【曲解説】U2 – In God’s Country

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曲情報

「In God’s Country(イン・ゴッズ・カントリー)」は、U2の楽曲であり、アルバム『The Joshua Tree』の7曲目に収録されている。この曲は1987年11月に北アメリカ限定でアルバムの4枚目のシングルとしてリリースされた。

録音と作曲

ベーシストのアダム・クレイトンは「このアルバムでは、砂漠が私たちにとって精神的なイメージとして大きなインスピレーションとなった。砂漠は一見すると不毛な場所のように思えるが、正しい心構えを持てば、それは真っ白なキャンバスのようであり、何かを創造できる可能性を秘めている」と語っている。

「In God’s Country」はバンドにとって録音が難しい曲であった。メンバーは自分たちを訓練されたミュージシャンではないと考えており、高く評価していなかった。『The Joshua Tree』のセッション中、バンドはこの曲が最高の楽曲にはならないことを認識していたが、アルバムにはテンポの速い曲が必要だったため、収録を決定した。

ボノは「この曲の歌詞は良いし、メロディーもなかなか良い。しかし、フックがまあまあなのはエッジのせいだ」と語っている。

この曲はエッジの自宅の地下室で録音された。プロデューサーのダニエル・ラノワは、その部屋を「蒸し暑くて音が響かない空間」と評し、特にインスピレーションを感じる場所ではなかったと述べている。しかし、そうした環境がかえって曲のスピード感や即興性を引き出し、録音を成功させた。エッジのギターの音を「美しく輝くような音色」に仕上げるために、ミキシングコンソールのチャンネルを活用し、曲の雰囲気を形作った。

ボノは当初、この曲がアイルランドについてのものなのか、それともアメリカ合衆国についてのものなのかを明確にしていなかった。しかし最終的に自由の女神に捧げる曲とした。歌詞ではアメリカを「砂漠のバラ」や「ボロボロのドレスをまとったセイレーン」と表現し、悲しくも魅力的なイメージを描いている。また、西側諸国の政治的アイデアの欠如についても歌われており、ボノはこの曲をニカラグアの革命と対比して語っている。

歌詞の意味

この曲は荒涼とした風景を背景に、救済への希求と幻想の崩壊を交錯させる内容になっている。砂漠は枯渇と渇望の象徴として描かれ、そこで見いだされる女性像は自由や希望を象徴しつつも、同時に虚栄や危うさをまとった存在として提示される。語り手はその呼び声に引き寄せられ、破滅と救いの境界に立たされる姿を示す。

眠りが薬のように作用する描写は、現実の過酷さに対する逃避であると同時に、信仰や国家の象徴がもたらす甘美な麻痺を暗示し、歪んだ十字架や悲しげな瞳といったイメージは理想の地に潜む矛盾を象徴している。夢想家が日々倒れていくという表現は、希望を追い求める行為が常に代償を伴うことを示し、自由を体現する存在が導くものが純粋な救済とは限らないという含意が浮かび上がる。

終盤では愛の火によって焼かれるような強烈な比喩が用いられ、神聖視された土地と欲望の衝突、救済を求めながらその炎にさらされる人間の矛盾が強調される。全体として、理想化された「国」への憧れと、その背後に潜む幻想性と危うさを象徴的に描く構成になっている。

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