【曲解説】U2 – Walk On

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曲情報

U2の”Walk On”(ウォーク・オン)は、アイルランドのロックバンドU2の楽曲であり、彼らの10枚目のスタジオ・アルバム『All That You Can’t Leave Behind』(2000年)の4曲目に収録されている。まず2001年2月20日にカナダで初めてリリースされ、その年の11月にイギリスでも発売された。カナダでは2枚目のシングル、世界的には4枚目のシングルとなる。曲は、ミャンマーの政治活動家アウンサンスーチー(国民民主連盟議長)にインスピレーションを受けて書かれ、彼女の民主化運動のために1989年から2010年まで自宅軟禁下に置かれていたことから、この楽曲はミャンマー国内で禁止された。2002年のグラミー賞では最優秀レコード賞を受賞し、前年の「Beautiful Day」に続いて同じアルバムから2年連続での受賞となった。

アメリカでは、アダルト・トップ40チャートで21位、メインストリーム・ロックチャートで19位、オルタナティブ・ソングスチャートで10位を記録した。カナダとポルトガルでは1位を獲得し、オーストラリア、ベルギー、アイルランド、オランダ、スペイン、イギリスのシングルチャートでもトップ10入りしている。

作詞・作曲

2000年3月、U2はダブリン市による名誉市民の称号を授与される式典に出席したが、そこではアウンサンスーチーも表彰対象となっていた。しかし彼女は欠席しており、バンドは当初彼女の存在を知らなかった。彼らは、スーチーが民主化運動を続けているため1989年から自宅軟禁下に置かれていることを知り、そのストーリーがボノの歌詞執筆に影響を与えた。

最初、ボノは彼女の夫であるマイケル・アリスと息子のアレクサンダー・アリスの視点から書こうとしたが、過剰な想像になりすぎると感じたため、より抽象的で「正しい理由で関係を離れる人のためのラブソング」に変更したという。曲は「高潔さと自己犠牲」について歌っており、「正しいことを行うために、自分の心に反してでも踏み出すこと」がテーマになっている。歌詞に関しては、新約聖書のコリント人への手紙にある「家が火事で焼失し、最終的に残るものは永遠の価値を持つものだけ」というイメージが基になっている。ボノによれば、家族や友情のように永遠に残るもの以外は手放すしかなく、「Walk On」の歌詞の終盤には「捨て去るべきもの」を列挙している。

アルバムタイトル『All That You Can’t Leave Behind』は、この曲の歌詞「The only baggage you can bring is all that you can’t leave behind.」から採られている。後にスーチー本人は、この曲を「自分の気持ちにとても近い」と評したという。

U2が「Walk On」をレコーディングしている最中、楽曲を「Walk On」と「Home」という2つの曲に分割しようとした時期があった。しかしプロデューサーのスティーブ・リリーホワイトが「Walk On」と「Home」を聴き比べた結果、両方を再び統合するよう提案し、結局一つの曲としてまとまった。「Walk On」のギター・サウンドの多くは、エッジの白いギブソン・レスポールをVox AC30につないで得られており、ギターソロはギブソン・エクスプローラーで演奏されている。

リリース

「Walk On」は、まず2001年2月20日にカナダで2枚のCDシングルとして発売された。翌月の3月6日にはアメリカのホットACラジオ向けにインタースコープ・レコードから送られ、続いて11月19日にイギリスで、12月3日にオーストラリアでリリースされた。チャリティ・アルバム『Songs for Japan』に収録された際には、編集バージョンが再度使われている。また、アルバム『Songs of Surrender』(2023年)向けにアコースティックアレンジや歌詞の一部が書き換えられたバージョンも制作されており、これは2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻を意識したものになっている。

論争

アルバム『All That You Can’t Leave Behind』には「Walk On」が収録されているが、この曲がアウンサンスーチーに捧げられていることが原因で、ミャンマー(ビルマ)国内で発売禁止となった。彼女の民主化活動に対する支援のメッセージとみなされたためであり、同アルバムを国内に持ち込もうとすると3年から20年の禁固刑に処せられる可能性があると報じられた。当時U2の公式サイトでは、ビルマの政治状況に関するページを設け、強制労働や少数民族への弾圧問題などに言及していた。

