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The Police Collection
The Police
曲情報
「Wrapped Around Your Finger(ラップト・アラウンド・ユア・フィンガー)」は、ポリス(The Police)の1983年のアルバム『Synchronicity(シンクロニシティー)』からのUKにおける2枚目のシングル(USでは4枚目のシングル)である。スティングが作詞作曲し、A&Mレコードから世界的にリリースされた。UK盤のB面にはアルバム未収録曲「Someone to Talk To」が収録され、US盤のB面には「Tea in the Sahara」のライヴ・バージョンが収録された。
背景
『Synchronicity』収録曲の「Every Breath You Take」や「King of Pain」と同様に、「Wrapped Around Your Finger」もスティングにとって個人的な内容の楽曲である。スティングは「『Every Breath You Take』『Wrapped Around Your Finger』はすべて自分の人生についての曲だ」と語っている。また、この曲について「自分を支配していた相手に対して立場を逆転させる、意地の悪い歌」とも説明している。歌詞には、ギリシャ神話のスキュラとカリュブディスや、ドイツ伝説のファウストなど、神話や文学的な引用が含まれている。曲は冒頭のヴァースで比較的ゆったりと不吉な雰囲気を持ち、サビで軽快で勝利感のある雰囲気へと移行する。
スティングはさらに、この曲について「ある友人でプロのサイキックであり、自分のタロットの師匠を念頭に置いて書いた。そこにファウスト博士や『魔法使いの弟子』の要素を混ぜ合わせたものだ」とも述べている。
シングルは「Every Breath You Take」の世界的ヒットに続いてリリースされ、イギリスでは1983年8月に全英シングルチャート7位、アメリカでは1984年3月にBillboard Hot 100で8位を記録し、ポリスにとって最後の全米トップ10ヒットとなった。
UK盤ジャケットは青・赤・黄の3種類のカラーバリエーションが存在し、さらにスティング、アンディ・サマーズ、スチュワート・コープランドそれぞれの顔をあしらったピクチャーディスクが制作された。限定1万2000枚のうち1万枚はスティングで、サマーズとコープランドは各1000枚ずつだったため、後者は希少性が高い。
UK盤B面曲「Someone to Talk To」はギタリストのアンディ・サマーズ作で、スティングが歌うことを拒否したためサマーズ自身が歌っている。サマーズは「ギターで良いフレーズができて、当時ちょうど妻と別れたばかりだった。スティングが歌ってくれたらもっと公式感が出たはずだが」と語り、落胆を表明している。コープランドも「アンディはベストを尽くしたが、俺もスティングが歌わなかったのは残念だった。彼は歌詞に関して非常に神経質だった」と述べている。US盤のB面「Tea in the Sahara」ライヴ・バージョンは『Synchronicity Tour』から収録された。
ミュージック・ビデオ
ミュージックビデオは「Every Breath You Take」「Synchronicity II」も手がけたゴドリー&クレームが監督を務めた。薄暗い蝋燭に囲まれた部屋で演奏するバンドの映像に、スティングが巨大な燭台の迷路を駆け巡り最後に倒すシーンが挿入されている。なお、ビデオ中でサマーズが演奏しているアコースティックギターは、ポリスの音源では使用されていない楽器である。
撮影では音源を通常より速く再生し、メンバーがそれに合わせて演奏・口パクした。映像を通常速度に戻すことで、メンバーがスローモーションで動いているような効果を生み出している。スティングは「雰囲気が素晴らしい。蝋燭だけのセットなのに曲に多様な感覚や可能性を与えている」と称賛した。一方、サマーズは「最後にスティングが蝋燭をなぎ倒す演技がやりすぎで気に入らなかった」と批判している。
また、映画『マペットめざせブロードウェイ!』(The Muppets Take Manhattan)の宣伝映像では、ミス・ピギーがこのビデオの「燭台迷路」を模倣している。
評価
AllMusicのスティーヴ・ヒューイはこの曲を「人間関係の権力関係を複雑に描いた楽曲」と評価し、そのリズムの複雑さが心理的な複雑さを反映しているとした。同じくAllMusicのスティーヴン・トマス・アールワインは「悪魔的に感染力のあるニューウェーブのシングル」と評している。Ultimate Classic Rockのマイク・デュケットは、ポリスの楽曲の中で14位にランク付け、「スティングはギリシャ神話やファウストの引用を皮肉な歌に盛り込み、ヒットさせることができた」と述べている。
歌詞の意味
スキュラとカリュブディスとは?
スキュラとカリュブディスとは、ギリシャ神話に登場する海峡の両側に潜む怪物のこと。船乗りが必ずその間を通らなければならないほど両者は近くに位置していた。スキュラは岩場に棲む多頭の怪物で、通り過ぎる船から必ず6人の船員を喰い殺すとされ、カリュブディスは一日に3度、食事のために巨大な渦潮(うずしお)を起こし、船ごと呑み込む存在である。『オデュッセイア』でオデュッセウスは両者の間を航行する際、全滅を避けるためにスキュラ側に寄り、船員6人を犠牲にして船を守った。このエピソードは「二者択一の危険」や「板挟みの状況」を象徴する教訓として今も語り継がれている。
メフィストフェレスとは?
メフィストフェレスとは、ドイツの伝説『ファウスト』に登場する悪魔で、主人公ファウストと契約し魂を奪う存在。知識や快楽を与える代わりに破滅へ導く象徴で、西洋文学では「誘惑する悪魔」としてしばしば引用される。
wrap(someone)around one’s(little)fingerとは?
wrap(someone)around one’s(little)fingerとは直訳すると「君の指に巻き付けられてしまう」となるが、「(誰かを)完全に支配する、思い通りに操作する」という意味の慣用句。
be between the devil and the deep blue seaとは?
be between the devil and the deep blue sea とは、「二つの選択肢があるが、どちらも同じくらい不快で都合が悪い状況にあること」を意味する慣用句。直訳としては「悪魔と濃い青の海の間にいる」という意味になる。


