【曲解説】U2 – Gloria

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曲情報

「Gloria」(グロリア)は、アイルランドのロックバンドU2(ユーツー)の楽曲であり、1981年のアルバム『October』のオープニングトラックであり、2枚目のシングルとしてリリースされた。

この曲のサビには、「Gloria in Excelsis Deo」という典礼文のラテン語のフレーズが使用されている。イギリスのシングルチャートでは最高55位と、U2のシングルの中では比較的低い順位にとどまったが、アイルランドやニュージーランドではトップ20入りを果たした。

AllMusicはこの曲を「U2がメッセージ、メロディ、サウンドを完璧に融合させた例」と称賛し、「その結果は非常に印象的である」と述べた。一方、Pitchforkは「楽曲としてのダイナミズムはあるが、ラテン語のコーラスがアンセム的要素を抑制している」と評した。

作曲

コーラスの「Gloria in te Domine / Gloria exultate」は、「主に栄光あれ/歓喜せよ」という意味であり、「in te Domine」は詩編30:2(in te Domine, speravi、「主よ、私はあなたに希望を置いた」)に由来する。また、「Only in You I’m complete(ただあなたの中で私は完成する)」という歌詞は、コロサイの信徒への手紙2:9-10を、「The door is open / You’re standing there(扉は開かれている/あなたはそこに立っている)」という歌詞は、ヤコブの手紙5:7-9を参照している。

この曲は、ヴァン・モリソンの1964年のラブソング「Gloria」にも言及している。ボノは1994年の書籍『Race of Angels』の中で次のように語っている。

「この歌詞は本当に気に入っている。すごく速く書き上げたものだけど、言葉を超えようとする試みが表れていると思う。『この歌を歌おうとする… 立ち上がろうとするが足が見つからない』という部分や、ラテン語の要素を取り入れているところが好きだ。最後には完全にラテン語の賛美歌になる、それが今でも笑えるんだ。本当にクレイジーで壮大でオペラ的な仕上がりだ。そしてもちろん、ヴァン・モリソンの『Gloria』は女性についての歌だ。アイルランドのバンドとして、それを意識せざるを得なかった。そして、それがとても興味深い瞬間だったんだ。人々が、女性について精神的な意味で書けること、神についても性的な意味で書けることを理解し始めた瞬間だったと思う。それ以前は、その間には明確な境界線があった。でも『神について歌うけど、それは女性のことかもしれない』という考えが生まれたんだ。表向きは神について歌っているけれど、実は女性のことを歌っているのかもしれない!」

ライブ演奏

「Gloria」はコンサートで370回以上演奏されている。この曲は『October Tour』の初期から演奏され、ボノは「Gloria and Gloria」と紹介していた。『Lovetown Tour』までのすべてのツアーで演奏されたが、その後15年間セットリストから外れた。しかし、『Vertigo Tour』で再び演奏されるようになった。その後、『Innocence + Experience Tour』ではセットリストの2曲目として演奏され、「The Electric Co.」や「Out of Control」と交互に披露された。『Experience + Innocence Tour』では、「All Because of You」や「Red Flag Day」と交互に演奏された。さらに、『The Joshua Tree Tour 2019』では2回演奏され、「I Will Follow」の代わりにセットリストに加えられた。

ライブバージョンは、『Under a Blood Red Sky』および『Live at Red Rocks: Under a Blood Red Sky』のDVDに収録されている。また、『October(Special Edition)』のCDには、ハマースミス・パレスでのライブバージョンが収録されている。

ミュージックビデオ

「Gloria」のミュージックビデオは、Meiert Avisによって脚本・監督され、1981年10月にダブリンのグランド・キャナル・ドックにあるバージ(はしけ)の上で撮影された。この場所は、U2のレコーディングスタジオ「Windmill Lane Studios」の近くである。「Gloria」は、MTVで頻繁に放送された最初のU2のミュージックビデオとなった。ビデオでは、U2がバージの上で演奏し、それを見守る群衆が踊る様子が映し出されている。しかし、この曲とビデオは、これまでのU2のコンピレーションアルバムやビデオコレクションには収録されていない。

歌詞の意味

この曲は自己の無力さと救いへの希求を中心に据えた内容になっている。語り手は自らの力では前に進めず、声を上げることすらままならない状態に置かれているが、特定の存在の前では欠けた部分が満たされるという感覚が示される。扉を探し続けても見つからない状況から一転し、相手が先に扉を開き、受け入れる構図が強調される。反復される祈りの言葉は、超越的な存在への依存と献身を象徴し、もし自分が何かを持っているならすべて差し出すという姿勢も提示される。全体として、迷いの中にある人間が救済と導きを求め、聖性への希求を繰り返し表明する構造を形成している。

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