【曲解説】The Smiths – I Know It’s Over

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曲情報

「I Know It’s Over」(アイ・ノウ・イッツ・オーバー)は、イギリスのロックバンド、ザ・スミスが1986年6月16日にラフ・トレード・レコードからリリースした3枚目のスタジオアルバム『ザ・クイーン・イズ・デッド』に収録された曲。

この曲は、ザ・スミスの「最も暗いバラード」としてよく挙げられるが、死にゆく男が、自分の無駄で孤独な人生を振り返る内容である。ザ・スミスの曲作りでは、モリッシーとジョニー・マーが数センチの距離で向かい合って座り、マーがモリッシーにアコースティックギターで曲を演奏し、膝の間に置いたテープレコーダーで録音するというセッションが頻繁に行われた。1985年の晩夏、グレーター・マンチェスターのボウドンにあるマーの自宅で行われた伝説の夜、2人は「フランクリー、ミスター・シャンクリー」「ゼア・イズ・ア・ライト・ザット・ネバー・ゴーズ・アウト」そしてこの曲を書いた。

この曲はある薄暗い夜に録音された。マーは2011年にNMEにこう回想している。「ティータイム頃に録音したんだけど、イギリスはイギリスだから外は暗くて雨が降っていた。とても美しくて、自分の人生の大部分、特にその時期に感じていたことを反映している。でもそこに落胆は感じなかった。憂鬱は人生の一部だと受け入れているから、憂鬱だとは思わないんだ」

1992年、マーはレコード・コレクター誌に、この曲はザ・スミスの3枚目のアルバム『ザ・クイーン・イズ・デッド』の中でお気に入りの1曲だと語っている。ギタリストは、特にモリッシーのボーカルに圧倒されたと語っている。「『I Know It’s Over』のモリッシーのボーカル。彼があの曲を歌ったときのことは忘れられない。私の人生のハイライトの1つだ。それほど素晴らしく、力強かった。どのラインも、これからどこに向かうのかをほのめかしていた。『彼はそこに行くのか? そうだ、行くんだ!』と思ったよ。ただ素晴らしかった」

歌詞の意味

この曲は失われた恋と自己否定の感情が重層的に描かれ、終わりを受け入れられない語り手の内的独白として展開される。母への呼びかけは救いを求める象徴的モチーフとして繰り返され、深い絶望が土に覆われていく感覚として表現されている。関係が始まりもしなかったという虚無感と、心の中では確かに存在していた愛との落差が、語り手の孤独を決定的なものにしている。自己評価への問いかけは自嘲と痛みを含み、他者と結ばれない理由を自身の資質へ重ねていく心理が浮かび上がる。優しさの重要性に触れる部分では、人間の弱さと強さが対比され、語り手が求める愛の普遍性と、自分には届かないという断念が示される。全体を通して、愛の不在が心を覆い尽くす様子が静かに反復され、孤独の深さが余韻として残る構造になっている。

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