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曲情報
「Money for Nothing」は、イギリスのロックバンド Dire Straits の楽曲で、1985年にリリースされた5枚目のスタジオ・アルバム Brothers in Arms の2曲目に収録されている。1985年6月28日に Vertigo Records からシングルとしてリリースされた。
歌詞は労働者階級の男性2人がMTVの音楽ビデオを見ながら、それに対してコメントしている視点で書かれている。楽曲には Sting がゲスト参加しており、特徴的なファルセットのイントロ、バックコーラス、そして「I want my MTV」のフレーズを歌っている。
この曲の革新的なミュージックビデオは、1987年8月1日にMTVヨーロッパが開局した際、最初に放送された映像となった。
商業的に大成功を収めた
「Money for Nothing」は Dire Straits にとって最も商業的に成功したシングルであり、アメリカでは Billboard Hot 100 および Top Rock Tracks チャートで3週間にわたり1位を獲得。イギリスでは最高4位にランクインした。リリース翌月の1985年7月には、Live Aid で Dire Straits と Sting によって披露された。
1986年の第28回グラミー賞では、「Best Rock Performance by a Duo or Group with Vocal(最優秀ロック・パフォーマンス賞 – デュオまたはグループ部門)」を受賞し、「Record of the Year(最優秀レコード賞)」および「Song of the Year(最優秀楽曲賞)」にもノミネートされた。
また、1986年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでは11部門にノミネートされ、「Video of the Year(最優秀ビデオ賞)」と「Best Group Video(最優秀グループ・ビデオ賞)」を受賞している。
この楽曲は、バンドの代表曲の一つとして広く認知されている。
歌詞の意味
マーク・ノップラーは、1985年に批評家ビル・フラナガンのインタビューで、この曲の制作過程について次のように語っている。
「『Money for Nothing』の主人公は、テレビやオーダーメイドのキッチン、冷蔵庫、電子レンジを扱う家電店のハードウェア部門で働く男だ。彼がこの曲を歌っているんだ。実際に俺は店の中でこの曲を書いたんだよ。紙を借りて、その場で歌詞を書き始めた。彼が話していた言葉をそのまま使いたかったんだ。なぜなら、その方がリアルだからね……。」
2000年、ノップラーは BBC One の番組 Parkinson に出演し、改めて歌詞の由来について説明した。彼によると、彼はニューヨークで家電店を訪れ、店の奥には壁一面にテレビが並び、それらがすべて MTV を映していた。ノップラーの隣には、野球帽をかぶり、作業靴を履き、チェック柄のシャツを着た店員がいて、荷物を運んでいた。二人で MTV を見ていたとき、その店員が「なんだあれ、ハワイアンミュージックか?……こんなの仕事じゃないだろ?」などと口にしたという。ノップラーはすぐにペンを借りて、その言葉を書き留め、最終的に曲として完成させた。
歌詞の一人称の語り手は、音楽業界のミュージシャンを「チンパンジーみたいにドンドンとボンゴを叩いてる」と表現したり、女性について「カメラにしっかり映ってる、楽しめそうじゃないか」と語ったりする。また、2番の歌詞では、「イヤリングして、メイクしたあのしょうもないカマ野郎を見てみろよ」について言及し、そのミュージシャンたちが「何の努力もなしに金がもらえて、女もタダでついてくる」ことを嘆いている。
「I want my MTV」はスティング自身が出演したCMのフレーズから
1981年に開局したMTV(Music Television)は、当初視聴者数を増やすために「I Want My MTV」というキャッチフレーズを使ったプロモーションを展開した。このCMには、The Policeを含む多くの有名アーティストが参加した。「ケーブル会社に電話して、『MTVが見たい』と言おう」「I want my MTV(俺のMTVを見せろ!)」といった内容。
作曲クレジットと Sting の関与
この曲の作曲クレジットは、マーク・ノップラーとスティングが共有している。ノップラーによると、MTV のキャッチフレーズ「I want my MTV」を The Police の「Don’t Stand So Close to Me」(スティング作曲)のメロディーに乗せたため、スティングが共作としてクレジットされたという。
Dire Straits のベーシスト、ジョン・イルズリーは次のように振り返っている。
「スティングはモントセラトにウインドサーフィンをしに来ることがあって、スタジオで一緒に夕食をとったんだ。それで『Money for Nothing』を聴かせたら、彼は『お前ら、ついにやったな』って言ったんだ。するとマークが『そんなにいいと思うなら、お前も何か加えてみたらどうだ?』と言ったんだ。そしたら、スティングはその場で自分のパートを録音したんだよ。」
スティング自身も1987年のインタビューで次のように述べている。
「マーク(ノップラー)に頼まれて、スタジオで『I want my MTV』というフレーズを歌ったんだ。彼がメロディーをくれて、僕は『お、”Don’t Stand So Close to Me” の引用か、面白いな』と思って歌ったんだよ。でも、それで終わりかと思ったら、僕の出版社であるヴァージン・レコードが、それを『Don’t Stand So Close to Me』の一部とみなして、楽曲の権利を主張し始めたんだ。僕にとってはちょっと気まずい話だったけどね」
しかし、キーボード奏者のアラン・クラークは、「I want my MTV」のイントロはノップラーのアイデアではなく、自分の発案だと主張している。彼によると、元々この曲はギターリフで始まっていたが、クラークがリハーサルの休憩中にキーボードでイントロを作り、「I want my MTV」と歌ったのが始まりだったという。
その他の動画
1985年、20世紀最大のチャリティーコンサート「ライヴエイド(LIVE AID)」でスティングとダイアー・ストレイツが共演した際の映像



