【曲解説】Elliott Smith – Ballad of Big Nothing

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曲情報

「バラード・オブ・ビッグ・ナッシング」は1997年2月25日にリリースされたエリオット・スミスの3枚目のスタジオ・アルバムEither/Orに収録された曲。

歌詞の意味

この曲は自暴自棄の状態にある若者の姿を中心に、自由と放埒が実質的には何ももたらさない空虚さを描いている。語り手が捉える人物は、街の雑踏や家庭の断片的な状況の中で孤立し、苛立ちや退屈、怒りを抱えながら衝動的な行動を繰り返している。周囲の大人や家庭の崩れた関係が背景として示唆され、身近な人間すら疲弊している様子が描かれることで、この人物が拠りどころを失っていることが浮かび上がる。

繰り返される言葉は形式上の自由を肯定するように見えるが、実際には主体性の放棄や無目的な行動を促す空虚な響きを持ち、その裏には誰も介入せず、誰も守らない環境があるだけだという事実が示される。行為に障害がないことは解放ではなく、規範も支えも欠けた状態の別の側面として描かれ、主人公が抱く怒りや倦怠がそのまま行動の空虚さを反射する構造になっている。

終盤では、何を選んでも意味が生まれないという虚無が強調され、自由なはずの行動が一種の孤立した循環に陥っていることが示される。全体として、無軌道な自由の背後にある無力感と、行動の結果が何も変えられない世界の冷ややかさを、断片的な情景描写を通して描く構成となっている。


同じアルバムに収録された曲である「ローズ・パレード」に歌詞の内容が非常に似通っている。

主人公はパレードをくだらないものだと思っているが、他の人は価値のあるものだと思っている。

冒頭は山車に乗ったパレードの参加者が、観に来た人たちに向かってお菓子を投げている様子を描写している。

2行目のdrag someone/something down「~を引きずり下ろす」という意味で、「メインストリートを引きずる」=「メインストリートをゆっくり進む」という意味になる。また、main drag「街の最も大きな(重要な)道路」をひねった表現にもなっている。

「ローズ・パレード」には「お金に見えるお菓子を投げる」という歌詞がある。

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