【曲解説】The Police – Driven to Tears

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曲情報

「Driven to Tears」はスティングが作詞作曲し、ポリスが1980年のアルバム『Zenyatta Mondatta』で初めて発表した楽曲である。シングルとしては発売されなかったが、Billboard Mainstream Rock Tracksチャートで35位を記録した。歌詞には政治的な含意が込められており、スティングやポリスのその後の音楽活動に繰り返し現れる政治的アクティビズムの始まりを示す楽曲とされている。クラシック・ロック系のラジオ局では、アルバムの次曲「When the World Is Running Down, You Make the Best of What’s Still Around」と連続で放送されることが多い。


テーマ

この曲のテーマは、貧富の格差である。ポリスが発表した最初の政治的テーマを扱う曲のひとつであり、スティングが初めて書いた政治的な歌でもある。スティングは1979年にアメリカでツアーを行っていた際、テレビでビアフラの飢えに苦しむ子供たちの姿を見て衝撃を受け、この曲を書いたと述べている。彼は番組に文字通り「涙を流さざるを得なかった」ことからタイトルが生まれたと語っている。歌詞は問いかけを投げかけるが、明確な答えを示さない。その中には「人々はテレビを見る技術を持ちながら、飢える子供たちに食べ物を与えることはできない」という皮肉も含まれている。


構成

曲はイ短調で書かれている。ポリスのギタリスト、アンディ・サマーズによる8小節の力強いギターソロが特徴で、アルバム『Zenyatta Mondatta』における彼の数少ないソロのひとつである。批評家たちはスチュワート・コープランドのドラムを「ぎくしゃくしたシンコペーション」と評しつつ、そのリズムが「大きなエネルギーと推進力を持って浮遊している」と指摘している。ローリング・ストーン誌のデヴィッド・フリックはこの曲を、ポリスが愛したレゲエの要素を取り入れた「陰鬱な」作品と呼び、AllMusicのクリス・トゥルーは「ミッドテンポのレゲエ・ワークアウト」と表現した。

クリス・ウェルチはこの曲を「抑えきれない怒りで突き進む」と評し、ワシントン・ポストのロバート・ハルは「ピーター・グリーン時代のフリートウッド・マックの推進力を持っている」と述べている。また、サマーズ自身も「Driven to Tears」をスティングが書いた楽曲の中でも特に優れたものであり、アルバムの「肉」となる存在だと考えていた。


ライブでの歴史

1980年前後のライヴ映像では「Driven to Tears」が映画『Urgh! A Music War』の冒頭を飾っている。

スティングは1985年のライブ・エイドでこの曲を演奏し、1986年のソロ・ライヴアルバム『Bring on the Night』にも収録した。このバージョンにはサックス奏者ブランフォード・マルサリスのソロが含まれる。1993年のボックスセット『Message in a Box』にはポリスによるライヴ版が収録された。

2014年にはポール・サイモンとのジョイント・ツアー「On Stage Together」のセットリストにも組み込まれ、このときはギターとヴァイオリンのソロが演奏された。2025年1月30日には、スティングがカリフォルニア州イングルウッドのIntuit Domeで行われた「FireAid」チャリティーコンサートにて、山火事救済のために本曲を披露している。


カバー

「Driven to Tears」は複数のアーティストによりカバーされている。

  • 2007年、マルコ・ミンネマンがアルバム『Play the Police』でカバー。
  • 2012年、マイク・ポートノイ、ニール・モーズ、ランディ・ジョージが『Cover 2 Cover』でカバー。
  • パール・ジャムは2003年と2009年のツアーで演奏し、歌詞の一部「カメラは多すぎて食べ物は足りない」を「真実は足りない」に置き換えた。2016年5月2日、マディソン・スクエア・ガーデンでスティングと共演。
  • 2011年10月1日、俳優ロバート・ダウニー・Jr.がスティングの60歳の誕生日コンサートでこの曲を歌った。
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