【曲解説】IVE – 삐빅 (♡beats)

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曲情報

「삐빅(♡beats)」(ピッビッ [ハートビーツ])はSTARSHIPエンターテインメント所属の韓国のガールズグループ、IVE(アイヴ)の曲。この曲は4thミニアルバム「IVE SECRET」の収録曲として2025年8月25日午後6時にリリースされた。

歌詞の意味

「삐빅」は“恋に落ちる瞬間の身体的・電気的反応を、コンピューターやロボットの故障・シグナルとして比喩化した曲”になっている。IVEがよく使う「強い自己像」や「恋愛を主導する視点」とは少し違い、今回は“システムエラーが起きるほどの恋”をユーモアと可愛らしさで表現するのが大きな特徴である。

曲全体で繰り返される電子音のイメージ(삐빅、지직、과열、오류など)は、恋を“論理では処理できない現象”として描くためのメタファーになっている。相手はロボットのように不器用でぎこちないが、だからこそ“生きている感じ”が伝わる、という逆転の構図が核にある。感情が芽生える瞬間を「システムの暴走」や「手順書の破棄」、あるいは「壁のファイアウォールを突破すること」として表現していて、恋愛を技術的なプロセスではなく、エラーを含んだ“予測不可能な出来事”として肯定している。

IVE特有の“クールさとウィットの混在”も際立っていて、相手のぎこちなさを茶化しながらも、徐々にその不完全さに惹かれていくという心理がベースにある。恋が始まるきっかけは完璧さではなく、むしろ“ロボットのようだった相手の中に、ノイズやエラーという形で現れる人間性”だという逆説的な視点は、IVEの世代性(デジタルネイティブの恋愛観)とも合致する。

ブリッジではメタファーが一度静まり、雨や雪といった伝統的な“ロマンティック比喩”が挿入される。ここは技術的メタファーをいったん離れ、「あなたがいれば充電される」という、シンプルでプリミティブな情動に戻るパートになっている。恋愛をOSや電流の比喩で語りながら、結局は“相手の手を握る”という極めて人間的な行為に着地するという構造が面白い。

総じてこの曲は、テクノロジーに囲まれた世代の恋愛を象徴的に描いた作品であり、エラーだらけで不完全なはずの感情を、むしろ“心が動いている証拠”として肯定する。完璧さではなく、ノイズと躓きによって恋が始まるという美学が貫かれている。これがIVEらしい“知的な可愛さ”として機能しているのが、この曲の魅力である。

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