【曲解説】Queen – One Vision

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曲情報

「One Vision」(ワン・ヴィジョン)は、イギリスのロックバンド、クイーンが1985年11月にシングルとして発表し、1986年のアルバム『A Kind of Magic』に収録された楽曲である。ドラマーのロジャー・テイラーによって発案され、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの生涯と功績に影響を受けた。歌詞は困難を乗り越えて戦う人間の姿を描いている。

この曲は『Queen: Days of Our Lives』のドキュメンタリーの中で、テイラー自身が「マーティン・ルーサー・キングの有名なスピーチの一部を借用したようなものだ」と述べている。ミュージックビデオでは、1975年の「Bohemian Rhapsody」の有名なポーズが1985年版へとモーフィングする効果が使われた。

この曲は「Magic Tour」の全公演のオープニング曲として演奏され、メンバーはそのイントロがライブの幕開けに最適だったと述べている。

背景と制作

制作

「One Vision」はメンバー全員の合作であり、最終的な決定権を持つ者がいなかったため、楽曲の制作には時間がかかった。スタジオで1週間にわたってさまざまなアイデアが生まれ、その中から「One Vision」が完成した。

イントロはクルツヴァイルK250シンセサイザーを使用して作成された。プロデューサーのマックは、フレディ・マーキュリーの求めた「奇妙な音や渦巻くような音」を再現するために、マーキュリーのボーカルをサンプリングし、ピッチを下げるなどのエフェクトを施した。また、エンディングのジェット音のような効果も同様に制作された。

ギターの音作りには、ブライアン・メイがカスタムのピート・コーニッシュ製ディストーションボックスを使用し、VOX AC30アンプ2台を通してMXRディレイ(7ms~12msで変化)を挟んで録音した。最後のコーラスにおける三重奏のギターハーモニーは、2台のAC30で作られている。リードギターのブレイクはロンドンのメゾン・ルージュ・スタジオで録音され、ガリアン・クルーガー製のアンプを使用している。

バックコーラスは3声、場合によっては4声のハーモニーで、メイ、テイラー、マーキュリーがそれぞれのパートを3回ずつ録音したことで、厚みのある仕上がりとなっている。

リズムセクションでは、テイラーのシモンズ・キットがLinnDrumドラムマシンと組み合わされ、リアルドラムが重ねられた。スネアの音はシモンズのスネアをAMSディレイで処理し、リアルスネアと同期させて強調された。

ミュージックビデオ

「One Vision」のミュージックビデオは、1985年9月にミュンヘンのミュージックランド・スタジオでの録音風景を中心に撮影された。オーストリア人監督デュオ「DoRo」(ルディ・ドレザル&ハンネス・ロッサッハー)が監督を務め、彼らは後に「Innuendo」や「The Show Must Go On」のビデオ制作にも関わる。

ビデオには1974年のアルバム『Queen II』および1975年の「Bohemian Rhapsody」のポーズが1985年版にモーフィングする映像効果が採用されている。また、ジョン・ディーコンがドラムを演奏する場面もある。

この曲は映画『アイアン・イーグル』のサウンドトラックにも使用され、映画のトレーニングおよび戦闘シーンに登場した。映画の映像をミュージックビデオに組み込んだバージョンも制作されている。

「フライドチキン」の歌詞

楽曲の最後に「fried chicken」と歌われるフレーズは、もともと「one vision」だったが、制作中にフレディ・マーキュリーがジョークとして追加したものだった。リハーサル中には「one shrimp, one prawn, one clam, one chicken(1匹のエビ、1匹のクルマエビ、1個のハマグリ、1羽の鶏肉)」といったユーモラスな歌詞が試されたが、最終的に「fried chicken(フライドチキン)」が残った。

チャート成績

「One Vision」はイギリスのシングルチャートで7位、アイルランドで5位、オーストラリアのKent Music Reportで10位を記録した。オランダ(21位)、スイス(24位)、西ドイツ(26位)でもトップ40入りし、アメリカのBillboard Hot 100では最高61位を記録したが、Mainstream Rock Chartでは19位を記録し、カナダのRPM 100シングルチャートでは76位にランクインした。

影響

この曲はクイーンの「Magic Tour」のすべての公演のオープニング曲として使用され、以降のツアーでも演奏されることがあった。マーキュリーの生前最後のツアーであった「Magic Tour」において特に重要な位置を占めた。

また、1986年の映画『アイアン・イーグル』のトレーニングおよび戦闘シーンに使用され、映画のサウンドトラックにも収録された。

MTVではクイーンのアメリカでの人気が低下していた時期にも関わらず、このミュージックビデオが頻繁に放送された。

歌詞の意味

この曲は世界が分断や対立に揺れる中で、人類が本来共有しうる理想としての「一つのビジョン」を掲げる内容になっている。語り手は、個々の違いを超えて結びつく未来像を提示し、白黒や善悪、憎しみや争いといった二項対立を無効化するような統一の感覚を強調する。そこには、若い頃に抱いた希望や連帯の夢が背景としてあり、それが時代の変化や現実の圧力によって傷つけられたという痛みも含まれている。

夢が損なわれてもなお、語り手は再び結束の可能性を呼び起こそうとし、手を取り合うことを象徴的なアクションとして提示する。人種や国境を越え、憎しみを排して進むべき一方向を指し示す姿勢は、楽曲全体を貫く核心であり、エネルギッシュな語りと祝祭的な高揚が理想への希求を支える構造となっている。

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