【曲解説】U2 – All I Want Is You

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曲情報

「All I Want Is You」(オール・アイ・ウォント・イズ・ユー)は、アイルランドのロックバンドU2(ユーツー)の楽曲であり、1988年のアルバム『Rattle and Hum』の最終トラックである。シングルとしては、1989年6月12日に4枚目のシングルとしてリリースされた。また、映画『Rattle and Hum』では、エンディングクレジットに使用されている。

歴史

「All I Want Is You」は、1989年6月12日にイギリスでシングルとしてリリースされた。B面には、ライチャス・ブラザーズの「Unchained Melody」と、ラヴ・アフェアの「Everlasting Love」のカバーが収録された。このシングルは、イギリスのチャートで最高4位、オーストラリアで2位、オランダのトップ40で12位を記録したが、カナダでは67位、アメリカでは83位と、北米では比較的低い順位にとどまった。

1994年の映画『Reality Bites』のサウンドトラックに収録されたことで、この楽曲は再び注目を集めた。映画の人気により、同年にシングルが再リリースされ、アメリカのTop 40 Mainstreamチャートで38位を記録した。オランダでは「Everlasting Love」がA面として再リリースされ、1990年1月にオランダのチャートで10位を獲得した。

2004年には、『Entertainment Weekly』が選ぶ「史上最高のラブソング50」の9位にランクインした。

この曲のストリングスアレンジは、ヴァン・ダイク・パークスが担当している。また、キーボードにはベンモント・テンチがクレジットされているが、彼は2014年の『The Boston Globe』のインタビューで、「何を弾けばいいのかわからなかった。この曲はすでに完成されているように感じた。最終的にエッジが『この小さなフレーズを弾いてみたら?』と言ってくれて、それがどこかに埋もれているんだろうね。その結果、いつもU2と一緒に演奏したことになっているんだ」と語っている。

この楽曲は、テレビドラマ『Hindsight』のエピソード内や、2011年の映画『コンテイジョン』のラストシーンでも使用された。また、U2のコンピレーションアルバム『The Best of 1980–1990』には、「October」という楽曲が隠しトラックとして「All I Want Is You」のトラック内に収録されている。

ミュージックビデオ

「All I Want Is You」のプロモーションビデオは、1989年4月18日にイタリアのローマ郊外オスティアで、Meiert Avisの監督によって撮影された。脚本はバリー・デヴリンが手がけ、楽曲の映像化としては珍しく、U2のメンバーの登場は最小限にとどめられている。

ビデオは、小人症の男性(パオロ・リジ)が空中ブランコのアーティスト(パオラ・リナルディ)に恋をする物語を描いている。物語の終盤でどちらかが死んでしまうように描かれているが、その解釈についてはファンの間で意見が分かれている。エッジは「亡くなったのは空中ブランコのアーティストだ」と語っている。

このビデオは、撮影地近くでフェデリコ・フェリーニが遺作『La voce della luna』を撮影していたことから、フェリーニ作品へのオマージュが込められている。また、トッド・ブラウニング監督の1932年の映画『Freaks』へのオマージュでもある。

歌詞の意味

この曲は相手が望む物質的価値や壮大な象徴を並べながらも、語り手自身の願いはきわめて単純で、相手そのものを求める一点に集約されていることを描いている。相手の提示する夢や条件には、永続性や秘密、安定、豊かさといった要素が含まれているが、それらは語り手にとって本質ではなく、ふたりの関係を貫く誓いと現実とのあいだに生まれる矛盾を浮かび上がらせる装置のように扱われている。

ふたりのあいだで交わされたはずの約束が時に守られず、人生の始まりから終わりまで続くと信じた結びつきが揺らぐ様子が語られ、理想と現実がぶつかる関係の緊張が中心に据えられる。それでも語り手の思いは一貫しており、外的価値や言葉の積み重ねではなく、相手自身への渇望が真の核として提示される。反復される呼びかけはその切実さを強調し、壮大さと親密さが同時に漂う余韻を生み出している。

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