【曲解説】Billy Joel – Say Goodbye To Hollywood

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曲情報

「Say Goodbye to Hollywood」(セイ・グッバイ・トゥ・ハリウッド、邦題:さよならハリウッド)は、ビリー・ジョエルが作詞・作曲・パフォーマンスを手がけた楽曲で、1976年のアルバム『Turnstiles(ターンスタイルズ)』の冒頭トラックとして初めてリリースされた。当初は「I’ve Loved These Days」のB面としてアメリカでリリースされたが、1976年11月にはイギリス、ドイツ、オーストラリアなどでA面シングルとして「Stop in Nevada」をB面にして発売された。その後、1981年にライブアルバム『Songs in the Attic』からのライブバージョンがアメリカでシングルとしてリリースされ、「Summer, Highland Falls」のライブバージョンをB面に収録したことで、より広く知られるようになった。

ジョエルは1975年にニューヨークへ戻った際にこの曲を書いた。それ以前の1972年には、厳しいレコード契約から逃れるためロサンゼルスに移住していた。アルバム『Turnstiles』のカバー写真では、サングラスをかけてスーツケースを持つ男性がこの曲のキャラクターを象徴している。

プロダクションと影響

ジョエルは大学の講義などで、楽曲制作にあたってロニー・スペクターとザ・ロネッツの「Be My Baby」を意識していたと語っている。実際、「Say Goodbye to Hollywood」は「Be My Baby」の象徴的なドラムイントロを再利用したような類似のビートを持っている。楽曲のプロダクションも、ロニー・スペクターの元夫フィル・スペクターが用いた「ウォール・オブ・サウンド」方式をモデルにしており、曲全体にわたってバッキングバンドが加わる構成で、リフレインにはバックアップ・シンガーが、2番からはストリングスが追加されるなど、徐々に楽器が重ねられていく。

このプロダクション手法が成功していたかについては意見が分かれており、伝記作家のマーク・ベゴは成功と見なしている一方、音楽評論家のスティーヴン・ホールデンは異なる見解を示している。『Billboard』誌はこの曲について「フィル・スペクターの60年代初期の名作のような激しさと華やかさを持っている」と評価し、『Record World』誌はライブバージョンについて「オリジナルよりも良く聞こえる」「コンサートの自発性とスタジオの明瞭さが完璧に融合している」と述べている。

歌詞の意味

この曲は、華やかさに満ちた街や人間関係から静かに離れていく決意を、ほろ苦い別れの感情とともに描いてる。ライトが輝く都会の夜を走り抜けながら、そこにいた人々や過ごした時間を思い返しつつ、もう自分はその場所にはいられないと悟る瞬間がある。華やかな表舞台に立っていた仲間も、いつのまにか役割を終えて消えていき、かつての距離感や関係性は戻らない。

友人や仲間との絆は、たった一言のズレやすれ違いで壊れてしまい、気づけば永遠に失われることもある。だからこそ、同じ場所に留まること自体が大きな賭けであり、前に進むこともまた勇気が必要になる。華やかで賑やかな世界は魅力的だけど、その裏には移り変わりの速さや人の儚さが隠れている。

人生は出会いと別れの連続で、誰が残り誰が消えていくかはわからない。思い出の中に温かさがあっても、今またひとつの区切りが訪れ、別れの時が来たと主人公は感じている。そんな切なさを抱えつつも、前を向いて歩き出す静かな決意が、繰り返される別れの言葉に込められている曲。

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