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曲情報
「Tell Her About It」(テル・ハー・アバウト・イット、邦題:あの娘にアタック)は、ビリー・ジョエルが1983年にアルバム『An Innocent Man(アン・イノセント・マン)』からの第1弾シングルとして7月にリリースした楽曲である。この曲では、若い男性に対し、愛する女性に自分の気持ちを伝えるようにと助言する内容が描かれている。1983年9月24日にはBillboard Hot 100チャートで1位を記録し、マイケル・センベロの「Maniac」に代わって首位に立った。このシングルは、アメリカ国内で50万枚以上を売り上げ、RIAAからゴールド認定を受けている。
ジョン“ジェリービーン”ベニテスによる「スペシャルバージョン」も12インチ・マキシシングルとしてリリースされた。このリミックス版は約5分半と長尺で、ジャケットデザインは国ごとに異なっていた。B面には、同アルバム収録の「Easy Money(イージー・マネー)」、およびアイザック・ヘイズとデヴィッド・ポーター作曲による「You Got Me Hummin’(ユー・ガット・ミー・ハミン)」のライブ録音が収められている。
評価
『Cash Box』誌はこの曲について「ジョエルのアーバン・ロックンロールのルーツに立ち返るもので、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズを思わせるファルセットで始まり、60年代のモータウン・サウンド—ホーン、コーラス、リズム—を用いて親しみやすい助言を届けている」と評した。
ミュージックビデオ
ミュージックビデオでは、ジョエルが1963年の『エド・サリヴァン・ショー』に出演しているかのような演出で曲を披露する。イギリス盤シングルのカバー写真はこの映像から撮られたものである。番組司会者を模したエド・サリヴァンのそっくり芸人(ウィル・ジョーダン)が、トーキングマウスのトポ・ジージョの出番の後に「B.J. and the Affordables」としてジョエルを紹介する。演奏中には、家庭でテレビを観る若者たち、家電店のショーウィンドウ越しに集まる人々、曲に合わせて踊るティーンエイジャーたちの姿が交錯し、さらには宇宙空間にいるソビエト連邦の宇宙飛行士が同曲を聴いているシーンも登場する。この場面では、ロシア語の歌詞がキリル文字で画面下に表示される。
曲の終盤では、コメディアンのロドニー・デンジャーフィールドが次に出演すると勘違いして舞台袖で待っており、ジョエルに観客を温めてくれたことを感謝する。しかし、実際に呼び込まれたのは「踊るクマのパトリスカ」であり、デンジャーフィールドは困惑するというコミカルな幕引きとなっている。
歌詞の意味
この曲は、恋人との関係を続けるうえで一番大切なのは「気持ちをきちんと伝えること」だと、過去に失敗した大人が若い男の子へ向けてアドバイスする形で描いてる。黙っていてもわかってくれる、何も言わなくても気持ちは伝わる、そんな思い込みがどれほど危ういものかを、自分の経験を踏まえて必死に伝えようとしている。
優しくて支えてくれる彼女ほど、自分の本音を言わずに我慢してしまいがちで、その沈黙が不安へ変わることを主人公は知っている。だからこそ、愛しているなら遠慮せずに言葉にして伝えろと強く促す。夢や不安、愛情や願い、そんな日々の小さなことを積み重ねていくことで関係は守られるという思いが根底にある。
相手を安心させるには、行動だけでは足りず、言葉を通して心の距離を縮めることが必要だというメッセージが繰り返される。離れている時間が長いと、たとえ何も悪いことをしていなくても、相手は不安になる。その不安を放置すれば、後悔しても遅いという切実さが込められている。
全体として、恋愛におけるコミュニケーションの大切さを、優しさと少しの苦い経験をにじませながら伝える、温かい忠告の曲になってる。


