動画
曲情報
「Trip Through Your Wires(トリップ・スルー・ユア・ワイヤーズ)」は、アイルランドのロックバンドU2(ユーツー)の楽曲であり、1987年のアルバム『The Joshua Tree』の8曲目に収録されている。ブルース調のリズムを持ち、ボーカルのボノがハーモニカを演奏しているのが特徴である。
録音
1986年、この曲の初期バージョンが異なる歌詞でアイルランドの放送局RTÉの番組『TV GAGA』で演奏された。
アルバム収録用の録音セッションでは、プロデューサーのダニエル・ラノワが電子オートハープであるオムニコードを演奏した。彼はこれをギタリストのエッジの機材に接続し、ディレイエフェクトユニットとギターアンプを通して使用した。ラノワは、この音が「背景で鳴り響くオルガンのようだ」と評している。
リリース
この曲はオーストラリアでプロモーション用のシングルとしてリリースされ、限定500枚の手書きナンバリング入りのコピーが配布された。シングルにはB面曲として「Luminous Times(Hold on to Love)」、「Spanish Eyes」、「Silver and Gold」が収録されている。
「Trip Through Your Wires」は『The Joshua Tree Tour』の全期間でライブ演奏されたが、その後は演奏されなかった。しかし、2017年の『The Joshua Tree Tour 2017』でアルバム全曲がセットリストに含まれた際に再び演奏された。
エッジによると、この曲は本来、アルバムに収録されなかった別の楽曲「The Sweetest Thing」と対になるものとして意図されていた。「The Sweetest Thing」は後に「Where the Streets Have No Name」のB面としてリリースされ、1998年のコンピレーションアルバム『The Best of 1980–1990』のために再録音され、シングルとして発売された。
歌詞の意味
この曲は救済と誘惑が入り混じる関係性を中心に描かれている。語り手は傷つき、寒さや渇きに象徴される欠乏の状態にありながら、相手によって再び形を整えられ、生き返るような感覚を得ている。その相手は恩恵を与える存在として描かれる一方で、語り手の欲望を刺激する力をも併せ持ち、天使か悪魔か判別できない曖昧さを帯びている。
救いと依存の二重性は、語り手が相手の与える安らぎや欲望に引き寄せられ、制御できないまま引きずられていく感覚として表現される。衣服や水といった基本的な保護の象徴が与えられる一方で、乾ききった喉や枯れた井戸といった比喩が、満たされない欲求と危機感を強調する。
後半では、遠方から呼びかける語り手の姿が再び提示され、嵐の兆しが迫る景観と結びつけられる。再来する構図は、関係性が円環的であり、救済と渇望の往復が続いていることを示唆する。全体として、この曲は救われたい願望と破滅へ傾く衝動が錯綜する葛藤を、叙情的に浮かび上がらせている。

