【曲解説】NSYNC – Sailing

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曲情報

「Sailing」(セイリング)はクリストファー・クロスの曲。この曲はアメリカのボーイバンド、NSYNC(インシンク)によってカバーされ、1997年5月26日にリリースされた彼らのデビュースタジオアルバム『’NSync』に収録された。

NSYNCのデモ録音と初期制作

結成されたばかりのグループは、クローゼット内でデモ録音を始め、それが最終的に「Sailing」や「Giddy Up」となった。NSYNCは、アメリカ国歌を歌う姿を見たシャキール・オニールの招待を受け、彼のオーランドの自宅で録音する機会を得た。

「Sailing」の制作では、まずインストゥルメンタルが録音され、その後NSYNCがハーモニーやボーカルを重ねていった。一方、「Giddy Up」は、コンピューターを用いたボーカル・ジャムセッションから生まれた楽曲である。

また、グループはプロデューサーのヴァイト・レンのスタジオでも録音を行った。彼のスタジオでは、防音効果を高めるためにマットレスが使用されていた。

歌詞の意味

この曲は、現実の重さから一時的に解き放たれ、静かな自由と安らぎを求める語り手の心象を、航海の比喩によって描いている。風に乗って進むというイメージは、自力ではなく自然の流れに身を委ねる解放感を示し、心を縛る雑念から距離を置こうとする姿勢と結びついている。帆という「キャンバス」が奇跡を起こすと語られるのは、外側の景色ではなく、航海という行為そのものが内面に変化をもたらすという理解を象徴している。

語り手は航海を現実逃避としてではなく、無垢さや静けさを取り戻すための手段として捉え、幻想と音楽的な高揚が重なり合う瞬間に安息を感じている。空想が自分を支配するのではなく、自分を軽やかに運んでくれるという肯定的な役割を果たし、自由への到達が約束された場所のように描かれる。

終盤では、喧騒から正気へ戻る道のりもまた短いと語られ、航海は一時的な逃避ではなく、自己の調和を取り戻す行為として位置づけられる。全体として、海と風を媒介に心の静寂と回復を追い求める語りが、柔らかな幻想性をまとって展開されている。

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