【曲解説】Pink Floyd – Another Brick In The Wall, Part Two

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「Another Brick in the Wall(アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール)」は、イギリスのロックバンド、Pink Floyd(ピンク・フロイド)が1979年に発表したアルバム『The Wall(ザ・ウォール)』に収録された三部構成の楽曲であり、作詞・作曲はベーシストのRoger Waters(ロジャー・ウォーターズ)が担当した。「パート2」は体罰や厳格で虐待的な学校教育に対する抗議の歌であり、子供たちの合唱が特徴となっている。プロデューサーのBob Ezrin(ボブ・エズリン)の提案により、ピンク・フロイドはディスコの要素も取り入れた。

「パート2」は、ピンク・フロイドにとって1968年の「Point Me at the Sky」以来となるイギリスでのシングルリリースであり、世界中で400万枚以上を売り上げ、イギリスやアメリカを含む14か国でシングルチャート1位を獲得した。グラミー賞にノミネートされ、『Rolling Stone』誌の「史上最高の500曲」リストでは384位に選ばれている。

コンセプト

「Another Brick in the Wall」は、アルバム『The Wall』の中で三部構成として登場する。それぞれが実質的に一つのヴァースで構成されているが、「パート2」ではヴァースが2回繰り返され、最初はピンク・フロイドのメンバーによって、次に子供たちの合唱とウォーターズ、ギルモアによって歌われる。

「パート1」では、主人公ピンクが父親の死をきっかけに心に壁を築き始める。「パート2」では、過保護な母親や虐待的な教師たちによるトラウマが壁を構成するレンガ(ブリック)となる。「パート3」では、暴力的な精神崩壊を経て、ピンクは周囲の人々を「壁の中のただのレンガ」として切り捨てる。

ウォーターズは、「パート2」を、特に寄宿学校における厳格な教育に抗議するために書いた。この楽曲は映画版『The Wall』にも登場し、子供たちが学校に入り、同じ動作で行進し、ミートグラインダーに入れられて粘土のような顔のクローンとなり、最後には学校を破壊する様子が描かれる。

レコーディング

プロデューサーのボブ・エズリンの提案で、当時流行していたディスコの要素が追加された。ギタリストのDavid Gilmour(デヴィッド・ギルモア)は次のように語っている。

「エズリンに『クラブに行ってディスコミュージックを聴いてこい』と言われた。嫌々行って、ひたすらバスドラムが鳴る音楽を聴いて、最悪だと思った。でも戻ってきて、そのリズムを取り入れてみたんだ」

ギルモアは、1955年製のギブソン・レスポール・ゴールドトップ(P-90ピックアップ搭載)を使用してギターソロを録音した。アメリカ人セッションギタリストのLee Ritenour(リー・リトナー)は2024年のインタビューで、エズリンに頼まれてソロ案を録音したと語っている。リトナーのパートは最終的に採用されなかったが、ギルモアのソロの最後に自身の影響を感じたという。

バンドはシングル用に曲を拡張することに消極的だったが、エズリンは彼らの不在時にテイクを編集し、ヴァースとコーラスを増やした長尺版を作成した。また、エンジニアのNick Griffiths(ニック・グリフィス)に指示し、スタジオ近くのIslington Green School(イズリントン・グリーン・スクール)で子供たちの歌声を録音させた。当初は2〜3人の録音予定だったが、グリフィスの提案で学童合唱団を起用し、学校側は40分間の録音時間を許可した。

音楽教師のAlun Renshaw(アラン・レンショウ)はこの提案に熱心で、「チャイコフスキーを聴くだけでなく、子供たちに音楽を身近に感じさせたかった。『教育なんていらない』という歌詞は素晴らしいと思った」と語っている。子供たちは約1週間練習を重ね、録音に臨んだ。

レンショウは歌詞を校長のMargaret Maden(マーガレット・メイデン)に隠していた。メイデンは後に「事後報告だったので不快だったが、最終的には素晴らしい音楽教育の一環だと思った」と述べている。

録音後、子供たちにはピンク・フロイドのコンサートチケット、アルバム、シングルが贈られた。学校は£1,000の報酬を受け取ったが、当時はロイヤルティ契約がなかった。1996年の著作権法改正後、子供たちは放送使用料の権利を得た。2004年、代理人のPeter Rowan(ピーター・ローワン)がSNSなどを駆使してメンバーを探し出し、Performing Artists’ Media Rights Association(PAMRA)を通じてロイヤルティを受け取ることができた。

歌詞の意味

この曲は管理的で抑圧的な教育制度への批判を中心に構成され、児童生徒が受ける画一的な指導や権威主義的態度に対する反発を描く内容とされる。学びの名の下に行われる思想統制や侮蔑的な言動が、個人の主体性を奪い精神的な壁を築く行為として象徴化されている。反復される比喩は、生徒が巨大な構造の一部として扱われる状況を示し、匿名化された存在としての虚無感を強調する。最後の教師による命令的な台詞は制度的な圧力の象徴として機能し、教育現場における権力関係の歪みを際立たせる。全体として、個人の自由や感情を抑え込む教育システムへの問題提起を核心に据えた内容になっている。

壁、レンガの意味

「Another Brick in the Wall, Part Two」は、ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズが、形式的な教育に対する自身の考えをもとに書いた楽曲である。ウォーターズは少年時代、ケンブリッジシャー・スクール・フォー・ボーイズに通っていた際に経験した教育を嫌悪しており、教師たちは教育よりも子どもたちを静かにさせることに熱心だったと感じていた。

ここで歌われる「壁」とは、ウォーターズが現実と接触できなくなった結果、自身の周囲に築いた感情的な障壁を指している。壁のレンガ(brick)は、彼がこの比喩的な壁を築くに至った人生の出来事の象徴であり、学校の教師もまた「壁に積まれたただの一つのレンガ」にすぎなかった。

イギリス英語でのプディングの意味

アメリカ英語で “pudding” は、カスタード状のなめらかなデザート(プリンに近いもの) を指すのが一般的だが、イギリス英語では “pudding” は甘いデザート全般を指し、特にスポンジケーキや蒸し菓子など、さまざまなタイプが含まれる。また、ヨークシャープディングのように塩辛い料理を指す場合もある。ピンク・フロイドはイングランド出身のアーティストであるため、肉と対比させて甘いデザート全般(食後のデザート)を指してプディングと言っている。

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