【曲解説】Elliott Smith – Coming Up Roses

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曲情報

「Coming Up Roses」(カミング・アップ・ローゼス)は1995年にリリースされたElliott Smith(エリオット・スミス)の2枚目のスタジオアルバム『Elliott Smith』に収録された曲。

歌詞の意味

この曲は、自己破壊的な内面と、それを覆い隠す外面的な「きれい事」が同時に進行する様子を象徴的に描いている。語り手は自分を「失敗の寄せ集め」と捉え、感情や愛情を冷たい光の下に埋めてしまうような、荒れた精神状態にある。

「月」や「冷たい白い兄弟」といった比喩は、破滅へ向かう内的プロセスを外側から照らす力として描かれ、精神的な病や自己否定がじわじわと血の中に広がる感覚が暗示される。自分で自分を追い詰める思考の反復は、時間とともに内部から崩れていく危険性を示す。

一方でサビでは、語り手がどれほど内面で苦しんでいても、外側には「バラが咲く」ように、良い印象や成功の痕跡がまとわりつくことが示される。これは、内面の破綻と周囲からの見られ方が完全に乖離した状態を象徴し、真の苦しみが隠蔽される構造を強調する。

終盤では、語り手が「誰にも知られない種類のトラブル」に巻き込まれていることが明かされ、外の世界からは成功や魅力として見えるものが、実際には深い危機の覆い隠しであるという二重構造が浮かび上がる。全体として、破滅と美化、自己否定と表面的成功がねじれた形で共存する心的風景を描いた内容になっている。

While the moon does its divisionの意味

「its」は「それ自身」つまり「月自身」のこと。「division」は「分割」で、「月が自分自身を分割している間」という意味になる。ここでは月の満ち欠けによる形の変化だと解釈できる。

sickle cell(鎌状赤血球)の意味

「鎌状」は三日月のような形をしており、以下のセクションでは「月」がドラッグ、もしくはアルコール等のような自己破壊的なものを指していると解釈できる。また、「鎌状赤血球」は単に形だけでなく、「血流を阻害し、痛みや臓器ダメージを引き起こし、最終的に死に至る病気の象徴」でもある。

コーラスの月の形の変化は、「三日月(鎌状赤血球)」から「新月(何もない状態=死)」を言っているか、あるいは「満月(健康な状態の丸い赤血球)から三日月(健康を脅かす鎌状赤血球)」への変化を言っていると解釈できる。

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