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Abbey Road
The Beatles
曲情報
“Octopus’s Garden”(オクトパスズ・ガーデン)は、イギリスのロックバンド、ビートルズの楽曲で、1969年のアルバム『Abbey Road』に収録されている。リンゴ・スター(本名リチャード・スターキー)が作詞・作曲し、リードボーカルを務めた。ジョージ・ハリスンが楽曲制作を手助けし、「『Octopus’s Garden』はリンゴの曲だ。彼が書いたのはこれが2曲目で、とても素晴らしい曲だ」と評価した。また、ハリスンは「この曲はとても平和的で、聴く人の意識に深く入り込む」とも語っている。この曲は、スターがリードボーカルを務めた最後のビートルズの楽曲である。
作曲
この曲のアイデアは、スターが1968年にコメディアンのピーター・セラーズの船に乗ってサルデーニャを訪れた際に生まれた。彼は昼食にフィッシュ・アンド・チップスを注文したが、出されたのはイカだった。スターは「初めてイカを食べたけど、まあまあだった。ちょっとゴムっぽくて、鶏肉みたいな味だった」と語っている。その際、船長がタコについての話をし、タコが海底を移動しながら石や光るものを集めて「庭」を作ることを説明した。この話に触発され、スターは曲を書き始めた。
当時、ビートルズ内の緊張が高まっていたため、スターは「自分も海の底に逃れたい」と感じていたという。楽曲のコード進行の一部はハリスンが手助けし、ドキュメンタリー映画『Let It Be』(1970年)や『The Beatles: Get Back』(2021年)には、スターがピアノで楽曲を作る様子や、ジョン・レノンがドラムで加わる様子が映っている。
録音
この楽曲の基本トラックは1969年4月26日に録音された。演奏はハリスン(リードギター)、レノン(リズムギター)、ポール・マッカートニー(ベースギター)、スター(ドラムス)という編成で行われた。スターはこの日に仮のボーカルを録音した(この仮ボーカル入りのテイク2は『Anthology 3』のディスク2に収録されている)。
ジョージ・マーティン不在の中、ビートルズ自身がプロデューサーを務め、エンジニアのクリス・トーマスがアシスタントとして参加した。満足のいくテイクを得るまでに32回の録音が必要だった。
マーク・ルイソンによれば、ギターソロのバックコーラスにはコンプレッサーやリミッターが使用され、うねるような効果を生み出している。しかし、アラン・パーソンズは、この効果はギターアンプのトレモロによるものではないかと指摘している。また、スターの要望により、ハリスンがストローを使ってミルクの中に息を吹き込み、泡の音を作った。
メンバーと担当楽器
Kevin Howlettによると、以下の通りである。
- リンゴ・スター – リードボーカル(ダブルトラック)、ドラムス、パーカッション、泡の音
- ジョン・レノン – リズムギター
- ポール・マッカートニー – バッキングボーカル、ベースギター、ピアノ
- ジョージ・ハリスン – バッキングボーカル、リードギター
歌詞の意味
この曲は、海の底にある“タコの庭”を舞台にした、穏やかで夢のような逃避のファンタジーだ。主人公は、海の上の喧騒から離れ、タコが案内してくれる静かな場所に身を置きたいと願う。そこは友人たちを招ける、誰にも邪魔されず、嵐の下でも暖かく、安全で、歌って踊れる秘密基地のような空間。海底の洞窟や珊瑚のまわりを自由に泳ぎ回り、子どもたちも喜ぶような、完全に安心できる世界が広がる。
実際には叶わないような理想の隠れ家を想像することで、「誰にも指図されず、ただ幸福でいられる場所」を求める心が素直に描かれている。全体を通して、優しく伸びやかなメロディとともに、心がほぐれていくような温かい夢が続く。

