【曲解説】Queen – Another One Bites the Dust

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曲情報

「Another One Bites the Dust」(アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト)は、イギリスのロックバンド、クイーンの楽曲であり、1980年のアルバム『The Game』に収録された。ベーシストのジョン・ディーコンが作詞作曲を手がけ、1980年10月4日から10月18日までの3週間にわたり、アメリカのBillboard Hot 100で1位を記録した(クイーンにとって2曲目かつ最後の全米1位シングル)。この曲は1980年のBillboardトップ10に15週間、トップ5に13週間、チャート全体には31週間ランクインし、同年最も長くチャートに滞在した楽曲となった。イギリスのシングルチャートでは最高7位を記録し、クイーンのシングルの中で最も売れた曲とされ、700万枚以上の売上を記録している。

この曲はAmerican Music Awardの「Favorite Rock Single」を受賞し、グラミー賞「Best Rock Performance by a Duo or Group with Vocal」にノミネートされた。また、多くのアーティストによってカバー、リミックス、サンプリングされ、映画、テレビ、CM、スポーツイベントなど幅広いメディアで使用されている。

背景

ジョン・ディーコンのベースラインは、ディスコグループChicの「Good Times」にインスパイアされたとされる。Chicの共同創設者バーナード・エドワーズは「クイーンのベーシストがスタジオで我々と時間を過ごした結果、生まれた曲だ」と語っている。

レコーディングは西ドイツ・ミュンヘンのミュージックランド・スタジオで、プロデューサーのラインホルト・マックのもと行われた。ディーコンはベースギター、ピアノ、エレクトリックギター、ハンドクラップを担当し、ロジャー・テイラーがドラムループを追加、ブライアン・メイはギターとEventide Harmonizerを用いた特殊効果を加えた。シンセサイザーは使用されておらず、ピアノ、エレキギター、ドラムとテープ再生を逆再生した音がエフェクトとして使用されている。

ロサンゼルスでのクイーンのコンサートを観覧したマイケル・ジャクソンがバックステージでフレディ・マーキュリーに「Another One Bites the Dust」をシングルとしてリリースすべきだと提案し、それが実現した。

受賞歴と評価

1981年1月30日のAmerican Music Awardsで「Favorite Pop/Rock Single」を受賞。グラミー賞の「Best Rock Performance by a Duo or Group with Vocal」にもノミネートされたが、ボブ・シーガーの「Against the Wind」に敗れた。

Billboardは「荒々しいトラックで、無駄をそぎ落としたサウンドが特徴」と評価し、Record Worldは「重厚なベースと歌いやすいフックが特徴の中毒性のある楽曲」と評した。

歌詞と文化的影響

「bite the dust(地面に倒れる)」という表現は、死や敗北を意味する。歌詞の冒頭はマフィア映画のような雰囲気を持ち、「machine guns ready to go(機関銃が準備完了)」といったフレーズが登場する。その後、失恋を「another one bites the dust」と表現し、主人公は「standing on my own two feet(自分の足で立ち続ける)」と前向きに歌う。

この楽曲は、映画『ロッキー3』の編集段階で挿入されていたが、最終的にサバイバーの「Eye of the Tiger」に差し替えられた。サバイバーのギタリスト、フランキー・サリヴァンによると、1984年にロサンゼルスでクイーンのブライアン・メイと会った際、彼がこの事実に言及したという。

ミュージックビデオ

ミュージックビデオは1980年8月9日、アメリカ・テキサス州のリユニオン・アリーナで撮影された。

この曲は1981年のコンピレーション・アルバム『Greatest Hits』にも収録され、以降も様々なメディアで使用され続けている。

歌詞の意味

この曲は衝突や対立の連鎖を街角の暴力や銃撃戦のイメージを通して象徴的に描いている。冒頭では、緊張に満ちた通りを人物が歩き、どこかで引き金が引かれることを予感させる描写が続く。繰り返される言葉は、誰かが次々と倒れ、敗北し、脱落していく状況をリズムに乗せて提示し、抗争のサイクルそのものを強調する役割を果たす。

語り手は過去に受けた仕打ちを思い返しながら、立ち直って対峙しようとする姿勢を示す。奪われ、裏切られ、突き落とされた経験が語られ、そこから自力で立ち上がる過程が、打ちつけるようなビートとともに描かれる。相手を責めつつも、自分もまた抵抗し、向き合う準備ができていると宣言する。

終盤では、人を倒す方法はいくらでもあるという言葉が並び、暴力や不正が絡み合った関係性の厳しさが浮き彫りになる。曲全体は、戦いの連鎖と個人の粘り強さを、攻撃的な音像と反復的な言葉によって象徴化した構造になっている。

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