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曲情報
「Hot Stuff」(ホット・スタッフ)は、ピート・ベロッテ、ハロルド・フォルターメイヤー、キース・フォーシーによって書かれた楽曲で、アメリカの歌手ドナ・サマーが1979年にリリースした7作目のスタジオアルバム『Bad Girls』のリードシングルとして発表された。プロデュースはイギリスのピート・ベロッテとイタリアのジョルジオ・モロダーが担当し、カサブランカ・レコードから発売された。
それまでディスコのイメージが強かったサマーにとって、本作はギターソロ(元ドゥービー・ブラザーズ、スティーリー・ダンのジェフ “スカンク” バクスターが参加)を含むロック色の強い楽曲として注目された。「Hot Stuff」はサマーにとって4曲ある全米Billboard Hot 100首位獲得曲のうち2曲目となった。
この楽曲を聴いたABBAのベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースは、1979年のヒット曲「Gimme! Gimme! Gimme!(A Man After Midnight)」の制作にインスピレーションを受けたとされ、類似したリフやメロディ、感情的なテーマが共通している。
2018年には、ラルフィ・ロザリオとエリック・イビサによるリミックス版「Hot Stuff 2018」が、全米ダンス・クラブ・ソングスチャートで1位を記録した。
評価
『Billboard』誌は「Hot Stuff」を「強いR&Bやソウルの感触を持つ」とし、「サマーの熱量あるボーカルが特徴」と評した。
『Cash Box』誌は「ロックとディスコの音が斬新に融合しており、力強いギターチョーキングや印象的なシンセライン、そしてユニークなサマーの歌声が魅力」と評価。
『Record World』誌は「素晴らしいロック・ディスコチューン」と紹介している。
受賞とレガシー
「Hot Stuff」は、第1回目となるグラミー賞「最優秀女性ロック・ボーカル・パフォーマンス賞」を受賞。
2010年には、『Rolling Stone』誌の「史上最も偉大な500曲」の104位にランクインしている。
チャート成績
「Hot Stuff」はRIAAによってプラチナ認定を受け、Billboard Hot 100では通算3週にわたり1位を獲得。1979年の年間チャートでは最も長くトップ10内にとどまり、その期間は14週間に及んだ。
また、「Bad Girls」とのダブルA面として全米ダンス・クラブ・ソングスチャートでも1位を獲得。「Hot Stuff」は1979年の全米年間チャートで第7位にランクインした。
人気の12インチ・シングル版では、全長6分47秒の「Hot Stuff」バージョンに続いて、「Bad Girls」の4分55秒バージョンへとシームレスに繋がっている。
歌詞の意味
この曲は、主人公が“刺激的で情熱的な恋”を今すぐにでも求めている気持ちを、ソウルフルでダンサブルなテンションで描いたディスコ・アンセムである。曲全体を貫くのは、孤独な夜を過ごしたくない、誰かと強い熱量を共有したいというまっすぐな欲求のエネルギーだ。
冒頭では、主人公が部屋で電話をかけ続け、誰かに繋がることをひたすら願う姿が描かれる。もどかしさや焦り、期待が入り混じり、「誰でもいいわけじゃないけれど、この夜をひとりで過ごしたくない」という切実な気持ちが伝わる。
サビに入ると、主人公が求めるのは単なる恋ではなく、“熱量のある愛情=hot stuff”であることが明確になる。これは肉体的な刺激を意味するだけではなく、情熱・温もり・勢いすべてを含む象徴的な言葉として使われている。ディスコ時代らしい大胆さと、解放感のある女性の主体性が光る部分である。
次のヴァースでは、主人公は “血の通った、同じ熱量を持つパートナー” を求めていると語る。自分の愛をしっかり受け止め、共鳴してくれる相手であり、刺激的な恋を楽しめる存在だ。ここで描かれるのは、遊びではなく、体温のある生身の人間同士の強い結びつきである。
ブリッジは、ディスコらしい反復の掛け声で、情熱が高まり一気に爆発する瞬間のようなパート。熱さがどんどん強くなるような演出になっている。
ラストでは、主人公はさらに積極的になり、もう孤独や寂しさには戻らないと決意する。電話をかけ続け、誰かに辿り着こうとする姿が再び描かれるが、それは“必ずこの夜に愛を見つける”という強い意志の表れでもある。
全体としてこの曲は、孤独から抜け出し、熱を共有できる相手を求めて動き出す女性像を描いた作品であり、解放感・セクシーさ・自己主張の強さが完璧に融合したディスコの名曲といえる。


