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曲情報
「Caribbean Blue」(カリビアン・ブルー)は、アイルランドのミュージシャン、Enya(エンヤ)の楽曲で、3作目のスタジオ・アルバム『Shepherd Moons(シェパード・ムーンズ)』(1991年)の2曲目に収録されている。ワルツの拍子で構成されており、古代ギリシャの風の神々(アネモイ)であるボレアス、アフェル・ヴェントゥス(アフリクス)、エウロス、ゼピュロスが言及されている。この曲は1991年10月7日にアルバムからのリード・シングルとしてWEAよりリリースされた。
「Caribbean Blue」はアイルランド・シングルチャートで8位、UKシングルチャートで13位を記録した。アメリカではBillboard Hot 100で79位、Billboardモダン・ロック・トラックス・チャートでは3位を記録し、同チャートでは1992年に12番目に成功した楽曲となった。ミュージックビデオはマックスフィールド・パリッシュの絵画に基づくビジュアルが用いられており、イギリスの女優・歌手マルティン・マクカッチョンの初期の出演作の一つでもある。
評価
AllMusicのネッド・ラゲットは、この曲について「『Orinoco Flow』の成功したフォーミュラを繰り返すことを避け、ワルツの拍子という微細ながら効果的な変化によって全体の構成と演奏に色を与えている。エンヤが“ダンス・ナンバー”に最も近づいた瞬間かもしれない」と述べている。
Billboardのラリー・フリックは、「夢のようで喚起力があり、多層的かつ複雑な構成。豊かな音の織物が、複雑な音楽的テクスチャーの約束とともに聴き手を包み込む。エンヤの控えめなボーカルは波のようなクレッシェンドに高まり、美しい旋律と共に流れ込んでくる」と評している。
Entertainment Weeklyのデヴィッド・ブラウンは、「エンヤのすべてを体現したような、息遣いのある軽快なワルツ」と評価した。『Music & Media』誌は「1988年の世界的ヒット『Orinoco Flow』と同様に夢見心地の作品だが、より楽器による装飾がなされている」とコメント。『People』誌のレビューでは、「アイルランドの歌姫の天使のようなボーカルが、この優雅で前衛的なワルツを天上へと引き上げている」と評された。
歌詞の意味
この曲は、大自然の風の名を散りばめながら、世界が回り続けるという大きなスケールの視点と、人の「信じる心」を静かに重ね合わせた作品である。アラビア語やラテン語由来の風の名が詠唱のように繰り返され、地球をめぐる風の循環と、永遠に近い時間の流れが象徴として使われている。
最初に描かれるのは、世界が巡り続けるという事実と、その中で人が抱く「知っているつもりの世界」。空はたまたま青く見えているだけではなく、もっと広大で測り知れないものであり、それをキャリビアン・ブルーという鮮烈な色のイメージで表現している。この“青”は単なる景色ではなく、人の心がどこまで信じられるか、どこまで世界を美しいと思えるかという内面の象徴にもなっている。
続くパートでは、人がもし誠実に語り、正直に生きることができたら、そのとき見える空は本当に美しく、理想のような青さなのかもしれないという問いが投げかけられる。これは現実への懐疑ではなく、人の心の在り方によって世界の色が変わるという詩的な視点を示している。
後半では、人が語る夢や希望がすべて真実になり、黄金のように価値をもったとしたら、そのときに見上げる空はどれほど美しいだろうかという“もしも”の世界が描かれる。ここでのキャリビアン・ブルーは、現実と理想の境界にある色であり、人が持つ可能性や未来への希望の象徴として輝いている。
全体を通して、歌詞の語り口は問いかけに近く、聴く側に「あなたは世界をどう見る?」と静かに尋ねてくる。風の名が反復される構成は、地球の自然と人の魂がどこかで同じリズムで響き合っているような印象を与える。
神秘性、透明感、そして内面へのまなざしを併せ持つ作品であり、現実の景色ではなく“心の中に広がる青さ”を描いた曲となっている。
タイトル「Caribbean blue」(カリビアン・ブルー)の意味
タイトルの「Caribbean Blue」とは直訳すると「カリブの青」。これは単に地名としてのカリブ海ではなく、「楽園」や「理想郷」のようなイメージを象徴的に表しており、澄みきった空や穏やかな海の色=夢や希望、心の平穏を意味すると解釈されている。
この歌詞に出てくる英語以外の言語は何?
この曲では、英語以外にもラテン語由来の風の名前が登場する:
- Eurus(ユーラス):東風
- Āfer Ventus(アフェル・ウェントゥス):アフリカから吹く風(南西風)
- Boreās(ボレアース):北風
- Zephryus(ゼピュロス):西風
- Āfricus(アフリクス):アフリカの風(南風)
これらはローマ神話やギリシャ神話に登場する「風の神々」の名前でもあり、曲全体に漂う神秘的な世界観を高める役割を担っている。


