【曲解説】The Police – When the World Is Running Down, You Make the Best of What’s Still Around

音源

ポリスバージョン

Bring On The Night / When The World Is Running Down You Make The Best Of What’s(Still Around)(Live In Paris, 1985)· Sting

曲情報

「When the World Is Running Down, You Make the Best of What’s Still Around(世界が衰退しても、残されたもので最善を尽くす)」はスティングが作曲し、イギリスのロックバンド・ポリスが1980年のアルバム『Zenyatta Mondatta』で初めて発表した楽曲である。同じアルバム収録の「Voices Inside My Head」とともに、1981年のBillboard Dance Music/Club Play Singlesチャートで3位を記録した。2000年にはDifferent Gear vs The Police名義のリミックス版がリリースされ、全英シングルチャートで28位、Billboardダンスチャートで7位、オランダでは94位にランクインした。またラジオ局では「Driven to Tears」に続けてオンエアされることが多い。

歌詞と音楽

この曲は、スティングが自身の個人的な問題ではなく外の世界への懸念をテーマにした初期の試みの一つである。Vancouver Free Pressのエリー・オデイは歌詞を「ほとんどが繰り返しのチャント」だと評している。Ultimate Classic Rockの批評家マイク・デュケットはそのテーマを「ポスト・アポカリプス世界で狂気に陥っていく男」と説明している。スティング自身もこの曲を黙示録的なビジョンを持つ作品と捉えており、これは1979年のアルバム『Reggatta de Blanc』収録の「Bring on the Night」と共通している。スティングはこの2曲について「自分を唯一の生存者と想像し、好きなものがすべて残っているという虚栄心」と述べている。

「When the World Is Running Down, You Make the Best of What’s Still Around」と「Bring on the Night」はコード進行も共有している。Rolling Stoneの批評家デイヴィッド・フリックは、この曲の構造が『Reggatta de Blanc』収録の「Walking on the Moon」や「The Bed’s Too Big without You」と似ていると指摘している。これらの曲と同様に、3つのコード進行を約4分間にわたって繰り返す構成であり、フリックはそのコード進行を「催眠的」と評している。

歌詞の意味

この曲は、止まったような日常の中で、古びたものたちに囲まれながらかろうじて生き延びる主人公の姿を描いてる。長年使い続けた機械やテープや車が、世界がゆっくりとすり減っていく感覚と重なっていて、外に出ることもなく、誰かとの繋がりも途切れたまま、同じ行動を繰り返すだけの日々が続いている。

しかしその倦怠や孤独の中でも、手元に残ったわずかなものにしがみつき、それを最大限に活かそうとする姿勢が芯にある。壊れかけの機械や古い音楽ですら、世界が衰えていく時代の中で自分を保つための拠り所になっている。変わらない生活への嫌気がありつつも、泣き崩れるのではなく、残されたものの価値を自分なりに見いだそうとする姿勢が印象的。

全体として、閉塞感と諦めの中にかすかな抵抗が混ざっていて、荒廃した世界でも自分の小さな領域をどうにか守り続けようとする切ないサバイバルの物語になっている。

VCRとは?

VCRとは、ビデオカセットレコーダーの略で、VHSなどのビデオテープを再生・録画する機械のこと。家庭用映像機器として1970年代から普及し、2000年代初頭まで広く使われた。

ジェームス・ブラウンのT.A.M.I.ショーとは?

ジェームス・ブラウンのT.A.M.I.ショーとは、1964年にアメリカで開催され映像化された音楽イベント「The T.A.M.I. Show」の名演を指す。ブラウンの圧倒的なパフォーマンスは伝説として語り継がれている。

M.C.I.とは?

M.C.I.とは、アメリカの音響機器メーカーMCIを指し、1970年代にスタジオ用のマルチトラックレコーダーやミキサーを製造していた。自宅で録音を試みる機材として歌詞に登場している。

『ディープ・スロート』とは?

『ディープ・スロート』とは、1972年に公開されたアメリカのポルノ映画のこと。ポルノ映画としては空前の大ヒットとなり、同時に社会的な論争を呼んだ。歌詞では孤独な時間を紛らわすために繰り返し再生する対象として描かれている。

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