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オーディオ(アルバムバージョン)

…Nothing Like the Sun
Sting
- The Lazarus Heart
- Be Still My Beating Heart
- Englishman In New York
- History Will Teach Us Nothing
- They Dance Alone (Gueca Solo)
- Fragile
- We’ll Be Together
- Straight To My Heart
- Rock Steady
- Sister Moon
- Little Wing
- The Secret Marriage

Fields of Gold: The Best of Sting 1984–1994
Sting
曲情報
「They Dance Alone(Cueca Solo)」(ゼイ・ダンス・アローン)は、イギリスのミュージシャン、Sting(スティング)によるプロテストソングであり、1987年のアルバム『…Nothing Like the Sun』に収録された。本作は、同アルバムからの5枚目にして最後のシングルとしてリリースされた。
楽曲情報
本作は、チリの独裁者アウグスト・ピノチェトの政権下で行方不明となった人々の家族、特にアルピリェラ制作者(arpilleristas)として知られる女性たちの悲しみを象徴的に描いた楽曲である。彼女たちはチリの国民舞踊であるクエカを、一人で踊りながら失踪した愛する人々の写真を掲げることで、追悼と抗議の意を示していた。
この曲には、エリック・クラプトン、ファリード・ハーク、マーク・ノップラーがギターで参加し、ブランフォード・マルサリスがサクソフォンを演奏、さらにパナマ出身のサルサ歌手ルーベン・ブラデスが追加のスペイン語ボーカルを提供している。
背景
スティングはこの楽曲を、1973年から1990年にかけてピノチェト政権によって殺害された数千人の犠牲者を悼むために作曲した。この曲は、英語バージョン(一部にブラデスによるスペイン語の語りが挿入されている)と、ロベルト・リビによる追加のスペイン語歌詞を含むスペイン語バージョンの2つが存在する。後者は「Ellas Danzan Solas」と題され、1988年のEP『Nada como el sol』に収録された。
『Cash Box』誌はこの曲を「スティングの最も力強い楽曲のひとつであり、行方不明となった息子や夫を悼み、抗議するチリの女性たちへのトリビュート」と評している。
ライブ・パフォーマンス
本作は数多くのライブで披露されており、特に有名なのは、1988年のネルソン・マンデラ 70歳誕生日トリビュートコンサートや、同年のアムネスティ・インターナショナル主催のブエノスアイレス公演(ピーター・ガブリエルと「5月広場の母たち」との共演)である。さらに、1990年10月13日には、スティングがチリのサンティアゴにあるエスタディオ・ナシオナルで本曲を演奏。この公演には、ジャクソン・ブラウン、ブランフォード・マルサリス、ルス・カサル、シニード・オコナー、ピーター・ガブリエル、ヴィニー・カリウタ、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックなどのアーティストが参加した。
歌詞の意味
この曲は独裁下で家族を奪われた女性たちが、失踪者や犠牲者への追悼と抗議を込めて沈黙の踊りを続ける姿を描いている。語り手は、彼女たちの表情に潜む悲しみや、声を上げれば自身も消されるという抑圧の現実を示し、踊りが唯一許された抵抗手段である状況を浮き彫りにしている。軍事政権下の暴力や弾圧が背景に置かれ、女性たちが父や息子や夫といった喪われた家族と象徴的に踊る光景が中心に据えられている。
作品は、権力による恐怖と沈黙が社会を覆う中でも、遺された者の記憶と抗議が断ち切られないことを強調する。後半では独裁者への直接的な言及が加えられ、外部からの支援が尽きれば暴力装置も維持できないという批判が展開される。最後に、弾圧が終わった未来を想像し、自由と喜びの中で再び踊る日への希望が語られる。全体として、政治的暴力に対する追悼と抵抗、そして解放への願いを象徴的に表現した作品になっている。


