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曲情報
「Rich Man」(リッチマン)はSMエンタテインメント所属の韓国のガールズグループ、aespa(エスパ)の曲。この曲は5thミニアルバム「Rich Man」のタイトル曲として2025年9月5日午後1時にリリースされた。
歌詞の意味
この曲はタイトルどおり「Rich Man=自分自身がすでに富である」という宣言を中心にしたセルフエンパワメントの楽曲になっている。ここでいう“rich”は金銭の多寡ではなく、自分の価値や可能性を外部ではなく内側に見いだせる状態を示している。冒頭の「誰かにすべてをくれる人を探しなさい」という母親の言葉に対して、「もうすべて持っている」と返す部分は、他者依存的な幸福観から意図的に距離を取り、主体的な生き方へ移行する宣言の役割を持つ。
歌の中心には、自分を貶めたり利用しようとする外部の声や圧力に対して「動じない」という強い自意識がある。ファッション、態度、アイデンティティ、クリエイティビティなど、自分を構成するものを自らの手で選び育てる姿勢が一貫しており、“自分のブランドを自分で運営する”という現代的な自己像が描かれている。誰かに認められることで価値が生まれるのではなく、自分が自分を推すことによって価値が確立される、という構造だ。
曲全体は「外側からの承認ではなく、内側の確信で立つ人間」を描きながらも、けっして攻撃的ではない。むしろ、努力、セルフマネジメント、自己投資、自分の直感を信じる勇気など、地道で現実的なプロセスを肯定している。特に「自分のペースで進む」「不要なものは切り離す」というモチーフが多く、自律した大人の女性像が表れている。
また、aespaというグループの背景を踏まえると、この曲は“女性が自分の人生を自分で所有する”というメッセージを明確に掲げるものでもある。これはチェルシー・ハンドラーの「I am my own rich man」や、シェールの名言を連想させる流れを汲んでおり、女性アイドルの文脈における自己主張としても象徴的な意味を持つ。
要するに、この曲は「恋愛も社会も成功も、誰かに頼らなくていい。私は私の力で自分の価値を築いてきたし、それは誰にも奪えない」という自己肯定のアンセムである。外的評価に左右されず、自分自身への信頼を核に据えて進む姿勢を祝福する、現代的で強いテーマが貫かれている。
rich man とは?
「rich man」は直訳すると「金持ちの男」を指すが、この曲では「誰かに与えてもらわなくても自分一人で満たされてる」という精神的豊かさ・自己肯定感を「rich man」という言葉で表現している。つまり、物質的なもので満たされているから「私はリッチマンだ」と言ってるのではなく、自分のアイデアや存在そのものが財産であり、自分一人で「完全」になれる強さを持っているから「私はリッチマンだ」ということ。
ちなみにこの表現は、アメリカの女優で歌手のCher(シェール)がかつて語った名言を想起させるもので、女性の自立や誇りを強調するニュアンスが込められている。1996年の『Dateline NBC』インタビュー映像の一幕で、母親から「金持ちと結婚しなさい」と言われたCherが「ママ、私がリッチマンよ(Mom, I am a rich man)」と答えた場面が、2016年にバイラルとなった。Bustle誌はこの言葉を、従来のジェンダー規範を覆すものとして、またフェミニズムにおける画期的な発言だと評している。
ちなみに英和辞典では単に「金持ち」とだけしか解説されていない場合が多いが、英英辞典では基本的に「a man who is wealthy」(裕福な男性)と解説されている場合が多い。(冠詞がついた「a man」は現代ではほぼ常に「男性」を指す。無冠詞の「man」は、昔は「人間」全般を意味したが、現代では古風で、定型句・慣用句・標語などでその名残が残るのみである。「No man is an island. {人は誰も孤立して生きられない}」, 「Man is mortal. {人は皆死すべき存在だ}」など。)


