【曲解説】Aerosmith – Eat The Rich

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曲情報

「Eat the Rich」は、アメリカのハードロックバンド、エアロスミスによる楽曲である。スティーヴン・タイラー、ジョー・ペリー、ジム・ヴァランスによって作曲され、1993年6月にゲフィン・レコードからシングルとしてリリースされた。アルバム『Get a Grip』(1993年)からの2枚目のシングルである。アメリカのロックラジオでヒットし、Billboard Mainstream Rock Tracksチャートで5位を記録。イギリスでは34位、カナダでは45位を記録した。後続のシングルとビデオがさらに大きな成功を収め、アルバム全体の人気を後押しした。

この曲はすぐにファンの間で人気曲となり、特に『Get a Grip Tour』ではオープニング曲として使用され、大きな歓声を集めた。その後も『Route of All Evil Tour』などで何度か演奏されている。

1994年にリリースされたゲフィン・レコード時代のベスト盤『Big Ones』や、ライブ・アルバム『A Little South of Sanity』の1曲目としても収録されている。

構成

アルバム『Get a Grip』では、「Eat the Rich」の前に「Intro」という23秒のトラックが収録されている。重低音のベース、部族的なドラム、逆再生された「Eat the Rich」のコーラス、タイラーによる高速な語り、そして「Walk This Way」のサンプルが曲の終わりに登場し、そのまま「Eat the Rich」へとつながる。「Intro」には前作『Pump』に収録された「F.I.N.E.*」からの一節も含まれている。

ミュージックビデオ

ミュージックビデオは、ボストンのSoundtrack Studiosでの演奏シーン、マサチューセッツ州のLongview Farmでのレコーディング風景、ニューヨークでの写真撮影の舞台裏を組み合わせて構成されている。映像には目玉、頭蓋骨、角といった要素が挿入され、楽曲の持つカニバリズム的な雰囲気を表現している。ビデオはピーター・マルティネスによって撮影・編集され、エレン・スタンフォードがプロデュースを担当した。また、A&Rのジョン・カロドナー、コメディアンのアンソニー・クラーク、WBCNラジオDJのマーク・パランティオが出演している。

その他

この楽曲は、テクモのゲーム『Dead or Alive 4』のオープニングや、ミッドウェイゲームズのアーケードゲーム『Revolution X』でも使用された。

また、Foghatが1974年に発表した「Honey Hush」には、「Eat the Rich」と似たイントロのギターリフが使用されている。

歌詞の意味

この曲は、裕福な者たちの傲慢さや身勝手な振る舞いにうんざりした主人公が、怒りと皮肉をユーモアに乗せてぶちまける痛快な風刺ロックになっている。目覚めた瞬間から溜まりに溜まった不満が爆発し、金と余裕にまみれた人々が日常のささいな悩みを大げさに嘆き散らす姿に強烈な嫌悪を示す。

主人公は彼らの上から目線の暮らしぶりにまったく共感できず、その不愉快さを「食ってしまえ」という過激な比喩に置き換えて吐き出す。富裕層が贅沢な遊びにふけり、作り笑いで社交場を漂う様子は滑稽でありながら、社会の歪みそのものとして描かれ、主人公の怒りの燃料になっていく。

また、金では買えない価値を信じるべきだというメッセージが奥に流れており、金と地位だけを頼りにした人生は脆く、いざというときには何の助けにもならないと痛烈に突きつける。反発心むき出しの語り口とブラックユーモアによって、怒りを笑いに変えながら、社会への不満と現実への抵抗を豪快に表現している。

全体として、金持ちへの皮肉と反逆精神が爽快に弾ける曲で、腹の底に溜まった本音を遠慮なく叫ぶ痛快なカタルシスが特徴だ。

eat humble pie(ハンブル・パイを食う)とは?

eat humble pie(ハンブル・パイを食う)とは、英語のイディオムで「自分の誤りを認めて謝罪する、屈辱を受け入れる」という意味。アメリカ英語では「eat crow」という表現も同じ意味で使われる。

eat humble pie」というイディオムは、中世イングランドの料理に由来している。当時「humble pie」という食べ物があったが、ここでの「humble pie」は「謙虚」という意味ではなく、フランス語由来の「numble」(獣の内臓=肝臓や腸などのもつ)から派生したものだった。本来は「numble pie」=「内臓パイ」と呼ばれていたのが、やがて訛って「humble pie」となった。狩猟のあと、領主や貴族は上等な肉を食べ、下層階級は余り物の内臓でパイを作って食べていたことから、「humble pieを食べる」=「身分をわきまえる」「屈辱を受け入れる」という意味合いが生まれた。そこに「humble=謙虚」という語の響きが重なって、現在の「頭を下げる」「自分が間違っていたと認める」という比喩表現に発展した。

「wake up on the wrong side of the bed」とは?

wake up on the wrong side of the bed」は直訳すると「ベッドの間違った側で目を覚ます」となるが、「朝から機嫌が悪い」「寝起きから不機嫌」 という意味で使われる慣用表現。

「burst a bubble」とは?

burst a bubble」 というフレーズは、英語で「夢や幻想を壊す」「現実を突きつける」という意味で使われる慣用表現。「burst someone’s bubble」という形で使われることが多い。

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