【曲解説】Aerosmith – Walk This Way

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曲情報

「Walk This Way」(ウォーク・ディス・ウェイ)は、アメリカのロックバンド、Aerosmith(エアロスミス)の楽曲。Steven Tyler(スティーヴン・タイラー)とJoe Perry(ジョー・ペリー)によって作詞作曲され、1975年のアルバム『Toys in the Attic』から2枚目のシングルとしてリリースされた。1977年初頭にはBillboard Hot 100で10位に達し、1970年代における同バンドの一連のヒット曲の一つとなった。また、この楽曲は1986年、ヒップホップグループRun-D.M.C.(ラン・ディーエムシー)がAerosmithとのコラボレーションでカバーし、両者のキャリアを再活性化させた。カバー版はロックとヒップホップを融合させた新たなサブジャンル「ラップ・ロック」の代表曲とされ、全米チャートで4位に達し、1987年のSoul Train Music Awardsで最優秀ラップ・シングル賞を受賞した。オリジナル版とカバー版の両方がグラミーの殿堂入りを果たしている。

制作背景

音楽面

楽曲はJoey Kramer(ジョーイ・クレイマー)による2小節のドラムイントロから始まり、続いてJoe Perryによるギターリフが展開される。Brad Whitford(ブラッド・ウィットフォード)と共にギターが重なり、Tom Hamilton(トム・ハミルトン)のベースが加わっていく。その後、Steven Tylerの高速でリズミカルなボーカルが楽曲を引っ張る構成となっている。

1974年12月、Aerosmithはハワイ・ホノルルでThe Guess Whoの前座を務めた際のサウンドチェック中に、Joe PerryがニューオーリンズのファンクバンドThe Metersの影響を受けたリフを即興で演奏し、本楽曲の原型が生まれた。通常の1-4-5進行を避けるため、キーをCからEに移調するなど構造にも工夫が凝らされている。

歌詞の制作

Steven TylerはPerryのリフを聞き、すぐにドラムの前に座ってジャムを始めた。当初はスキャットで歌詞のリズムを探り、その後本格的な歌詞制作に入った。

アルバム『Toys in the Attic』の制作中、素材不足に直面したバンドはこの曲に取り組むことを決めたが、まだ歌詞とタイトルがなかった。ある日、バンドとプロデューサーのJack Douglas(ジャック・ダグラス)は気分転換に映画『ヤング・フランケンシュタイン』を鑑賞。劇中の「Walk this way」というセリフが楽曲タイトルの着想となった。

その夜、Tylerはホテルで歌詞を書いたが、翌朝スタジオに向かうタクシーの中で原稿を紛失。急遽スタジオの階段にこもり、壁に鉛筆で歌詞を書き連ねてからノートに書き写したというエピソードが残っている。

Tylerのボーカルはまず録音され、Perryのギターパートはその後にオーバーダビングされた。Tylerはドラム出身であることから、歌詞においてもリズム感や語感が重視されており、ダブル・ミーニングも多用されている。

内容と構成

歌詞は高校生の少年が童貞を失うという内容を語るストーリーで構成されており、速いテンポの中で押韻を多用した歌唱が特徴的である(例:「so I took a big chance at the high school dance」)。サビでは「Walk this way, talk this way」というフレーズが繰り返される。

ライブでは、観客やバンドメンバーが「talk this way」と掛け合いで歌唱する場面も多く、楽曲終盤には長めのギターソロが展開される。Tylerはライブ中にギター音を模倣するようなボーカル・パフォーマンスも披露する。

歌詞の意味

この曲は思春期の奔放な恋愛体験を誇張された“青春の神話”として語るロック・ナラティブである。語り手は自分の不器用さや未熟さを抱えつつ、学校生活の中で起きた刺激的な出来事を軽妙に回想している。実際の体験というより、若者が仲間うちで面白おかしく語る「武勇伝」としての側面が強く、どこかコミック的で映画的な誇張が漂っている。

恋の始まりはいつも「ほんの小さなキス」からであり、それが世界を一変させるように語られる。こうした描写は、若い頃に抱く世界の大きさ、出来事の鮮烈さを象徴している。また、「Walk this way」というフレーズは、単に振る舞いを真似る指示でありながら、大人の世界への導きを象徴するスラング的な意味合いも持つ。語り手はその指示を受ける側であり、恋愛や振る舞いを“教わる”立場にいることがユーモラスに示されている。

全体としてこの曲は性的なニュアンスを含みつつも若者文化の開けっ広げな語り口をエネルギーとして昇華した作品であり、ロックの無邪気さ・衝動性・背伸びした自信が一体となった時代を代表する青春賛歌として位置づけられる。

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