【曲解説】The Police – Every Little Thing She Does Is Magic

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この曲はライブアルバム『…all this time』には収録されなかったが、DVDのボーナストラックには収録された。

曲情報

「Every Little Thing She Does Is Magic」(エヴリ・リトル・シング・シー・ダズ・イズ・マジック)は、イギリスのロックバンド、ポリスが1981年に発表した4枚目のスタジオ・アルバム『Ghost in the Machine』に収録された楽曲である。1981年11月にイギリスでシングルとして発売され、全英シングルチャートで1位を獲得し、同年のアメリカ・ビルボードHot 100では3位を記録した。

この曲はゲストキーボード奏者のジャン・アラン・ルーセルを迎えて制作された点でも珍しく、元々は1976年秋にスティングがマイク・ハウレットの自宅でデモ録音した楽曲にさかのぼる。「Every Little Thing She Does Is Magic」の人気は『Ghost in the Machine』をポリスの代表的な成功作の一つに押し上げた。

作曲

曲は4/4拍子で書かれており、DメジャーとDマイナーの間で緊張関係を作り出しながら進行する。ベースラインはリディアンスケールを上昇し、曲中には明確な調性が認識できない部分も含まれているが、最終的にはDメジャーに解決し、恋愛の高揚感を表現している。音楽的にはニューウェーブに分類され、レゲエの要素も取り入れられている。スティングはベースを4拍目と1拍目に強調してレゲエ的な感触を出しており、スチュワート・コープランドのドラムもレゲエ的な装飾を加えている。サビではカリブ風のスチールドラムの音色が鳴り響き、ピアノとシンセサイザーが主導するアレンジが特徴となっている。歌詞は片思いをテーマに、長い間相手に告白できない不器用な恋愛を描いている。

背景

スティングはこの曲を1977年初頭、エリザベス2世のシルバージュビリーの頃に書いた。これはポリス結成以前である。1997年にリリースされたストロンチウム90のスタジオアルバム『Strontium 90: Police Academy』には、この曲の初期デモが収録されており、スティングがアコースティックギターやベース、アフリカンドラム、TEACの4トラックレコーダーなどを使って一人で録音したものである。

1981年1月にはカナダのル・スタジオで再びデモが録音され、スティングは「デモは素晴らしく、ナンバーワンの曲になると思った」と述べている。その後ポリスとして録音を試みたが、オリジナルのデモの勢いを超えることができず、最終的にスティングのデモを基盤にして、他のメンバーが演奏を重ねる形で完成した。

セッションにはジャン・ルーセルが招かれ、複数のピアノやシンセサイザーのトラックを重ねた。しかし、この起用はアンディ・サマーズとスチュワート・コープランドの反発を招き、サマーズは「これはポリスのサウンドではない」と語っている。それでも最終的にデモのアレンジが採用され、楽曲は完成した。

リリースと評価

「Every Little Thing She Does Is Magic」は、イギリスとアイルランドではアルバムからの2枚目のシングルとして発売され、全英1位を記録した。また、カナダ、アイルランド、オランダでも1位を獲得し、オーストラリアやイタリアでは2位、ノルウェーでは5位を記録。アメリカでは3位に到達し、「Every Breath You Take」に次ぐ大ヒットとなった。

歌詞の一節「It’s a big enough umbrella / But it’s always me that ends up getting wet」は、次作『Synchronicity』収録の「O My God」、そしてスティングのソロアルバム『Ten Summoner’s Tales』(1993年)の「Seven Days」にも引用されている。スティングは2010年のアルバム『Symphonicities』でもオーケストラ・バージョンを再録音している。

音楽誌Record Worldは「繰り返し聴きたくなる切迫感がある」と評価し、AllMusicのクリス・トゥルーは「ポップの傑作」と評した。Ultimate Classic Rockのマイク・デュケットはポリスの楽曲の中で4位に位置づけ、「永遠のラブソング」と呼んでいる。

B面の「Flexible Strategies」は、レコード会社からの要請で即興的に録音されたジャムセッションで、コープランドは「10分ほど演奏して作っただけの代物だ」と振り返っている。

歌詞の意味

この曲は、好きな相手に想いを伝えたいのに、緊張して言葉が出なくなってしまう主人公のもどかしさと、とめどなく湧き上がる恋心を軽やかに描いている。相手の何気ない仕草でさえ魔法のように心を動かされ、彼女の存在が日常の暗さまで払いのけてしまうほど大きな光になっているのに、本人の前に立つと勇気がしぼんでしまう。

彼は何度も告白しようと決心し、電話をかけることさえイメージしては躊躇い、心の中で気持ちを反芻し続けている。過去の人生がどれだけつらくても、彼女と出会ってから世界が一変したという実感が胸にあり、その気持ちが前へ進む希望になっている。

雨の日をたとえ話として使い、いつも自分だけが濡れてしまうような不器用さを自嘲気味に語りながら、それでも彼女への想いだけは絶えることがないと確信している様子が切なくも温かい。変わらない片思いの痛みと、その中に宿る純粋さが、繰り返されるフレーズとともに心に残る。

全体として、臆病で不器用な恋心を、軽快なリズムの中にほんのり切なさと温もりを込めて描いた、甘酸っぱいラブソングになっている。

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