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曲情報
「Dude(Looks Like A Lady)」(デュード・ルックス・ライク・ア・レディ)は、アメリカのロックバンド、エアロスミスの楽曲で、1987年に発表された9枚目のスタジオアルバム『Permanent Vacation』からのリードシングルとしてリリースされた。ボーカルのスティーヴン・タイラー、ギタリストのジョー・ペリー、ソングライターのデズモンド・チャイルドによって作詞・作曲された。
背景
この楽曲は、男性が女性と間違えられるという内容になっている。デズモンド・チャイルドによると、スティーヴン・タイラーがモトリー・クルーのボーカリスト、ヴィンス・ニールを女性と勘違いしたことからインスピレーションを得た。バンドメンバーがタイラーをからかい、「デュード(男)が女性のように見える」と冗談を言ったことがタイトルの由来である。
モトリー・クルーのニッキー・シックスも、この曲がニールに触発されて書かれたことを認めている。タイラーは次のように語っている。
「俺たちがニューヨークでタクシーを拾おうとしていたら、モトリー・クルーがリムジンで乗りつけてきた。彼らは俺たちを車に誘い入れ、ひたすら『デュード』を連発していたんだ。『デュード! お前のデュードはすごいデュードだぜ、デュード』ってね。そんな言葉遣いは初めて聞いた。ちょうどエディ・マーフィのアルバムを聞いていて、彼がミスターTのことをゲイだと冗談で言っていたのを思い出した。そしてフレーズをいくつか試したが、最初は『Cruisin’ for the Ladies(女を探しに行こう)』とか『My Old Lady’s Got Rabies(俺の女は狂犬病だ)』みたいなひどい歌詞しか出てこなかった。そこで『デュード』という新しい言葉を思い出したんだ」。
「Cruisin’ for the Ladies」というフレーズについて、チャイルドは「ヴァン・ヘイレンですら、そんなのをB面にも入れないだろう」と語っている。チャイルドは、曲の発展について次のように述べている。
「スタジオに入ると、彼らはすでに『Cruisin’ for the Ladies』という曲を作っていた。俺が『デュード・ルックス・ライク・ア・レディ』の方がいいと言うと、スティーヴンは『そっちの方が大ヒットしそうだな』と乗り気になった。最終的に、ある男がストリップクラブに行き、魅力的な金髪のダンサーに惹かれるが、後で彼女が実は男性だったと知るというストーリーに落ち着いた」。
ジョー・ペリーは、歌詞の内容がLGBTQ+コミュニティを不快にさせるのではないかと懸念していたが、チャイルドは「俺はゲイだけど、侮辱されたとは感じない。だからこの曲を作ろう」と説得した。
リリースと評価
この楽曲は、ビルボード・ホット100で14位、ホット・ダンス・クラブ・プレイチャートで41位、メインストリーム・ロック・トラックスチャートで4位、カナダRPMトップシングルズチャートで22位、UKシングルチャートで45位を記録した。1990年初頭には再リリースされ、イギリスで20位にランクインした。イギリスでは40万枚以上の売り上げを記録し、ゴールド認定を受けた。
Cash Boxは、「ユーモラスな歌詞と力強いロックビートが特徴的」と評している。
1988年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでは「ベスト・グループ・ビデオ」と「ベスト・ステージ・パフォーマンス」にノミネートされたが、受賞には至らなかった。
ミュージックビデオ
ミュージックビデオは、バンドがステージで演奏するシーンと、ドラァグクイーンを演じるキャラクターたちの映像を交えた内容となっている。エアロスミスのA&R担当であるジョン・カロドナーがウェディングドレス姿で登場する場面もある。また、ジョー・ペリーの妻であるビリーもサックスを演奏するふりをしながら出演している。
映像の中には、スティーヴン・タイラーの挑発的なパフォーマンスや、スカートを引き裂かれる女性がエアロスミスの「ウィング」タトゥーをお尻に見せる場面も含まれている。ビデオの監督はマーティ・コールナーが務め、MTVで頻繁に放映された。
レガシー
この楽曲は、エアロスミスのコンサートセットリストに頻繁に含まれており、現在も人気の高い楽曲である。
また、『Big Ones』(1994年)、『O, Yeah! Ultimate Aerosmith Hits』(2002年)、『Devil’s Got a New Disguise: The Very Best of Aerosmith』(2006年)などのコンピレーションアルバムにも収録されている。
映画『ライク・ファーザー・ライク・サン』(1987年)や『ミセス・ダウト』(1993年)など、様々な映画で使用されている。特に『ミセス・ダウト』では、主人公(ロビン・ウィリアムズ)が女性に変装して家族と親しくなるシーンで使用された。脚本家のランディ・マイエム・シンガーは、「『Dude(Looks Like A Lady)』がなければ『ミセス・ダウト』は存在しなかった」と語っている。
この楽曲はまた、ディズニー・ハリウッド・スタジオのアトラクション「ロックン・ローラー・コースター」にも使用されている。
さらに、MTVのアニメシリーズ『Station Zero』ではDJ Techがターンテーブルでこの曲をプレイするシーンが登場するなど、様々なメディアで使用されている。
「Dude(Looks Like A Lady)」は、エアロスミスの代表曲の一つとして、今なお多くのリスナーに親しまれている楽曲である。
歌詞の意味
この曲は外見による思い込みから生じる混乱と驚きをコミカルかつ誇張的に描いている。語り手は最初、相手を女性だと判断して接近するがその認識が外見に基づく誤解であったことに気づき、そこで生じる衝撃や戸惑いを勢いのある語り口で表現している。
描写には舞台裏での騒動や危険をはらんだ展開が盛り込まれ、物語的な誇張が強く、フィクションとしての劇的効果を優先した表現が目立つ。相手を“変装”や“意外性”の観点で捉える構図は語り手の視野の狭さや先入観を浮かび上がらせ、表層的判断の危うさがテーマとして潜んでいる。
また、外見と内面の不一致に驚く語り手の姿勢は固定化された性別観やステレオタイプを前提としたものとして描かれ、作品自体はあくまで時代的背景を反映したコミカルなフィクション表現として成立している。全体として、勘違いを軸にした騒動をロックの勢いで押し切る構成になっており、軽快さと誇張が中心に据えられている。


