Hot 100で1966年1月1日付のチャートで1位を獲得し、14週間にわたりチャートに留まった。1965年末から1966年初頭にかけて、ビートルズの「We Can Work It Out」とチャート1位争いを繰り広げ、最終的にSimon & Garfunkelの最大のヒットの一つとなった。
その後、Simon & Garfunkelはこの成功を受けてアルバム『Sounds of Silence』を制作し、同名のタイトルでリリースされた。現在も世代を超えて愛されるクラシックソングとして高い評価を受けている楽曲である。
歌詞の意味
この曲は、都市の喧騒のただ中で感じる“孤独”を、静寂という名の暗闇として描き出した内容になっている。語り手は夜の街を漂いながら、光や人々の姿を見てもその中心に自分が入り込めないまま、世界との断絶を深く自覚していく。夢の中のような景色は抽象的でありながら、疎外感の実感だけが鋭く残る。
人々は声を交わしているように見えても、実際には誰も互いを理解しようとしていない。言葉が空回りし、思考が共有されず、表面的なコミュニケーションだけが増殖する。その無意味な騒がしさと、語り手の孤独な“静けさ”が対照になり、静寂はむしろ腐食するように広がっていく。
さらに語り手は、警告や理解を願って言葉を投げかけるが、それすらも無力なまま“雨粒のように”沈んでいく。誰も聞き取らず、誰も受け取らない世界の中では、発された言葉は静寂を深める残響として消える。
終盤では、街のネオンが“神”として崇められる姿が示され、現代社会の空虚な信仰と象徴主義が浮かび上がる。人々が本来耳を傾けるべき真実や洞察は、地下鉄や古びた建物の壁に無造作に刻まれ、誰からも軽視されているにもかかわらず、静寂の中でひっそりと生き続ける。
全体として、孤独、断絶、無理解が織り成す重い静けさを通して、現代のコミュニケーションの空洞化と精神の孤立を見つめる曲になっている。


