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オーディオ(2009リマスター)
曲情報
「Let It Be」(レット・イット・ビー)は、イギリスのロックバンド、The Beatles(ザ・ビートルズ)の楽曲で、1970年3月6日にシングルとしてリリースされ、同名のアルバム『Let It Be』にも(別ミックスで)収録された。Paul McCartney(ポール・マッカートニー)によって作詞作曲・歌唱され、Lennon–McCartney名義でクレジットされている。シングルバージョンはGeorge Martin(ジョージ・マーティン)のプロデュースで、ギターソロが柔らかく、オーケストラの音量も控えめにミックスされている。一方、Phil Spector(フィル・スペクター)によるアルバムバージョンでは、ギターソロがよりアグレッシブで、オーケストラが強調されている。
この曲はBillboard Hot 100で初登場6位という当時としては最高のスタートを切り、最終的に1位を獲得した。マッカートニーがビートルズ脱退を発表する直前にリリースされた最後のシングルであり、同アルバム『Let It Be』とアメリカ版シングル「The Long and Winding Road」は、解散発表後にリリースされた。
背景と制作
着想
曲の起源については2つの異なる説明が存在する。マッカートニー自身の説明によれば、1956年に癌で亡くなった母・Mary Patricia McCartney(メアリー・パトリシア・マッカートニー)の夢を見たことがきっかけだったという。彼は「母にまた会えたようで素晴らしかった。祝福された気持ちになった。それで『Let It Be』を書いた」と語っている。夢の中で母から「すべてうまくいく、あるがままに任せなさい」と言われたという。
一方、ビートルズのロードマネージャーだったMalcolm Evans(マルコム・エヴァンス)は異なる証言をしており、1968年3月にインドで瞑想していた際、マッカートニーがビジョンの中でエヴァンスの姿を見たことが着想の元だと述べている。実際、1968年9月19日の「Piggies」のセッション中に初めて「Let It Be」を弾いた際には「Mother Mary」ではなく「Brother Malcolm」という歌詞が使われており、この証言を裏付けている。
録音
楽曲の本格的なリハーサルは1969年1月3日、Twickenham Film Studios(トゥイッケナム・フィルム・スタジオ)で始まった。1月23日からApple Studiosでマルチトラック録音が開始され、1月31日に本テイクが録音された。マッカートニーはBlüthner(ブリュートナー)製ピアノを、リンゴ・スターはドラムを担当し、ジョージ・ハリスンはギター、ビリー・プレストンはハモンドオルガンを演奏した。
この日の2つの演奏が映像と音源として残されており、シングルやアルバムに使用されたのは「Take 27-A」である。もう1つの「Take 27-B」は映画『Let It Be』に使用された。2021年の『Let It Be』スーパー・デラックス版には、映画で使用されたテイクの新ミックス「Take 28」が収録されている。
1969年4月30日、ジョージ・ハリスンがギターソロをオーバーダブし、1970年1月4日にも別のソロを追加録音した。前者がシングルに、後者がアルバムに使用されている。この違いにより、2つの基本トラックがあると誤解されることがある。
マッカートニーは1969年後半にこの楽曲のデモをJerry Wexler(ジェリー・ウェクスラー)に送り、彼を通じてAretha Franklin(アレサ・フランクリン)が1970年1月に本作をリリースしている。これは「Let It Be」として最初に世に出たバージョンとなった。
歌詞の意味
この曲は困難や悲しみに押しつぶされそうな時に、焦らず抗わず、静かに受け入れることで道が開けるという優しい慰めを語っている。心が暗闇に沈む瞬間、夢のように現れて“そのままでいい”と語りかけてくれる存在が、絶望の中にも小さな光が消えていないことをそっと教えてくれる内容。世界で傷ついた人々にも、離れ離れになっていても再び理解し合える希望が残っていると信じ、答えは必ず訪れるという穏やかな確信が流れている。曇った夜にも明日へ続く光が射し、音楽に目を覚まされるように心が救われていく感覚が重なり、静かで包み込むような平和が広がる曲になっている。


