【曲解説】The Beatles – I Saw Her Standing There

音源

曲情報

「I Saw Her Standing There」(アイ・ソウ・ハー・スタンディング・ゼア)は、イギリスのロックバンド、ビートルズによる楽曲で、ポール・マッカートニーとジョン・レノンによって書かれた。1963年のデビュー・アルバム『Please Please Me』およびアメリカでのデビュー・アルバム『Introducing… The Beatles』の1曲目に収録された。

1963年12月、キャピトル・レコードはアメリカでこの曲を「I Want to Hold Your Hand」のB面としてリリースした。A面は1964年2月1日から7週連続で全米ビルボード1位を獲得し、「I Saw Her Standing There」は2月8日にHot 100へ入り、11週間チャートイン、最高位は14位だった。同週にはCashboxチャートで100位に1週だけ登場した。2004年には、『ローリング・ストーン』誌の「史上最も偉大な500曲」で139位に選出された。

作曲

この曲はもともと「Seventeen」という仮題で、マッカートニーがマージーサイドのサウスポートからの帰り道、ビートルズのコンサートの後に着想を得たもので、「Seventeen Come Sunday」の現代版として書かれた。伝記作家マーク・ルイソンによれば、マッカートニーは1962年10月22日の夜、リヴァプールの友人ローリー・ストームの家でアコースティックギターを使ってコードとアレンジを初めて固めた。2日後、当時17歳だった恋人セリア・モーティマーとロンドンを訪れた際に歌詞の一部を執筆した。約1か月後、自宅のForthlin Roadでレノンとともに完成させた。1962年12月にはハンブルクのスター・クラブでセットリストに加えられていた。

マッカートニーは雑誌『Beat Instrumental』でこの楽曲について、「チャック・ベリーの『Talkin’ About You』からベースのリフを拝借した」と述べている。実際、ビートルズはこのチャック・ベリーの曲をライブでも演奏しており、その音源は『Live! at the Star-Club in Hamburg, Germany; 1962』および『On Air – Live at the BBC Volume 2』に収録されている。

歌詞はリヴァプール・インスティテュートのノートに書かれたもので、マッカートニーの兄マイクの著書『Remember: The Recollections and Photographs of the Beatles』には、レノンとマッカートニーがギターを手にしながらこの曲を書いている写真が掲載されている。マッカートニーは「『She was just seventeen』という行に『never been a beauty queen』を続けようとしたが、レノンが笑いながらそれはダメだと言った」と回想している。結果として「You know what I mean」という曖昧な表現が採用された。

クレジットは「McCartney–Lennon」となっており、後の「Lennon–McCartney」表記とは異なる。

録音

最初のライブ録音(スローなバージョン)は1962年末のキャバーン・クラブで行われ、レノンはリズムギターではなく、ハーモニカをイントロとヴァースで演奏した。2度目のヴァースでは、「Well we danced all night…」の歌詞の後にレノンとマッカートニーが笑っているのが確認できる。

EMIスタジオでの公式録音は1963年2月11日で、ノーマン・スミスがエンジニアを務めた。『Please Please Me』に収録された14曲のうち10曲がこの1日のセッションで録音された。ミキシング作業は2月25日に行われたが、ビートルズはこのセッションには立ち会っていない。

アルバム・バージョンでは、マッカートニーの「One, two, three, four!」というカウントインで曲が始まる。通常、このようなカウントインは編集で削除されるが、プロデューサーのジョージ・マーティンはライブ感を出すため、テイク9のカウントインをテイク1に編集して使用した。

この曲は当時、ビートルズのライブでもオープニング曲として演奏されていた。アメリカのVee Jayレコード盤では、カウントの「Four!」以外は編集でカットされている。

テイク9の全編は、シングル「Free as a Bird」のB面として初リリースされた。テイク2は2013年にiTunes限定で配信されたアルバム『The Beatles Bootleg Recordings 1963』に収録された。

評価

アメリカでのシングル発売時、雑誌『Cash Box』は「魅力的なハード・ヒッティングなティーン向け作品」と評している。

歌詞の意味

この曲は一目惚れの衝撃と高揚を、そのまま弾けるような勢いで描いている。主人公は彼女を見つけた瞬間に心を奪われ、胸が鳴って体が勝手に動くように惹かれていく。視線が合っただけで恋に落ちる予感が走り、手を取って踊るうちに気持ちは確信へ変わり、もう他の誰とも踊る必要がなくなるほど彼女だけに夢中になってしまうという内容。若さとときめきが混ざり合い、最初の出会いがそのまま恋の始まりに変わっていく瞬間の鮮やかさが、軽快なリズムとともにまっすぐ響く曲になっている。

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