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曲情報
「Maneater」(マンイーター)は、アメリカのデュオ、ホール&オーツ(Hall & Oates)が1982年に発表した楽曲で、彼らの11作目のスタジオアルバム『H2O』(エイチ・ツー・オー)に収録されている。1982年12月18日付のビルボードHot 100で1位を獲得し、4週間にわたってトップの座を維持した。これは、彼らの他のナンバーワンヒット5曲の中でも最長であり、「Kiss on My List」の3週間を上回るものであった。
背景と作曲
2009年の『American Songwriter』のインタビューで、ダリル・ホール(Daryl Hall)は次のように語っている。
「ジョン(Oates)は『Maneater』の原型をエドガー・ウィンター(Edgar Winter)と一緒に作っていたんだ。最初はレゲエ調の曲だった。コード進行は面白かったけど、グルーヴを変えた方がいいと思った。そこでモータウン風のリズムにしてみた。それをサラ・アレン(Sara Allen)に聞かせながら歌ってみたんだけど、最後のフレーズがちょっと違っていた。彼女が『最後は“She’s a maneater”で終わるべきだ』と言ったんだ。最初は“そんなの変だよ”って思ったけど、よく考えたら彼女が正しかったんだ。それが曲の決め手になった。」
また、ホールは「僕たちは常に新しいことに挑戦している。“Maneater”はラジオで流れているどの曲とも違う。僕たちの狙いは、常により良いものを作ることだ」とも語っている。
ジョン・オーツ(John Oates)は、「歌詞は女性について歌っているように思われがちだけど、実は1980年代のニューヨークを表現しているんだ。欲望や貪欲さ、堕落した富を描いている。でも、女性の物語として描いたほうが伝わりやすい。僕たちはいつもそうやって曲を作っている」と述べている。これは、「I Can’t Go for That(No Can Do)」と同じアプローチだったと説明している。
Billboard誌は、「60年代のシュプリームスの楽曲のようなベースラインを持ちながら、ジョルジオ・モロダーの映画音楽のような雰囲気を醸し出している」と評価した。また、Cash Box誌は「イントロのベースラインはシュプリームスの『You Can’t Hurry Love』を思い起こさせる」と指摘している。
この楽曲は2023年の映画『No Hard Feelings』で俳優のアンドリュー・バース・フェルドマン(Andrew Barth Feldman)によるバラードバージョンが披露され、サウンドトラックにも収録された。また、2024年公開の映画『怪盗グルー4』の予告編にも使用されている。
ミュージックビデオ
ホール&オーツのミュージックビデオは、女性(アレクサンドラ・ダンカン)が赤い階段を降りるシーンから始まる。スタジオでバンドが演奏するシーンでは、暗がりの中でスポットライトがメンバーを照らし、彼らが光と影の間を行き来しながらリップシンクする様子が映し出される。また、パーティードレスを着た若い女性と黒いジャガー(ヒョウ)が交互に映し出される。この「ジャガー」は歌詞の中で登場する「The woman is wild, a she-cat tamed by the purr of a Jaguar」(彼女は野性的で、ジャガーのエンジン音に飼いならされたメス猫)という一節に関連しているが、ここでの「ジャガー」は車メーカーのジャガーを指している。
パーソネル
- ダリル・ホール – リードボーカル、バックボーカル、キーボード、シンセサイザー
- ジョン・オーツ – リードギター、バックボーカル、Linn LM-1プログラミング
- G・E・スミス – リズムギター、バックボーカル
- トム・ウォーク – ベース
- ミッキー・カリー – ドラム
- チャールズ・デシャント – サクソフォン
歌詞の意味
この曲は、魅力的でありながら危険な香りを漂わせる女性像を描いた作品で、主人公は彼女に惹かれる者たちが次々と破滅していく様子を冷静に見つめている。外見的な魅力や妖艶さからは想像できないほど、彼女の内側には獲物を追う捕食者のような鋭さが潜んでおり、関わった者は多くを失うという寓話的なテーマが中心にある。
物語の前半では、彼女が夜の世界で誰かに寄り添っていながらも、視線は常に別の獲物を探しているように描かれる。その場にいる男性にとっては特別に思える瞬間も、彼女にとっては単なる“次”へ向かう過程に過ぎず、周囲の期待とは裏腹に冷徹な目的性が漂う。
続くパートでは、彼女の危険性を知る語り手が注意を促す立場に移り、その魅力の裏に潜む破壊力を強調する。表面的な美しさは誰もを惹きつけるが、内面には強い支配欲と“相手を飲み込む力”があり、関わるほどに身を滅ぼすという対比が印象的である。
全体を通して曲が描くのは、欲望・金銭・力が交錯する都市の夜を舞台にした“誘惑と危険の寓話”であり、表の魅力に惑わされると痛い目を見るという警告を含んでいる。その一方で、登場人物の心理はどこかユーモラスに描かれており、80年代特有の都会的な疾走感とポップさを併せ持つ楽曲となっている。
タイトル「maneater」の意味
maneater(マンイーター)とは、男性を利用して一連の性的関係を持つが、その男性を愛していない女性を指す言葉である。特に、この曲では金銭目的で男性を弄ぶ女性を描いているため、「男を食い物にする女」「金目当てで男を利用する女」と訳すのが適切。ここでの “man” は「人」ではなく「男」という意味。
また、人を襲って喰う動物に対しても “maneater” という言葉が使われることもあり、こちらは「男」という意味ではなく「人」という意味の “man” である。
mind over matter とは?
“mind over matter” とは、精神の力で肉体的な状態や問題などを克服することを指す慣用表現である。
例:
His ability to keep going even when he is tired is a simple question of mind over matter.
彼の疲れていても動き続けられる能力は、単に「精神が肉体を凌駕する」という話だ。
get far の意味
英語では「get far」や「go far」を「関係の進展」や「長続きすること」に使うことがよくある。
そのためこの部分は、「もし愛を求めているなら / そんなに関係が進展することはないさ」と訳すこともできる。


