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曲情報
「Isn’t She Lovely」(読み:イズント・シー・ラヴリー、邦題:可愛いアイシャ)はアメリカのシンガーソングライター、Stevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)の楽曲。
スティーヴィー・ワンダーが娘の誕生を祝って書いた曲
Isn’t She Lovely は、スティーヴィー・ワンダーが娘のアイーシャ・モリスの誕生を祝って書いた楽曲。彼女の名前はアラビア語で「生命(Life)」を意味し、その名の通り、歌詞の中でも「Life is Aisha(生命はアイーシャ)」という一節が登場する。
冒頭の赤ちゃんの泣き声と最後の入浴シーン
曲の冒頭では、新生児の泣き声が収録されているが、これは実際のアイーシャの声ではなく、効果音として使われたもの。しかし、曲のエンディング部分では、スティーヴィー・ワンダーが娘のアイーシャとお風呂で遊んでいる音が収録されている。ワンダーが「Come on, Aisha. Get out of the water, baby(さあ、アイーシャ。お風呂から出るんだよ、ベイビー)」と呼びかける場面は、親子の愛情が感じられる特別な瞬間となっている。
▼1976年『Songs in the Key of Life』に収録されたオリジナルバージョン
母親ヨランダ・シモンズへの感謝
ワンダーはこの曲の後半で、アイーシャの母親であるヨランダ・シモンズに感謝の言葉を述べている。
歌詞の中で「Londi, it could have not been done, without you who conceived the one(ロンディ、君がこの子を宿してくれなければ、この奇跡は起こらなかった)」というラインは、彼女に向けた愛情と感謝のメッセージである。
楽器演奏とハーモニカソロの即興
この楽曲では、ワンダー自身がほぼすべての楽器を演奏しており、一部のキーボード演奏のみグレッグ・フィリンゲインズが担当した。特にハーモニカソロは完全に即興で演奏されており、その美しさと感情表現の豊かさが際立っている。
シングルカットの経緯とアメリカでのリリース事情
Isn’t She Lovely はアルバム Songs in the Key of Life(1976年)に収録されたが、アメリカではワンダーの意向により編集されたシングルバージョンがリリースされなかった。そのため、ビルボードHot 100にはチャートインしなかったものの、ラジオで頻繁に流され、大ヒット曲となった。一方、イギリスでは3分26秒に短縮されたシングルバージョンがリリースされた。
レコーディングスタジオと歴史的背景
この曲を含むアルバムは、ニューヨークの The Hit Factoryで録音された。このスタジオは、ジョン・レノン、ブルース・スプリングスティーン、ポール・サイモンなどのアーティストがレコーディングを行った伝説的なスタジオで、ワンダーはその最初のクライアントとなった。The Hit Factoryは2005年に閉鎖された。
ライブパフォーマンスとテレビ出演
2015年、スティーヴィー・ワンダーのキャリアを称える特別番組「Stevie Wonder: Songs in the Key of Life – An All-Star Grammy Salute」が放送された。この番組では、Ne-Yo が Isn’t She Lovely を歌い、その途中でアイーシャ・モリス本人がサプライズで登場し、ワンダーとデュエットを披露した。ワンダーは驚きつつも、娘との共演を楽しんでいた。
カバー・バージョンとチャート記録
- デヴィッド・パートン(David Parton)のカバーは1977年にイギリスで4位を記録し、ヒットした。
- リヴィングストン・テイラー(Livingston Taylor)は1997年のアルバム Ink でカバー。
- 2011年、テレビドラマ「Glee」のキャストによるカバーがビルボードHot 100で65位にランクインした。
歌詞の意味
この曲は、娘の誕生を前にした“圧倒的な喜び”をそのまま歌にした、純粋な祝福の作品。生まれたばかり、まだ1分にも満たない赤ん坊を見つめながら、言葉にならないほどの愛しさに包まれている瞬間を描いている。
「こんなに美しい存在が自分たちの愛から生まれたなんて、信じられない」——その驚きと感謝が、父としての素直な喜びとしてあふれる。赤ん坊を“天使そのもの”と呼び、神から授かった奇跡だと確信し、ただただ幸せに浸っている姿が温かい。
3番では娘の名前“Aisha”を取り上げ、「彼女の名は“生命”そのもの」と語り、命=愛だと結びつける。さらに妻への深い感謝も添えられ、「この奇跡は君なしでは生まれなかった」と、家族としての絆まで丁寧に讃えている。
全体を通して、親が初めて子どもを抱いた瞬間の、涙が出るほどの感動と愛の尊さをそのまま音楽にしたような曲。短い言葉の中に、人生の喜びがまっすぐに詰まった、とても柔らかいラブソングになっている。


