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曲情報
「My Way」は、フランク・シナトラが1969年にリリースした楽曲で、フランスの楽曲「Comme d’habitude」に英語の歌詞をつけたものである。原曲はジャック・ルヴォー、ジル・ティボー、クロード・フランソワによって作曲され、1967年にフランソワによって初めて録音された。
本楽曲はフランク・シナトラをはじめ、エルヴィス・プレスリーやシド・ヴィシャスなど、さまざまなアーティストによって成功を収めた。シナトラのバージョンはイギリスのトップ40チャートに75週間ランクインし、UKチャート史上4番目に長くチャートにとどまった記録を持つ。
背景
1967年、ジャック・ルヴォーは「For Me」というタイトルのバラードを作曲し、英語詞は「恋人同士の愛が冷めていく」というテーマだった。ルヴォーはこのデモをペトゥラ・クラーク、ダリダ、クロード・フランソワに送ったが採用されなかった。最終的にルヴォーとフランソワが曲を改作し、「Comme d’habitude」(「いつものように」)として発表した。この楽曲は1967年11月にリリースされ、1968年2月にフランスのポップチャートで1位を獲得した。
1968年、音楽出版社のデヴィッド・ピットは、英語圏向けにこの楽曲をリメイクすることを考え、若手ソングライターであったデヴィッド・ボウイに英語詞を依頼した。ボウイは「Even A Fool Learns To Love」というタイトルでデモを作成したが、正式なレコーディングには至らず、このプロジェクトは棚上げとなった(後にボウイはこのアイデアを発展させ、「Life on Mars?」という楽曲として完成させた)。
ポール・アンカはフランス滞在中にこの楽曲を耳にし、すぐにパリへ飛び、曲の権利を交渉した。彼は1ドルという象徴的な金額で楽曲の翻案、録音、出版の権利を取得し、原曲の作曲者たちにはロイヤルティの一部が支払われる契約を結んだ。その後、アンカはフロリダでフランク・シナトラと会食し、その際にシナトラが「もう音楽業界から引退したい」と語ったことが、「My Way」の歌詞に影響を与えた。
作詞とレコーディング
ニューヨークに戻ったアンカは、「もしフランク・シナトラがこの曲を書いたとしたら、どんな言葉を使うだろう?」と考えながら歌詞を書き上げた。彼は、「そして今、終わりが近づいた(And now the end is near)」というフレーズから始め、シナトラの話し方や人生観を反映させた内容に仕上げた。
アンカは曲が完成するとすぐにシナトラへ連絡し、「特別な曲ができた」と伝えた。シナトラは1968年12月30日にこの楽曲を一発録りで録音し、翌年「My Way」アルバムとシングルとしてリリースした。Billboard Hot 100では最高27位、アメリカのイージーリスニングチャートでは2位を記録し、イギリスでは1969年4月から1971年9月までの75週間、トップ40にランクインするという前例のない記録を達成した。
Billboard誌は「ダイナミックで洗練されたドン・コスタのアレンジとプロデュースが加わり、シナトラの最高のパフォーマンスのひとつとなった」と評し、Cash Box誌も「シナトラの力強いパフォーマンスが際立つ名曲」と評価した。
その後の評価とカバー
本楽曲はフランク・シナトラの代表曲として広く知られているが、シナトラ自身は後に「この曲は自己陶酔的で自己満足的すぎる」と語り、この曲を歌うことに嫌気がさしていたという。
2000年、シナトラの1969年版「My Way」はグラミー殿堂賞に選ばれた。
ポール・アンカ自身も1969年に「My Way」を録音し、その後も何度か再録音している。1996年には映画『Mad Dog Time』でガブリエル・バーンとのデュエット版、1998年にはスペイン語版「A Mi Manera」(フリオ・イグレシアスとのデュエット)、2007年にはジョン・ボン・ジョヴィとのデュエット、2013年にはガルーとのデュエットを発表している。
本楽曲はエルヴィス・プレスリー、シド・ヴィシャス、ロビー・ウィリアムズなど、多くのアーティストによってカバーされ、長年にわたり世界中で愛され続けている。
歌詞の意味
この曲は人生を振り返る主人公が、良い時も悪い時も含めて「自分の選んだ道を、自分の意志で歩んできた」という誇りを語る内容になっている。
冒頭では、人生の終幕が近づくなかで、自分がどれほど多くの経験をし、どれほど広い世界を歩いてきたかを静かに回想する。後悔は全くないわけではないが、それらも含めて“必要な選択だった”と受け入れている。
困難に直面したときは、逃げずに真正面から向き合ってきたこと。その過程で挫折もあったが、最終的には自分の意志で立ち上がってきたという力強さが描かれる。
中盤では、恋愛・喜び・涙など人生におけるあらゆる感情を味わい尽くしたと語り、それらすべてを振り返ったときに、むしろ今は「やり遂げた」という静かな達成感を抱いていることが強調される。
曲の核になっているのは「他人の価値観ではなく、自分の信念に従って生きることこそが人間にとっての誇りである」というメッセージだ。誰かに従って言われたとおりに生きたのではなく、“自分の言葉で、自分の人生を選択し、責任を負った”という強い自己肯定がある。
最後には、自分の人生がどう評価されるにせよ、「私は自分自身のやり方で生き抜いた」と堂々と宣言して幕を閉じる。人生賛歌であると同時に、自立と誇りをテーマにした普遍的な作品となっている。



