【曲解説】Elliott Smith – Abused

音源 

曲情報

「Abused」(アビューズド)はアメリカのシンガーソングライターであるElliott Smith(エリオット・スミス)の曲。この曲は『Either/Or』のデモにインストゥルメンタルとして収録され、後に『Basement II』のデモで歌つきで収録され、エリオット・スミスの死後に公開された。

歌詞の意味

この曲は、心身への虐待とその後遺症を、混乱と自己認識の揺らぎを交えて描いている。周囲が押しつけた表情や役割が本人に染み込み、望まぬかたちで“似合ってしまう”という皮肉が中心に置かれる。自覚できないまま受け続けた傷は、常態化した使用感や疲弊として語られ、自己像の歪みを広げていく。

宗教的場面の回想は、道徳や真実を説く言葉が本人には空虚に響き、権威の場ですら抑圧が再生産されていたことを示す。遠巻きに他者は悪意を読み取るものの、当事者にとっては因果が把握できず、距離が近づくほど理解が曖昧になる構造が強調される。全体として、この曲は、不可視の暴力が個人の内面に定着し、周囲との認識のずれとともに露呈していく過程を描いている。

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