ミュージックビデオ

最初のミュージックビデオ(“International Version”)はヨーナス・オーカーロンドによって監督され、2000年11月にリオデジャネイロで撮影された。ビーチでサッカーをするシーンやファンとの交流など、ドキュメンタリー風に構成されている。オーカーロンドはこのビデオを自身の作品の中でも特に気に入っていると語っている。

2001年2月にはリズ・フリードランダーが監督した2作目のビデオ(“U.S. Version”)がロンドンで撮影された。両方のビデオはコンピレーションDVD『U218 Videos』に収録されている。その後、スーチーが2017年の紛争を容認したとされる事態を受けて、「International Version」のエンディング部分はロヒンギャ・ムスリムへの支援を訴えるメッセージに差し替えられた。

ライブ・パフォーマンス

この曲の前向きな内容から、2001年のエレベーション・ツアーではしばしばコンサートの締めくくりに使用された。同年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の後には、追悼番組「America: A Tribute to Heroes」で演奏されるなど、慰めや励ましの楽曲として取り上げられた。10月10日にノートルダム大学で行われた公演では、ニューヨーク市警や消防署の職員がステージに上げられる演出も行われた。

2005-2006年のヴァーティゴ・ツアーではあまり演奏されなかったが、演奏される際にはアコースティック形態が多かった。2009-2011年のU2 360°ツアーではセットリストの定番となり、U2はファンに対してアウンサンスーチーの写真が印刷されたマスクを持参し、演奏中に身につけるよう呼びかけた。会場によってはアムネスティ・インターナショナルやONEのボランティアがステージ周囲に並び、スーチーのマスクやランタンを掲げるパフォーマンスも行われた。

2012年6月、ダブリンで開催された「Electric Burma」コンサートでは、来場したスーチー本人を前にボノがこの曲を演奏した。しかし2017年以降、スーチーのロヒンギャ問題への対応をめぐってU2が批判的姿勢を示したことから、最近の公演ではロヒンギャ・ムスリムへの連帯を示す曲として扱われている。

評価

2002年の第44回グラミー賞で「Walk On」は2部門にノミネートされ、最優秀レコード賞を受賞した。これは前年度の「Beautiful Day」に続いて同じアルバムからの2年連続受賞となり、史上初の快挙となった。また、翌2003年の第45回グラミー賞では、追悼番組「America: A Tribute to Heroes」での演奏が最優秀ロック・パフォーマンス(デュオまたはグループ)部門にノミネートされた。

そのほか、2002年にはアイヴァー・ノヴェロ賞(最優秀楽曲賞)やアイルランドのMeteor Music Awardで最優秀ロック・シングル賞を受賞している。

歌詞の意味

この曲はどれほど痛みや喪失が重くのしかかっても、それでも前へ歩き続けるしかないという強いメッセージを柔らかい祈りのように抱きしめながら描いている。闇に隔てられたり心がひび割れたりしても、奪われないものが自分の中に確かにあると信じて一歩を踏み出す姿が軸になっていて、その歩みは逃避ではなく再生への意志そのものになっている。

行き先は誰も知らず、信じなければ辿り着けない場所だと語られるけれど、その不確かな旅路こそが自由を求める心を動かしている。鳥籠を破って飛び立とうとする比喩は、自分を縛っていた過去や痛みを置いて前へ進む決意を象徴している。

家という概念が曖昧で、どこにあるかは分からなくても、そこへ向かう感覚だけは確かで、その場所には傷の根があると示されることで、帰ることと癒えることが同じ線上に置かれている。最後に積み重ねられる過去のすべては、執着して抱え込む必要のないものとして静かに手放され、重荷を肩から下ろして進む姿が浮かび上がる。

全体として、痛みを抱えたままでも前へ歩くことを選ぶ強さと、新しい光へ向けて自分自身を解放していく旅を、穏やかで力のある語り口で描いた曲になっている。

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